DX推進のために整備すべき"環境"とは

コラム 2023.04.03
DXビジョン&ビジネスモデルDX 戦略・計画策定 環境
DX推進のために整備すべき
目次

DX推進には、DXビジョン・戦略・ロードマップの策定、各組織の重点テーマ・目標KPI設定などの大きな方針が必要です。それらが示されてこそ、全社的な活動としてDXが認知され、各部署での取り組みが加速していくと言えます。しかし、DXを推進していくためには、環境整備も忘れてはいけません。ここでは、DXが組織文化として根付き、自然発生的に推進されていくための環境づくりのポイントを解説します。

ビジョン、ロードマップに次いで必要な"環境整備"

1.中小企業のDX取り組みの現状
まずは各企業のDXの取り組みの状況を俯瞰して見てみましょう。IPA(独立行政法人 情報処理推進機構)が発行している「DX推進指標 自己診断結果分析レポート(2021年版)」によると部門横断で持続的にDXを推進できている企業、つまりDX先行企業といわれる企業は全体の17.7%となっています。全社戦略に基づき、一部部門で推進している企業が27.8%、部門単位での試行、実施している企業が35.4%、まだDXに関して具体的な取り組みに至っていない企業が19.1%という状況です。約5社に2社は全社的なビジョンに基づくDX推進が始められている一方で、半数以上の企業はまだ取り組みを行っていないか、行っていても部単位での個別の動きにとどまっているようです。このように、DXの取り組みのレベルは企業それぞれといった状況です。DX環境整備は自社の状況に合わせて、何が最適かを検討していくとよいでしょう。

2.DX推進のための"環境整備"
冒頭に述べたDXビジョンなどの大きな方針を立てる手法は、経営戦略や事業戦略の考え方と同じですので、取り組んでいる企業も多いでしょう(先ほどの統計でも5社に2社が取り組んでいました)。しかし当然ですが、方針を定めれば上手くいくわけではありません。部署ごとでバラバラの推進になっていたり、進めてはみたものの停滞した、DXに対して熱量を持っている人間が一部の社員に限られている、という話を聞くことは多いです。そこで必要になるのが、DX推進をサポートするような環境を整えることです。その環境として代表的なものは、①意識、②人材、③推進組織、④権限・承認プロセス、⑤制度、⑥ITシステムの6項目です。

6つの環境を振り返る

①意識
貴社の経営層、従業員はどの程度既存のビジネスや業務に課題感を抱いているでしょうか。既存のビジネスモデルを覆してしまうような新しいサービス誕生の可能性や、既存の業務のやり方に疑問を持ち、デジタル化、自動化に対する正しい危機感や課題感を抱いているでしょうか。変革に着手するためには、このような正しい意識が組織に醸成されているかが重要になります。最新の技術やデジタルツールの活用事例を調査し、社内発信していくことで各所でのキヅキや動機付けをしていくことが肝心となります。

②人材
DX推進を担う人材は社内にいるでしょうか、または育成の計画が立てられているでしょうか。人材像としては以下のような3パターンが必要とされています。①マネジメント人材:取り組みを先導する経営的スキルを持ち、DX推進全体の管理やディレクションを担う人材。②事業担当人材:ビジネスの在り方を描ける事業的スキルを持ち、ビジネス変革や業務変革のアイディアを考え主体的に推進する人材。③IT人材:ITの技術的なスキルを持ち、アプリ開発やツール開発ができる人材。
社内で育成することが理想ですが、時間やリソースの制約で難しい場合は、外部人材の活用も視野に検討するとよいでしょう。

③推進組織
自社のDX度合いに合った推進体制が整備されているでしょうか。理想的な推進組織としては専任部門を独立させ、全社のDX 推進を統括する形が望ましいですが、立ち上げ段階では既存部門を拡張させる形での推進も可能です。自社の組織規模、特性、人員のITスキルなどに応じて、以下の4パターンの体制例を参考に検討してください。

④権限と承認プロセス
既存の権限や承認プロセスが推進チームの迅速性を阻害する要因にはなっていないでしょうか。予算、組織変更などが権限移譲すべきポイントとして挙げられます。既にDXの取り組みを始めている場合は、阻害要因を経営と現場で認識を合わせて、仕組みを変えていくことが重要になります。

⑤制度
社内のルールや制度がDX推進に適したものになっているでしょうか。デジタルツールの導入に関するルールや報酬制度などです。阻害する要因はできるだけ排除し、推進を後押しできるような仕組みを取り入れていくべきです。全社的な変更が難しい場合は、デジタル特区を設けるなどして、DXに最適な環境を整備することも良い方法です。

⑥ITシステム
機能を使いきれていないシステムやデータ連携を阻害するようなレガシーシステムの存在はないでしょうか。DXにはデータの蓄積、分析・可視化、活用が前提となるため、それら要件を満たすためのシステムを整備する必要があります。フルスクラッチで自社最適なシステムを開発する方法もあります。しかし「Fit to standard」の考え方で、汎用のアプリやSaasを活用して、迅速且つ低コストで自社のDXの目的に合ったシステム全体の構想を設計することも有効です。

DXを一過性の取り組みに終わらせないために経営層も参画して行動を起こすべき

今後デジタル技術を手段として活用ができない企業の存続は危ういです。DXへの危機感を持っている人物は社内に必ずおり、彼らの行動を促し、強い企業に変革する時です。DXビジョンの発信はすでに行われているでしょうか。まずは大きな方向性を経営者自身の言葉で社内外に発信し、各部、各人で始まっているDXの取り組みを後押しするような環境整備にも着手してください。DXを全社的な取り組みとして推進するためには経営陣の意識を変え、今すぐに行動を起こすべきです。

AUTHOR著者
デジタルコンサルティング事業部
ゼネラルマネジャー
坂野 薫

大手製造業の設計領域を中心に業務効率化活動を行うコンサルティング会社を経て、当社に入社。現在は、デジタル化における業務効率化をテーマに専門知識とノウハウを駆使し、戦略策定から具体的な実行推進支援までを企業の実情に即して提供。「考え続け、行動する」を信条に、スピード感と実行力のあるコンサルティングに定評がある。

坂野 薫
データ利活用ナレッジ

関連記事

ABOUT
TANABE CONSULTING

タナベコンサルティンググループは「日本には企業を救う仕事が必要だ」という
志を掲げた1957年の創業以来、66年間で大企業から中堅企業まで約200業種、
17,000社以上に経営コンサルティングを実施してまいりました。

企業を救い、元気にする。私たちが皆さまに提供する価値と貫き通す流儀をお伝えします。

コンサルティング実績

  • 創業 66
  • 200 業種
  • 17,000 社以上