中小建設業におけるマーケティングDXの必要性と実行具体策

コラム 2024.12.06
マーケティングDX 戦略・計画策定 プロセス・ロードマップ
中小建設業におけるマーケティングDXの必要性と実行具体策
目次

1. 建設業の現在地と課題点

(1) 建設業を取り巻く環境の変化

「働き方改革関連法」が建設業にも施行され始めて4か月が経過した今日、建設・物流業界における2024年問題が提唱されています。法制度の改正に伴い、従業員の残業時間短縮と受注案件の工期の間で苦心している建設関連企業は少なくないでしょう。

(2) 建設業特有の課題点(仕組み・慣習)

建設業における主要な課題点は以下の3点です。

① 人手不足

人材不足は建設業に限った問題ではありませんが、特に建設業では「3K=キツイ、汚い、危険」のイメージが根強く、人材確保が困難です。大手ゼネコンでは広報施策や業務改革を進めていますが、中小企業では同様の施策が徹底されていない現状があります。

② 多重下請け構造

建設業特有の多重下請け構造では、元請けが受注した案件を一次請け企業へ発注し、その後、二次・三次請け企業へ業務を発注します。この構造により、中小企業は二次・三次請けとして案件を受注するケースが多く、間に介在する企業が増えることで下位下請けの利益が減少し、労務費へのしわ寄せが生じることもあります。

③ 競合の多さと差別化の困難さ

建設業では案件受注のために競合企業とのコンペティションが常態化しており、競合が多い状況下では差別化が難しいです。その結果、工期や金額を犠牲にして受注を試みることで、労務費の膨張や利益率の 悪化を招く悪循環に陥ることがあります。

これら3つの課題点を改善するためには、「マーケティングDX」施策が効果的です。次章で詳しく解説します。

2. 建設業におけるマーケティングDXの必要性と実行具体策

(1) なぜ建設業にマーケティングが必要なのか

前章で述べたように、建設業には人手不足、多重下請け構造、競合の多さと差別化の困難さといった課題があります。「マーケティングDX」施策がこれらの課題に対して効果的である理由は、以下の通りです。

① マーケティング×DXによる省人化

マーケティングにより真の顧客を特定し、ターゲットを絞った効果的な営業活動が可能になります。さらに、顕在顧客を呼び込むためのHPやマーケティングサイトを作成することで、従来の営業活動を行わずに顧客からの引き合いが生まれるDX化が実現します。これにより2段階の省人化が可能となり、人材不足の解消に寄与します。

② 自社ブランドや強みの訴求

マーケティングにより真の顧客を特定する過程で、自社の強みを明確に定義することが必要です。これにより自社の強みを対外的に発信し、ブランディングを進めることができます。正しく自社の強みを訴求することで競合他社との差別化が進み、仕事を取捨選択できるようになり、多重下請け構造から抜け出すことができます。

(2) マーケティングDXの実行具体策

マーケティングDXを実現するための手順は、現状分析、戦略立案、施策立案・実行の3つのフェーズに分けられます。

① 現状分析フェーズ

マクロ環境(PEST分析)、業界環境(5F分析)、競争環境(3C分析)を用いて客観的な課題把握を行います。SWOT分析により市場機会・事業課題を明確化し、戦略の方向性を固めます。また、WEB診断により自社HPのアクセス状態やターゲットキーワードのリーチ度を調査し、WEBサイトの課題点を把握します。

図1:デジタルマーケティングのレベル表。現状把握のための指標の一つ。

図1:デジタルマーケティングのレベル表。現状把握のための指標の一つ。

※タナベコンサルティング作成

② 戦略立案フェーズ

セグメンテーションにより戦う場・エリアを決定し、ターゲティングによって真の顧客を定義し、ポジショニングによって自社の強みの活かし方と顧客へのアプローチ方法を決定します。

③ 施策の立案・実行フェーズ

戦略立案フェーズで定義したエリア・顧客・アプローチ方法をもとに、マーケティング施策を立案します。具体的には、セールスKPIの再構築、営業ツールの改善、プロモーションやプロジェクト推進の年間スケジュール構築、WEBサイト構築の基本方針の取りまとめなどが含まれます。施策の実行フェーズでは、コーポレートサイトやマーケティングサイトの構築・改善、広告・SNS・MAツールの運用、イベントやセミナーの開催などが有効です。

3. マーケティングDXプロジェクトを成功させるために

(1) マーケティングDXで失敗する典型例

マーケティングDXが成果を上げない場合の理由として以下のパターンが考えられます。

① WEBページを作りっぱなし

施策としてのデジタル化にとどまり、DXの風土醸成に至らないケースです。マーケティングサイトを構築してもコラムの更新を怠るなどコンテンツ不足で集客につながらないことが多くあります。

② リード情報を活かし切れていない

営業部門との連携不足やMAツールで取得した情報の活用不足、リードを早期に刈り取ってしまうなどの理由で成果につながらないケースです。

③ 成果が限定的で競争優位には繋がっていない

マーケットやターゲット設定が広すぎて投資対効果が薄れるケースです。戦略立案段階でのセグメンテーションやターゲティングの問題が考えられます。

(2) マーケティングDXプロジェクトを成功に導く3つのポイント

失敗を回避するために必要なのは以下の3点です。

① DX施策実行後も継続的にWEBサイトの解析とコンテンツの更新を行うこと
② MAツールを用いた解析結果を営業部門と共有し、連携して施策を構築すること
③ 戦略策定フェーズにおけるセグメンテーション・ターゲティングを専門家に依頼すること

特に戦略策定については「戦略の失敗は戦術では取り返せない」という言葉があるように、大局観の誤りは具体的施策で取り返すことができません。戦略策定フェーズで悩んでいる場合、専門家に依頼するのが最も効果的です。弊社ではマーケティングDXに関するメニューも取り揃えておりますので、お悩みの方はぜひ弊社WEBサイトからご相談ください。

今回は建設業におけるマーケティングDXの必要性から実行具体策までを解説しました。マーケティング戦略は成果を得るまでに忍耐と継続力を要しますが、継続するほど効果が発揮されます。現状に課題を抱える中小規模の建設会社様は、ぜひマーケティングDXに着手し、課題解決へ継続して取り組んでいっていただきたいです。

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AUTHOR著者
デジタルコンサルティング事業部
コンサルタント
田實 純

営業のデジタルシフト化を専門領域として、大手建材メーカーにおけるデジタルマーケティング構築、食品卸商社におけるCI・VI策定、中小製造業におけるコーポレートサイトリニューアルといったコンサルティング案件に携わる。クライアントサクセスの体現を信条にコンサルティングを提供している。

田實 純
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