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2022.09.30

ホールディング経営とは?ホールディングの基礎知識から種類まで解説

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ホールディング経営とは?ホールディングの基礎知識から種類まで解説

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ホールディングスとは

ホールディングスとは、複数の株式会社を傘下に持っている会社(持株会社)を設立し、グループ経営を行う会社のことを指します。この組織形態は、企業が規模を拡大し、多様な事業を展開する際に、各事業を効率的に管理・運営するための戦略的手段として活用されます。
この持株会社を中心とする経営スタイルがホールディング経営であり、その体制に移行することがホールディングス化です。企業が規模を拡大し、多様な事業を展開する際、各事業を効率的に管理・運営するための戦略的手段として活用されます。ホールディングス化を採用することで、各事業会社は独立した経営を行いながらも、グループ全体としてのシナジーを最大化することが可能になります。

ホールディングス化の目的

企業がホールディングス化を行う目的として大きいのが「経営資源の最適化」です。企業は限られた経営資源を有効活用し、企業価値の向上を目指していく必要があります。ホールディングス化を行うと、持株会社と傘下の事業会社の役割分担が明確になります。

・持株会社の役割
持株会社はグループ全体の戦略策定や、経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報・ノウハウ)の配分、各子会社の管理に専念することが出来ます。

・傘下の事業会社の役割
傘下の事業会社は、それぞれの事業運営に集中することが出来ます。

各事業は法人格を持ち独立をしているため、権限と独立性を保ちながら事業運営を進めることが可能です。このような形でホールディングス化では持株会社と各事業会社との役割分担が進み、お互いの業務に専念できるようになるため、経営資源が最適化され、生産性や収益性が最大化するといわれています。結果として、グループ経営の効率化や強化を図るためのプラットフォームとして機能し、企業グループ全体の成長を後押しします。そのため、多くの企業が多角化や事業再編、事業承継といった経営課題を解決するため、ホールディングス化を検討しています。
この経営スタイルは、グループ全体の成長と競争力を高めるための重要な戦略として、ますます重要になっています。

ホールディングスとグループ会社の違い

「ホールディングス」や「グループ会社」という用語は、文脈によっては混同されがちですが、これらは企業グループの形態と組織構造という観点から、以下のように区別されます。
まずグループ会社とは、「複数の異なる事業を営む、単一の企業、もしくは複数の連結事業体からなる多角化企業」を指し、複数の事業を統括している企業集団の状態や概念を定義したものです。

一方で、ホールディングス化された組織形態は、企業グループを統括する持株会社と傘下の事業会社により構成されます。これは、グループ会社という状態を、組織の仕組みから実現するための具体的な手段の一つと言えます。
具体的には、顧客・マーケットと向き合う事業会社と、経営資源を提供する土台としてのホールディングカンパニーに会社単位で分社する組織形態です。
したがって、グループ会社という企業集団を効率的に推進するためのプラットフォームとして、ホールディングスという組織形態が存在すると捉えるべきです。ホールディングス会社は、グループ全体の統括を担い、事業戦略の策定や人材の配置などを通じて各事業会社の運営をサポートします。その結果、各事業会社は自社の事業に集中し、効率的な運営が可能になります。この組織構造は、グループ全体の成長と競争力を高めるための重要な戦略です。

ホールディングス化のメリット・デメリット

ホールディングス化は、グループ全体の戦略的な成長を目的とする強力な手段ですが、組織再編に伴うメリットと同時に、留意すべきデメリットも存在します。ここでは、組織戦略、財務戦略、人材戦略の観点から、その主な要素を詳細に解説します。

1.ホールディングス化のメリット

ホールディングス化のメリットは、持株会社と事業会社の機能分離によって、多角的な側面でグループ全体の最適化が図れる点にあります。

(1)組織戦略・ガバナンスの強化

・自律性の高い経営の実現
権限委譲が明確な形で事業会社に確保されるため、各事業会社の経営者は市場変化に合わせた迅速かつ柔軟な意思決定が可能となります。

・監視機能の強化
経営(持株会社)と事業(事業会社)の機能が完全に分離されるため、持株会社による客観的な視点からの監視機能が強化され、グループ全体のガバナンスが向上します。

・M&A戦略の促進
新規事業をM&Aで取り込む際、既存の事業会社に影響を与えずに傘下の新たな子会社として組み入れやすいため、事業ポートフォリオの再構築や拡大がスムーズになります。

(2)財務・資本戦略上の優位性

・経営効率の向上と迅速な意思決定
持株会社がグループ全体の戦略策定に集中し、各事業会社が本業に専念できるため、経営効率の向上が期待できます。

・節税効果の享受(連結納税制度など)
連結納税制度(グループ通算制度)を利用することで、グループ内企業全体で法人税額を計算できるため、赤字子会社の損失を黒字子会社の利益と相殺でき、税金面で大きな節税効果を得られる場合があります。

・事業承継対策
持株会社を設立することで、株価を抑制しつつ後継者への株式移転を計画的に行うことが可能となり、円滑な事業承継対策として機能します。

(3)人材戦略の強化戦略

・リーダーの育成
最終ゴールをグループ経営者とする人材育成プログラムを構築しやすくなり、戦略リーダーや次世代経営幹部が育ちやすい風土が醸成されます。

・多様な人事制度の設計
各事業会社ごとに異なる事業内容や職務特性に合わせた柔軟な人事制度を導入しやすくなり、多様な人材の確保と動機付けにつながります。

2.ホールディングス化のデメリットと留意点

一方で、ホールディングス化は組織構造が複雑化するため、運用面でいくつかのデメリットも発生します。

・グループ内の一体感の喪失
各会社ごとの意思決定による運営となる影響で、グループとしての一体感や求心力が生まれにくい側面があります。また、会社間の意思疎通や連携が取りづらくなるリスクも伴います。

・間接コストの増加
持株会社の人件費や運営コストが発生するほか、各事業会社で独立した部門を持つことによる部門の重複や、持株会社が担うシェアードサービスの導入・維持に伴うコストが増加する可能性があります。

・組織運営の複雑化
持株会社と事業会社の間の収益配分や、権限移譲の線引きなど、組織間のルール作りと運用が複雑化し、経営者の負担が増える可能性があります。

ホールディングス化における持株会社の種類

ホールディングスは目的や成り立ちによって事業持株会社、純粋持株会社、金融持株会社の3種類に分けられます。株式保有による管理を目的とする純粋持株会社に対して事業持株会社は直接事業も手掛ける点が異なります。また、金融持株会社は金融業界に深く関係しています。
それぞれの持株会社の定義を詳しく紹介します。

・事業持株会社
事業持株会社とは、株式保有だけでなく自ら事業を営む会社を指します。企業は持株会社になった後も、引き続き事業の継続が可能です。

・純粋持株会社
純粋持株会社とは、統治や支配を目的に対象企業の株式保有のみを行う会社を指します。純粋持株会社では、企業が新たに持株会社を設立する点や事業を行わず収益が基本的に子会社からの配当金に限られる点が特徴になっています。

・金融持株会社
金融持株会社とは、金融業界の企業が設立する持株会社の事を指します。統治・支配目的に新たに持株会社を設立するため、純粋持株会社の一つに分類されることもあります。

このような形でホールディングスには大きく分けて3つの種類があるため、正しく理解をすることが企業成長において大事になっていきます。

ホールディングス化の具体的な手法

ホールディングス化のメリットとデメリットを検討し、導入を決めたら、次は具体的な移行手法(スキーム)を検討する必要があります。主なホールディングス化の手法には、企業の状況や目的によって使い分けられる、以下の3つがあります。

1.株式移転方式(新設持株会社方式)

複数の事業会社(子会社となる会社)の株主全員が、新たに設立する純粋持株会社に対し、保有する株式を移転し、代わりに新設持株会社の株式の交付を受ける手法です。

・特徴
既存の事業会社はそのまま残り、新設の持株会社がそれらを統括します。主に複数の独立した会社を束ねる場合や、事業承継対策として最も多く用いられる簡便な手法です。

2.会社分割方式(分社型持株会社方式)

既存の会社(事業会社)を、複数の事業部門と持株会社に分割する手法です。具体的には、既存の会社が自らの事業を切り離し、新設する子会社に承継させ、既存の会社が事業を行わない純粋持株会社へと移行します。

・特徴
既存の会社が純粋持株会社となり、その下に事業部門が子会社としてぶら下がる形になります。一つの会社内で複数の事業部門を持つ企業が、事業ごとに独立した会社組織に移行する際に適しています。

3.株式交換方式(既存会社活用方式)

既存の会社のうち一つを持株会社とし、他の会社の株式をすべて取得し、その対価として持株会社の株式を交付する手法です。

・特徴
既存のグループ内に既に持株会社としたい会社が存在する場合や、M&Aによってグループに企業を取り込む際に用いられます。既存の会社の法人格は維持されます。

これらの手法は、それぞれ法務・税務上の手続き、株主構成、資金調達の有無に違いがあります。特に税務上の優遇措置(適格要件)を適用できるかどうかが重要になるため、導入目的と自社の財務状況に応じて最適なスキームを選択する必要があります。

従来型の親会社とホールディング経営

【図表1】は、従来型の親会社とホールディング経営における組織形態の違いを図示したものです。従来型の親会社の組織形態は、親会社の中にグループ全体を統括する機能(コーポレート機能、サービス機能等)は含まれているものの、あくまで事業会社である親会社が関係会社を管理するというものです。親会社の事業が主事業であり、関連会社は関連事業や販売・製造機能を運営するという位置づけであります。親会社が子会社の上位に位置するという親子関係が成立するため、親会社単体の業績が重視されやすくなり、また親会社の業績や戦略に子会社運営が左右されやすくなる傾向があります。

一方で、ホールディング経営では、グループ本社機能と事業会社運営を完全に分離し、HDCはグループ経営を推進するプラットフォームとしての機能・役割に専門特化します。HDCは事業を持たないため、特定の事業の利益ではなく、グループ全体の利益最大化を目的とした、グループ最適の判断が可能となります。

なお、ホールディングス化において目指すべき将来像については下記ページに記載しておりますので、ぜひご覧ください。

従来型の親会社とホールディング経営図:タナベコンサルティング作成

グループ経営プラットフォームとしてホールディングス化を機能させるステップ

ホールディングスを有する組織形態において、HDCの中身として機能や組織が全くないケースが見受けられます。この場合のHDCは株式を保有しているだけのいわゆるペーパーカンパニーであり、税務対策を主目的としたホールディング経営体制と言えます。この状態から脱却し、グループ経営におけるプラットフォームとして、ホールディングス化を機能させるためには、機能デザイン、組織デザイン、収益デザインの3ステップで設計・具体化を進める必要があります。

機能デザインとは、HDCに持たせる機能・役割を具体化するステップです。タナベコンサルティングでは、5つのテーマ(グループ理念、グループ経営企画機能、グループガバナンス機能、グループマネジメント機能、シェアードサービスセンター)を機能させることを提言していますが、自社においてこの5つの機能をどのように実装するかを検討しなければなりません。そのためには、各機能を業務レベルに落とし込み、果たすべき役割を具体化することが必要です。例えば、グループ経営企画機能であれば、グループビジョン・中期計画の策定、グループブランディング戦略の立案、新規事業開発などがあげられます。シェアードサービス機能であれば、総務・人事・経理業務の内、HDCに集約し代行すべき業務範囲の特定を進める必要があります。このようにHDCが担うグループ本社機能をより具体的に設計することがステップ1です。

組織デザインとは、決めたグループ本社機能を担う、組織を具体化するステップです。機能を実装するためには、必ずそれを実行する組織や社員が必要となります。経営企画機能を実行する「グループ経営企画室」、シェアードサービスを実行する「グループ管理本部(総務部、人事部、経理部等を統括)」等をHDC内の組織として設計し、決めたグループ本社機能を誰が果たすのかを明確にすることがステップ2です。 よくあるケースとして、人的リソース不足(機能を果たせるスタッフがいない)により、機能を実現できないという問題に直面することがあります。この場合は、スタッフの充実とあわせて段階的に機能を実装させていくステップを踏む必要があります。

収益デザインとは、HDCと事業会社の収益構造を設計することです。HDCに従業員が所属し、機能を果たすための業務遂行をするということは、HDCにランニングコストが発生するということです。当然HDCを赤字にし続けるわけにはいかないため、コストに見合った収益源を確保する必要があります。HDCの収益源は、傘下の事業会社から吸い上げることとなりますが、どのような名目で、いくら吸い上げるかを設計する必要があります。事業会社から収益を吸い上げる手法としては、①経営指導料、②シェアードサービス料、③不動産賃貸料、④配当金の4つがあげられます。一般的には、経営指導料は親会社が子会社の経営管理を履行する対価として設定、シェアードサービス料は間接業務を事業会社に代わって親会社が代行する対価として設定、不動産賃貸料は親会社が所有する不動産を子会社に賃貸する対価として設定、配当金は子会社の利益から一定の割合で親会社が受領する金銭として設定します。各項目の金額設定に決められたルールはないものの、何に対する対価であるかを明確にしたうえで設定することが必要になります。これらの収益源の設計により、HDCのランニングコストをカバーする、またHDCの投資財源を確保していくことになります。当然HDCの収益を高めれば高めるほど、事業会社の利益は減少するため、HDC・事業会社の収益構造のバランスを取りながら設計を進めることがステップ3となります。

以上がホールディングス化をグループ経営プラットフォームとして設計する3ステップです。グループ経営、その推進体制としてのホールディング経営の構築の考え方です。

グループ経営プラットフォームとしてHDCを機能させるステップ図:タナベコンサルティング作成

まとめ

ホールディング経営では、ホールディング会社がグループ統括を行い、子会社は自律的に事業を運営します。グループ経営とホールディング経営の違いは、組織構造と機能の分離にあります。

ホールディングス化のメリットは、経営資源を効率的に活用でき、経営の安定化や事業リスクの分散が図れることです。一方で、経営が複雑化し、経営者の負担が増える可能性といったデメリットもあります。

ホールディングス化は、組織デザイン、機能デザイン、収益デザインの3つのステップで実施されます。そうすることで株式保有のペーパーカンパニーから、グループ経営における効果的なプラットフォームへと発展させることが目指されます。

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なお、下記コラムにてダイヤモンド社発行の「ホールディング経営はなぜ事業承継の最強メソッドなのか」の第1章を掲載しております。ぜひご覧ください。

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