組織における意思決定の種類とは?
トップダウン・ボトムアップの活用法を解説!
- コーポレートガバナンス

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昨今の企業を取り巻く環境は急速に変化を遂げています。企業は「環境適応業」であり、絶えず変化する環境に適応していくことが成長している企業の原理原則です。成長を実現するためには、事業戦略や投資戦略など、経営における意思決定を合理的に進めていくべきであり、それを迅速に実施していく必要があります。本コラムでは、意思決定スタイル別でのポイントを押さえていただき、自社の最適な意思決定スタイルを検討していただきたいと考えています。
一般的な意思決定スタイル
一般的な意思決定スタイルとして「トップダウン型」と「ボトムアップ型」があり、それぞれの特徴は下記の通りとなります(図1参照)。
1.トップダウン型
- (1)特徴:
- 経営層や上層部が意思決定を行い、その決定事項を組織全体に指示する形式のこと。
- (2)メリット:
- 上から下に下ろすことで迅速な意思決定が可能となること、トップの強力な推進力が図れること。
- (3)デメリット:
- 現場の意見が反映されにくく、従業員のモチベーションが低下する可能性があることや、トップの判断ミスによる影響が大きくなる。
2.ボトムアップ型
- (1)特徴:
- 現場の従業員やチームから意見やアイデアを吸い上げ、それを基に上層部が意思決定を行う形式のこと。
- (2)メリット:
- 現場の意見が反映されやすく、従業員のモチベーション向上と推進力強化、多様な意見の収集が可能となる。
- (3)デメリット:
- 意思決定に時間がかかる点や、意見がまとまらない場合がある。
組織上で上から下ろすか、下から吸い上げるかが大きな違いですが、国内企業の意思決定スタイルとしてトップダウン型での意思決定を行う企業が多いです。オーナーシップ型の企業が多く、オーナー家が企業のトップとして位置付けられ、オーナーが言うことは絶対という昭和時代ながらの意識が意思決定スタイルとして根付いていると言えます。
図1
出所:タナベコンサルティング作成
組織構造別での意思決定スタイル
上記の意思決定スタイルは、従来から広く浸透しているものですが、組織構造や状況に応じて、適切に使い分けることが重要です。企業のライフサイクルにおいて、組織の形態は段階を踏みながら進化していくとされています。
STEP1:ライン&スタッフ組織(図2参照)
創業期やベンチャー企業でよく採用される、最もシンプルで基本的な組織デザインです。プロフィット部門とコストセンターの2つに大きく分けられている。社長が直接管理できる範囲で構成されているため、トップダウン型を採用するケースがほとんどです。
STEP2:機能別組織(図3参照)
企業の成長に伴い、担う機能が増加することで、機能別で部門を編成する組織デザインです。各部門は機能や役割が明確にされており、一般的には開発・営業・購買・生産・管理といった形で部門分けが行われます。高い専門性を活かした分業体制が構築できる一方、部門間の連携性が不足するとセクショナリズムに陥る危険性があります。この段階では、トップダウン型を採用するケースが多いです。
STEP3:事業別組織(図4参照)
事業別の独立採算を重視した組織デザインであり、事業領域別やエリア別で組織単位が編成されます。メリットとしては、独立採算によって事業部を企業のように運営できる点が挙げられます。一方、デメリットとして、事業部間での重複する機能が発生しやすい点が挙げられます。この段階から、トップダウン型とボトムアップ型の意思決定スタイルが併用されるようになります。
その後のSTEP:ホールディング組織・カンパニー制(図5参照)
事業別組織と同様に、独立採算型組織であり、各事業会社単位で運営されるため、各事業会社のトップは社長という肩書がつきます。権限を各事業会社に移譲することで、組織運営のスピードアップや権限と責任の明確化を狙って導入するケースが多いです。この段階まで進むと、各社で意思決定が行われる一方、グループ全体ではトップダウン型もしくはボトムアップ型で意思決定が進められます。
出所:タナベコンサルティング作成
最適な意思決定スタイルの選択
組織構造は企業によって千差万別であり、どのスタイルを採用しても間違いではありません。しかし、組織は戦略に従うものであり、成長の過程で組織は「分権化」していく必要があります。企業規模が大きくなるほど、経営層が所管できる範囲が広がり、自然とマネジメントが行き届かなくなってきます。従って、経営目線で物事を捉え、判断できる人材を育成し、その人材に権限を移譲することが成長に向けた必須要件となります。
経営人材が増えた中で全社経営が実現できる意思決定スタイルを確立するためには、トップダウン型とボトムアップ型を、時間軸や緊急度に応じて使い分けることが重要です。例えば、緊急度が高い案件では、迅速性と専門性が求められることが多いため、トップダウン型を採用します。一方、日常業務や改善事項では、現場の意見が実現性の高いケースが多いです。また、中長期的な事業成長を検討する際には、多様な意見を収集する必要があるため、ボトムアップ型の意思決定スタイルを確立していくべきでしょう。
ホラクラシー組織による自律型意思決定
近年、ホラクラシー組織という考え方が注目されています。従来のヒエラルキー組織型のように、トップダウンで意思決定が行われるのではなく、各チームやグループ単位で自律的に意思決定を行うスタイルを指します。各チームやグループが少人数単位で編成されることが多いため、意思決定スピードが格段に早くなる傾向があります。また、メンバー個々人に役割が付与されることで、自律性と主体性が醸成されやすいというメリットがあります。しかし、組織内で複数のチームやグループが編成されるため、全社的なルールや意思決定プロセスを明確に定めておく必要があります。
ホラクラシー組織は海外企業で広く採用されている組織デザインですが、国内企業ではまだ十分に浸透していないのが現状です。その理由として、冒頭で述べたように、国内企業ではトップダウン型の組織が依然として多く、日本人特有の「上の言うことには従う」という国民性が影響していると考えられます。ホラクラシー組織をそのまま導入することを推奨するわけではありません。重要なのは、メンバー個々人が主体性を持って経営に参画できる経営スタイルを設計し、その中で最適な意思決定スタイルを検討していくことです。
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