COLUMN

2025.10.31

オーナー企業の意思決定構造を解説:
トップダウン経営の課題と成功させるポイント

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オーナー企業の意思決定構造を解説:トップダウン経営の課題と成功させるポイント

目次

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経営のスタイルとして、トップダウン経営やボトムアップ経営という言葉を耳にしたことがある方は多いと思います。トップダウン経営は独裁的で、ボトムアップは現場の意見を取り入れる良い経営スタイルである、という印象を持たれている方もいるかもしれませんが、果たしてそうでしょうか。
トップダウン経営は、特に非上場企業の中堅・中小企業のオーナー企業に多いと言われます。非上場企業では、オーナー家が株式の多くを保有していることが多いため、オーナー家によるトップダウン型の経営意思決定が行われる傾向にあります。2021年の中小企業庁による調査結果によると、全企業数は337.5万社、非上場企業を中心とする中小企業数は336.5万社です。日本における非上場企業の割合は約99%と多くがトップダウン経営を行っていると推察されます。
そこで今回は、トップダウン経営の概要とメリット・デメリット、トップダウン経営におけるポイントをご紹介いたします。

※中小企業庁:中小企業・小規模事業者の数(2021年6月時点)

トップダウン経営とは

トップダウン経営とは、経営陣が経営方針や経営戦略を決定し、現場に落としていく上意下達の経営スタイルを指します。経営陣より下の組織階層である現場は、経営陣の指示を受け、経営方針や経営戦略の指示通りに実行に移します。それに対して、ボトムアップ経営は、現場の意見や提案を吸い上げ、会社の経営に経営方針や経営戦略を反映する経営スタイルを指します。

トップダウン経営は、心理学者クルト・レヴィン氏が提唱した3種類のリーダーシップスタイル(専制型・民主型・放任型)のうち、専制型リーダーシップに基づく経営スタイルといえます。
専制型のリーダーシップスタイルとは、リーダーが部下(メンバー)の行動の意思決定をすべて決定するタイプのリーダーシップです。経営陣が物事の判断・意思決定を行うため、現場は経営陣の判断に基づいて行動を実行するのみです。専制型リーダーシップは創業社長が率いる組織に多い傾向があります。
次に、民主型リーダーシップスタイルとは、リーダーが部下(メンバー)・現場の意見を聞き、現場の考えに基づく方針や行動を経営活動に取り入れるタイプのリーダーシップです。経営陣のみの考えに基づく意思決定とならず、現場の意見も意思決定に反映していく民主的な経営スタイルといえます。
最後に放任型リーダーシップとは、部下(メンバー)にリーダーは指示など働きかけをせずに、個々の自律性を尊重した経営スタイルです。

トップダウン経営のメリットとしては、主に①迅速な意思決定、②戦略の一貫性を保ちやすい、③組織全体の統一感を保ちやすい、の3点が挙げられます。
経営陣が直接現場へ指示を出すことで、現場がそれぞれ考えることがなく迅速な行動が可能となります。また、経営陣が全社視点で現場へ指示を出すため、全体のビジョン・戦略が明確になり、各部門が一貫した方向に進むことができます。

デメリットとしては、①現場の意見が反映されづらい、②市場環境変化に沿った柔軟性に欠ける、③従業員のモチベーション低下・能力向上の機会が少ない、の3点が挙げられます。
トップダウン経営の場合は、顧客と一番近いはずの現場の意見は経営活動に反映されず、経営陣が現場感覚を常にアップデートできなければ、環境変化に対応できない場合があります。また、現場が経営に対して要望を持っている場合は、意見を受け入れてくれないことで不満に感じることがあります。経営陣以外は中長期的な視点で戦略を考えたり、各施策立案に関わらないことから指示待ち社員となる傾向があります。特に創業者が率いるトップダウン経営の場合では、意思決定を担える人材が十分に育っていないことが多く、経営者が不在になると会社の運営が滞る恐れがあります。

トップダウン経営を成功させるポイント

トップダウン経営を成功に導くポイントは、①リーダーシップの重要性をトップが理解すること②コミュニケーションが円滑に図れる仕組みを作ること③明確なビジョン・目標を掲げることの3点です。
専制型のリーダーシップを発揮し、自社のビジョン・目標を実現するための方針・戦略を明確にし、現場へ発信・落とし込むことが必要です。また、トップの指示が現場すべてに迅速に伝達されるような仕組み(経営のバックボーンシステム)が必要です。

経営のバックボーンシステムとは、価値判断システム(経営理念、中長期ビジョン、中期経営計画、年度計画や年度基本方針)から、実行推進システム(部門方針、業績管理、会議制度など)まで、経営陣の指示が現場に一貫して伝わる仕組みのことを指します。どんなに経営陣が優れた戦略を現場に指示したとしても、現場が動かなければ成果は期待できません。トップダウン経営を成功に導くためには、経営陣のリーダーシップはもちろんのこと、コミュニケーションが円滑に図れる仕組み(経営のバックボーンシステム)の構築が求められます。

トップダウン経営を成功させるポイント
出所:タナベコンサルティング作成

最後に

トップダウン経営やボトムアップ経営が唯一無二に絶対的な正解はなく、自社や業界に適したスタイルを選ぶ必要があります。事業規模が拡大すると、経営陣が価値判断基準(中長期ビジョンや中期経営計画)を現場へ発信する一方で、現場も自らの意見を基に部門方針を策定し、経営方針に取り組むケースが増える傾向があります。したがって、トップダウン経営とボトムアップ経営のメリット・デメリットを、総合的に考慮して自社の経営スタイルに取り組むことが重要です。
トップダウン、ボトムアップのいずれの経営システムであっても、コミュニケーションを円滑に図る仕組みづくりは必要です。適切な組織設計や会議体、報告事項のルール化などを自社に取り入れるために、まずは自社の組織構造や意思決定構造を棚卸し、経営陣の方針が迅速かつ適切に現場に伝わっているかを振り返りましょう。
近年の事業承継において、創業者によるトップダウン経営から、経営幹部を含むトップダウン経営や、一部に民主型リーダーシップを取り入れた経営へと移行するケースが増えています。トップダウン経営の場合でも、特定の個人に依存した経営活動は、万が一のことがあった際に、事業継続が危ぶまれるリスクを伴います。経営のバックボーンシステムなど経営の仕組みを整備し、属人的な経営から組織経営へシフトしていきましょう。

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