デジタル技術によるイノベーション実現に至るための考え方とは
企業が抱える課題
めまぐるしく革新を続ける技術対応についていけない企業
技術革新は凄まじいスピードで進んでおり、その速さは「Dog year(ヒトの1年が犬の7年に相当することから技術革新のスピードを例えたもの)」とも呼ばれます。あらゆる産業でイノベーションが生まれ、既存の商慣習や商材が陳腐化してしまう、いわばデジタルイノベーションによる淘汰が起きていると言えるでしょう。その環境下にあって、イノベーションの重要性は理解しつつも推進するための突破口を見いだせず、過去の遺産の延長線上の改良しかできない企業様は少なくないと思います。本稿では、イノベーションを起こしたくても起こせていない企業様に向けて、自社でイノベーションを起こすための条件整備についてお伝えします。
解決策
技術動向と市場動向を理解し、社会課題解決に繋がるイノベーションに投資する
意図的にイノベーションを起こすためには、やはり戦略的な投資が欠かせません。しかしそのためには確たる内外の分析、そして意思決定が重要となります。また、実際にイノベーションの種を生み出していくための場の重要性についてもお伝えします。
イノベーションを固有技術と市場のマッチングから捉える
タナベコンサルティングでは、事業環境を分析するために用いるフレームに1T4Mというものがあります。1Tが固有技術(Technology)、4Mがそれぞれ市場(Market)、マネジメント(Management)、カネ(Money)、ヒト(Man)です。このフレームは事業を推進する上ではこの5つの要素が揃い、また互いに関連性を持つことが重要であることを示しています。この中でも、本稿で扱うイノベーションに最も関わりがあるのは固有技術と市場です。つまりデジタル技術によるイノベーションを成功させる上では、どのように両者をマッチングさせていく事が肝要となります。
固有技術とは言うまでもなく、自社の競争力の源泉であり、世の中に付加価値を生む源泉であり、製品やサービスを作るために自社が保有するナレッジです。一方で市場とはニーズとも言い換えることができ、人の営みの中に遍在する困りごとや不便さに対して解決策が求められる領域です。ニーズに対し固有技術で解決策を提供できれば取引が生まれ、事業となります。
イノベーションを推進する上では、既存事業で成立している「固有技術」と「市場」の一部を崩すことによることからも考えることができます。即ち、既存事業からの自社の固有技術を持って新たな市場に進出する、自社が今抑えている市場に新しい固有技術を保有し開発をする、というものです。以下では特にデジタルイノベーションを期待されているテーマについて紹介し、既存の固有技術との接点について説明します。
イノベーションによる解決が期待される社会課題と投資
イノベーションの期待されているテーマを選定するためには、外部環境の調査が欠かせません。今回は例として内閣府の発行しているSociety5.0で上げられているテーマを読み解き、解決されるべき社会課題や取り入れるべきデジタル技術について紹介します。
Society5.0は内閣府により提言された「サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会(Society)」という社会構想です。例えば、予防検診やロボット介護により健康寿命延伸や社会コストの抑制を実現する、エネルギーの多様化や地産地消の仕組みづくりによりエネルギーの安定確保や温室効果ガスの排出削減を実現する等です。
それぞれのテーマは壮大に思えるかもしれませんが、重要なのはこれらの社会課題がニーズであり市場であると捉えることです。自社の既存事業で関連性のある社会課題を調査することで、イノベーションの方向性を導くことができるということです。ターゲットが確定すれば、それを元に戦略を立ててヒトとカネを投資し、イノベーションのための働きかけができます。
イノベーションを創出するための場の重要性
本稿では、デジタルによるイノベーションを推進するためには市場即ちニーズを特定し、イノベーションに関する方向性を打ち出すことの必要性をお伝えしました。最後にお伝えしたいのは、イノベーションの種を生み出すための場の重要性です。
デジタルによる改革例としてよくリモートワークが挙げられておりますが、イノベーションを生むための取組とは分けることが必要です。リモートワークそれ自体は働き方改革の観点からも重要であると言えますが、組織の創造性が損なわれる可能性が一部で指摘されています。例えばコロナ禍によるテレワーク移行により、従業員満足の他創造性が奪われたと感じる等、リモートワークが就業利便性を向上させた一方で特定能力の発揮が阻害されてしまうリスクも指摘されています。
そのために、対策として如何に従業員同士の交流を保ち、打合せ時に深く没入していくための仕組みづくりは重要です。対面を増やすことはその解決策になりますし、バーチャルオフィス等を活用することも対策になりうるでしょう。
デジタルによるイノベーションを実現するためには、ニーズを抑えた戦略的な意思決定が原則となります。技術革新のスピードが加速している現在だからこそ、自社が抑えている市場に関連する技術動向や社会課題解決を抑えて、正しくイノベーションしていくための方向性を見つけて下さい。
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