STUDY

VUCA時代の中期経営計画の在り方

山本 剛史

本プログラムの執筆者

タナベコンサルティング
取締役
ストラテジー&ドメインコンサルティング事業部
ストラテジー&ドメイン(大阪)担当 兼 ドメイン大阪・東京担当
住まいと暮らしビジネス成長戦略研究会サブリーダー

山本 剛史

大手ゼネコンにて設計・監督業務に従事後、当社に入社。事業戦略を事業ドメインから捉え、企業の固有技術から顧客を再設定してビジネスモデル革新を行うことを得意とするタナベ屈指のコンサルタント。成果にこだわるコンサルティング展開で、特に現場分散型の住宅・建築・物流事業、多店舗展開型の外食・小売事業で、数多くの生産性改善実績を持つ。

中期経営計画策定の目的

長期ビジョンの実現に向けた成長プロセス

タナベコンサルティングでは、企業の未来である長期ビジョンの策定を推奨しています。VUCAに言われるように、複雑で変動性の高い市場環境の中で企業としてサスティナビリティを追求していく必要がありますが、現状のテクノロジーでは、我々は未来を予測することは難しく、自社の未来に対して、確実性の高いイメージを描くことは難しいと言えます。しかしながら、未来の予測は困難ではあっても、企業が"なりたい未来"は描くことは可能ではないでしょうか。なりたい未来を長期的に描くことが長期ビジョンを描くということです。

その中で、中期経営計画は"なりたい未来に対して進むべきプロセスを計画する"位置づけになります。タナベコンサルティングでは、長期ビジョンを約10年で設定し、中期経営計画を3カ年で策定します。10年の中で3カ年の中期経営計画を3ターム回し、未来に向けて進んでいくことになります。当然ですが、ブラッシュアップは毎年必要になります
長期ビジョンと中期経営計画の違いは、長期ビジョンは企業全体の方向性や将来のある時点における状態を設定する位置づけであり、中期経営計画は進む道のり、プロセスを設計する意味合いとなるという点です。

関連コラム:中期経営計画とは?目的から策定時の注意点まで解説

中期経営計画策定の流れ

中期経営計画策定 ステップ1

現状認識を行い成長のスタートラインを認識する

中期経営計画は、長期ビジョンに対するプロセスを明文化したものです。
中期経営計画の策定のステップは下記3つのステップに区分することができます。
ステップ1:現状認識と課題の共有、ステップ2:成長テーマの設定、ステップ3:アクションプランの設計

現状を認識する
現状認識は現在の会社の状態を内部環境、外部環境の視点から整理し、分析することです。
中期経営計画で描く成長プロセスは、会社としてのクリアすべき項目が時系列に整理されたものであり、そのクリアすべき項目の設定は、目標に対する現状とのギャップであると言えます。現状認識は、経営、ビジネスモデル、ファイナンシャルモデル、コーポレートモデルの4つの視点で分析します。各視点における現状をファクトベースで整理し、体系的に考察することで、自社の現在地を把握します。

ビジネスモデル
PESTやバリューチェーンの視点で自社の事業構造・ビジネスモデルを分析 ①業界分析:業界・競合の現状及び将来分析 ②顧客分析:顧客の現状及び将来分析 ③自社分析:戦略、戦術・戦闘別に各種分析
コーポレートモデル
組織体制、人材マネジメント、経営システムを企業規模や成長ステージを基準に客観的に分析 ①組織構造・組織デザイン・組織機能分析 ②人材マネジメント:人事システム・人材育成 ③経営システム:会議体系、ガバナンスなど ④CSVの取り組み状況
ファイナンシャルモデル
決算書や財務指標による経営分析、業績管理資料による収益マネジメント分析 ①財務指標:決算書をベースとした経営分析 ②財務構造:収益構造、投資動向、資産分析 ③会計制度:部門・商品別などの管理会計

※ビジネスモデルは事業戦略、ファイナンシャルモデルは財務戦略、コーポレートモデルは組織戦略の位置づけ
※タナベコンサルティングでは中期経営計画を3年としている

成長テーマの設定とアクションプラン

現状認識を実施した後に、成長テーマを設定します。成長テーマとは、長期ビジョンに対する現在地とのギャップ(=課題)を取り組み項目として整理したものです。成長テーマを構成する要素は大きく2つに分けられます。一つ目は、各年における定量・定性ゴールであり、2つ目はそのゴールを達成する突破口(KFS)とそのための取り組み事項の設定になります。

手段が目的化する状態を回避するために、ゴールと手段を明確化し、設計する必要があります。そのためには、ゴールと取り組み事項の繋がりを明確にすることが重要となり、長期ビジョンは各年の積み重ねになりますので、3カ年のストーリーの有機的な繋がりも明確にする必要があります。

長期ビジョンの実現に向けて、企業は推進する上で取り組むべき事項は数多くありますし、全て消化しようとすると消化不良を起こす場合があります。長期ビジョンを価値判断基準として、最適な優先順位をビジネスモデル、ファイナンシャルモデル、コーポレートモデルの3つを経営視点を中心に設計する必要があります。突破口としてどの取り組みを選択と集中の対象に設定するかが重要です。突破口を設定するポイントは、中期経営計画は長期ビジョンの推進プロセスであり、マクロで見ると10年後のための一つのアクションという認識が中期経営計画の策定においては重要になります。

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