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ビジョン・中期経営計画策定キーポイント
社会課題解決事業を創造し企業のサステナビリティを実現する方法
社会課題解決事業を創造し企業のサステナビリティを実現する方法
社会のサステナビリティと企業のサステナビリティを同時に実現する、とは
2030年に向けた企業の戦略構築において「サステナビリティ」というキーワードが非常に重要になっています。
サステナビリティとは持続可能性を意味します。ここで認識しておかなければいけないことは、社会のサステナビリティと企業のサステナビリティを同時に実現することが重要であるということであります。
まず、企業における社会的価値(SX(Social Experience))とは何かを考えましょう。
企業が社会的課題に対する積極的な関与を高め、公器としての責任を体感できる環境とブランドを作ることであり、自社の事業を通して社会課題を解決し、それにより稼ぐ力(強み・競争優位性・ビジネスモデル)が中長期で持続化・強化することにつながるという関係性が成立している状態です。
これをステークホルダーと共有することにより企業のブランド価値は高まります。
近頃ではパーパスという言葉を頻繁に耳にするようになりました。パーパスとは企業としての存在意義を意味します。このパーパスに社会的価値を掲げる企業が増えているのです。自社らしさと社会的価値を融合させたところに存在意義があるということになります。
企業の社会的価値を向上させるプロセスは以下のとおりです。
①解決すべき社会課題を認識する。
②事業で課題解決へ挑戦する。
③社会課題解決事業の取組みを社内外へ情報発信する。
④企業の社会的価値をブランディングする。
⑤新たな社会課題解決へ取り組む。
このサイクルを回すことで企業の社会的価値は向上していきます。
タナベコンサルティング作成
社会課題を解決する事業を創造する
このように企業の社会的価値を向上させるプロセスは
①解決すべき社会課題を認識する。
②事業で課題解決へ挑戦する。
から始まります。
すなわち、企業が社会課題を解決する新たな事業を創造するということは大変大きな意義を持つということです。
この場合、まずSDGsのアウトサイド・インの視点で自社が取り組むべき社会課題を検討することをおすすめします。
具体的にはSDGsの17のゴール・169のターゲットについて自社が取り組むべき社会課題をピックアップすることから始めます。
ただし、169のターゲットの内容を確認すると非常にわかりにくい表現があったり企業が取り組むにはあまりに大きなテーマも含まれています。これを見るだけで思考停止に陥りそうな文言も含まれています。全員がSDGsの専門家というわけではない社内のメンバーとともにディスカッションをする際は、わかりやすくかみ砕いて伝える必要があります。
以下はその169のターゲットをわかりやすい言葉で表現しなおしたものであり、自社での取り組みをイメージしやすくなるでしょう。例えばこれくらいのわかりやすさの文言で社内のメンバーとディスカッションすることをおすすめします。
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できる・できない、やっている・やっていないというのはひとまず横に置いておいて、わが社が取り組むべき社会課題を広く大きな視点で網羅的に抽出してください。
抽出した事業案は同じカテゴリーのものはグルーピングし集約をかけます。
次にグルーピングした事業案をスクリーニングし優先順位を決めます。
この際のスクリーニング項目は
❶経営方針・経営目標との整合性
❷環境へのインパクト
❸地域/地域社会へのインパクト
❹経済へのインパクト
❺競合との差別化
といった切り口を活用すると良いでしょう。
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優先順位の高いものから順にテストマーケティングを行いながら事業計画を練っていきます。
事業を創造する大義名分である事業ビジョンとそれを実現するための事業戦略・経営戦略を構築します。
それでは、社会課題解決事業の事業戦略・経営戦略について以下で見ていきましょう。
社会課題解決事業の事業戦略・経営戦略の考え方
社会課題解決事業に取り組む企業経営の社会的価値を評価しステークホルダーと共有する一つの指標がESG(環境:Environment、社会:Social、ガバナンス:Governance)であり、投資家等のステークホルダーが非財務情報を重要視する風潮はますます強くなっています。
企業経営のサステナビリティを評価するという概念が普及し、気候変動などを念頭においた長期的なリスクマネジメントや、企業の新たな収益創出の機会を評価するベンチマークとして注目されています。この流れを受けて各社は様々なレポートでESGへの取組みを発信しています。
環境・社会・ガバナンスを意識したESG経営の目的は、企業の長期的なブランド価値を高めサステナビリティを実現することにあります。社会課題解決事業はまさしくESG経営にとって重要な役割を占めます。
社会課題解決事業の事業戦略を構成する要素をTechnology(固有技術、製品・サービス)、Market(市場、顧客)に分け、経営戦略を構成する要素をMoney(資金、投資)、Man(人材、組織)、Management(経営システム)に分けることができます。この1T4Mで社会課題解決事業の効果を整理すると以下の通りとなります。
タナベコンサルティング作成
各社が取り組むESG経営とは
社会課題を事業で解決する自社の取り組みを多くの企業はESGにまとめてレポートで情報発信し、ステークホルダーとコミュニケーションを図っています。各社のESG経営の取り組みを一例としてまとめました。各社ともESGレーティングの14テーマのうち自社に関連する項目を中心にテーマを構成しています。以下は各社のレポートを集約したものです。ぜひこれらの項目を参考に自社の社会課題解決事業をESG経営の取組みとして推進・発信してください。
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2030年に向けた戦略構築におけるキーワードは「サステナビリティ」
2030年に向けた戦略構築において「サステナビリティ」は大きなキーワードです。環境変化の不確実性の高まり、社会のサステナビリティの要請の高まり、この二つの大きな外部環境の変化の中で企業のサステナビリティを高めていくためには5 年、10 年という長期の時間軸で「企業のサステナビリティ」と「社会のサステナビリティ」を同期化させた経営戦略の立案とその実行が必要です。生産年齢人口が減少し超高齢化社会が到来する日本は社会課題先進国とも言えます。社会課題を無視した経営戦略・事業戦略は成り立ちません。
社会的価値のある企業がステークホルダーから選ばれる社会環境になることは間違いなく、社会的価値の向上は持続的成長を実現するための重要な経営方針となります。
自社における社会的価値とは何か?この問いに答えを出すべくチェックシートを用意しました。この機会に問い直していただき社会課題解決へ事業で取り組む意思を固めていただきたいと考えています。
①社会課題解決に取り組むことを自社のパーパス、ミッション、バリューとして明確に定めているか?
②2030年、2050年をメルクマールとした中長期ビジョンを掲げているか?
③社会的価値力を向上させるためのポイントが明確になっているか?
④社会的価値向上のストーリーを策定しビジュアルに訴求する情報発信ができているか?
⑤自社が取り組むべき社会課題をソーシャルネットワークを通じて設定しているか?
⑥社会課題解決をパートナーシップで事業として取り組んでいるか?
⑦世界共通の課題であるSDGsの17ゴール169ターゲットへ取り組むことを決めているか?
⑧その取組みをESGの視点でステークホルダーへ分かりやすく情報発信しているか?
⑨ESG経営にトップのリーダーシップのもとステークホルダーを巻き込んで取り組んでいるか?
⑩社会的価値向上を企業ブランディングに結び付けているか?