CASE
事例
D社 電気設備工事業
長期ビジョン・中期経営計画策定による事業拡大
D社は、1950年創業の「商業施設」「住宅・マンション」などあらゆる施設のニーズに合わせた電気設備工事を提供している電気工事会社です。半世紀以上にわたり、提案・設計・施工・メンテナンスまで一貫して行ってきました。
昨今の環境変化の中で、生き延びていくためには会社のブランドづくりと新たな事業の柱を構築していく必要があると強く感じ、次世代メンバーによる魅力ある会社づくりと事業拡大のために長期ビジョン・中期経営計画を策定しました。
1.長期ビジョン・中期経営計画
(1)次世代メンバーによる市場認識・自社の強みの把握
D社は、5カ年の事業計画と10年後のビジョンを作成しました。計画を策定したのは、30~40代前半の次世代メンバー7名。1・2年後の業績だけでなく、未来永劫成長し続けていくためには、10年後を見据えて展開が不可欠だと感じ、次世代メンバーを招集し将来を考えて作成しました。
住宅・マンション市場だけでなく、施設も小売店舗や医療関係、ホテルまでも含めた、ありとあらゆる「電気」が入る施設の傾向や建築数を調べ上げました。そして、現在の市場と業界課題を以下のようにまとめました。
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電気工事業の市場環境について、建設需要の拡大に連動し順調に推移。今後も改修需要があることから、一定の市場が見込めるものの、技能労働者不足など供給不足の売り手市場の局面を迎えており、今後大幅な拡大は見込めない状況であると、また電気工事の施工技術は基本的に確立されているものの、近年はBEMSやHEMS、再生可能エネルギーといった案件の多様化がみられ、新たなニーズに対しても対応する必要がでてきています。
自社の強みは、「中型」に特化し、施設・マンション案件を手掛け、ノウハウを構築していることにある。
中型は、大手電気工事会社との競合はほぼ無く、他社との競合の可能性は低くニッチトップであり、中規模案件×高回転率のモデルで受注を安定させ、物件ごとの収益管理を徹底し、利益率を確保してきた。
しかし、資格取得者、技術者が業績のキャップであり、受注がマンションのみに偏っていることがリスクであるとまとめました。
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ここにたどり着くのに過去の実績や顧客からの情報、ライバル会社の情報を自ら調べて、ディスカッションを何回も重ねて把握しました。
このように現状の自社ポジションや課題をメンバーが把握するとともに取り組まないといけない事項を整理しました。
(2)事業拡大に必要なもの
自社の事業拡大に必要なことをディスカッションして以下に決めました。
1.ターゲットの拡大
①マンション事業特化型からの脱却を目指し、新市場の開拓を狙う。
②今まであまり手を出してこなかった構造への取り組みに力を入れる。
2.組織体制の構築
①建築情報の早期入手のためのマーケティング部の設立
②工事部門人材の採用、管理者の育成計画作成
3.更なる「安全体制」の確立
①事故事例の紹介、安全作業の呼びかけや安全衛生活動報告など、安全に関する様々な情報を発信・共有
②協力業者との安全体制の徹底
4.共に働く仲間の増加(人材採用)
①毎年5百万円の採用費用の確保
②リファラル採用・アルムナイ採用の活用とルール決め
5.社員のレベルアップ
①教育体系の整備
新入社員...先輩社員によるマンツーマン指導
工事部員...特別教育、技能講習の参加(専門知識の習得)
全社員...各種研修・セミナー・資格取得など自己啓発
②経営者・幹部に対する育成
管理者研修、考課者訓練、経営戦略など経営スキルを磨く研修の実施
1~5の内容については、経営陣も交えて、実施スケジュールや担当責任者を決めて取り組みました。
2.魅力ある会社づくり
(1)働き方改革と資格取得制度
魅力ある会社をつくるには、まず現メンバーが会社の方針を理解し、自己成長できる組織になることです。
現在の会社の取り組みにさらに社員の声を反映した制度を決め、取り組みました。
育児休暇取得奨励はもちろん有給休暇取得奨励を、従業員におけるワークライフバランスの充実化を図るため、有給休暇取得の奨励を行い、80%を超える取得率を確立しています。
また、資格取得のための勉強会、取得支援をサポートする仕組みを構築し、手厚く勉強する機会を設け、全員での協力体制を構築しました。
(2)ES:社員満足度の向上
さらに、社員の満足度を上げる取り組みを構築しました。
1.業務遂行支援
社用車貸与、通勤時の高速道路利用可(規程有)、ノートパソコン支給などの業務遂行を不満なく行えるルールを決めました。
2.社員の健康促進
①健康診断の実施(年1回)、人間ドックは35歳以上全員
②インフルエンザワクチンの接種
③メンタルヘルス研修、面談の実施
3.リラックスルームの設置
①ウォーターサーバー設置、冷蔵庫・電子レンジ完備
②昼食はもちろん休憩時の従業員同士の談笑場としても利用
この会社は社員のことを大事にしてくれる、考えてくれていると感じられると思われることを全て採用・展開していこうとしています。
3.未来成長のための取り組み
(1)重点指標決め
長期的な競争力を生み出すためには、労働集約産業である以上、人材力が勝敗左右します。
人材力を生み出す根本は、人間としての成長と企業哲学の共有です。
D社は、「人で勝つ経営」を成り立たせるために、長期人材戦略として経営×スキルの両軸で人材が必要になるため、以下のように各社で重点を整理しました。
①採用力:資格保有数×経営人材数
②受注力:情報収集数×協力パートナー数
③機動力:スキル人材×1人あたり管理物件数
(2)戦略推進
中期経営計画を達成するために、重点を大きく2つに絞り、毎月の進捗を検証しています。
1.新事業(ターゲット構造)の拡大
①建設事業の領域拡大
②再開発・建て替え施設の取り組み
2.投資拡大
①DXの具現化に向けたシステム投資
②先端技術導入に向けた投資
③人的資本への投資
D社は、10年後に向けて、次世代メンバーが策定した「長期ビジョン・中期経営計画」を全員で成し遂げようと日々邁進しています。
会社プロフィール
D社 電気設備工事業
[ 所在地 ]
愛知県
業種 | 電気設備工事業 |
---|---|
売上高 | 30億(グループ40億) |
従業員数 | 50名 |
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コンサルタント紹介
- タナベコンサルティング
取締役
ストラテジー&ドメインコンサルティング事業部山本 剛史
- タナベコンサルティング
取締役
ストラテジー&ドメインコンサルティング事業部村上 幸一
- タナベコンサルティング
上席執行役員
九州本部高島 健二
- タナベコンサルティング
執行役員
ストラテジー&ドメインコンサルティング事業部土井 大輔