STUDY

パーパス経営で企業ブランディングを実現する方法

村上 幸一

本プログラムの執筆者

タナベコンサルティング
取締役
ストラテジー&ドメインコンサルティング事業部
ストラテジー&ドメイン(東京)担当 兼 グローバル戦略推進担当
グローウィン・パートナーズ㈱ 監査役
ビジネスモデルイノベーション研究会リーダー

村上 幸一

ベンチャーキャピタルにおいて投資先企業の戦略立案、マーケティング、フィージビリティ・スタディなど多角的な業務を経験後、当社に入社。豊富な経験をもとに、マーケティングを軸とした経営戦略の立案、ビジネスモデルの再設計、組織風土改革など、攻守のバランスを重視したコンサルティングを数多く手掛けている。高収益を誇る優秀企業の事例をもとにクライアントを指導し、絶大な信頼を得ている。中小企業診断士。

企業の存在価値そのものが至上のブランディング

パーパス・コンサルティングの急増

パーパス経営が注目される背景

最近、経営において、パーパスやMVV(ミッション、ビジョン、バリュー)というキーワードが広く普及してきています。実際、多くの経営者の方々から「うちには経営理念や社是、社訓などがありますが、それとどう違うんでしょうか? 内容を見ていると同じように感じます。それが今なぜパーパスやMVVという言葉で注目されているのでしょうか?」との質問を多く受けます。また同様に、「パーパスやMVVという概念・考え方は素晴らしい。うちにも経営理念はあるが、それをブラッシュアップしたいので相談にのってもらいたい」というご依頼も非常に増えました。これに関しては、企業規模の大小を問わずといった状況です。日本企業は昔から企業理念や経営理念、社是、社訓などを大切にし、経営の中に活かしてきました。それにもかかわらず、類似する概念がカタカナ(英語)として、突然普及し始めたのですからその困惑はよく分かります。

パーパス経営の浸透の理由の一つとして、現在各企業で明示されている理念や社訓の内容が多種多様だからということがあげられます。つまり、その内容が創業の精神や経営指針というものもあれば、組織としての規律、社員の心得というものもあります。四文字熟語が大きく掲示されている場合もあります。その意味において、企業理念というものを、パーパス=存在意義・存在目的、ミッション=使命、ビジョン=目指すべき未来・方向性、バリュー=組織としての共通の価値観、という形で再定義するととてもおさまりが良く、わかりやくなります。もう一つの理由が、SDGsやESG、CSRなど企業の社会的責任の重要度が増しているという点です。株主、投資家、顧客、消費者、従業員、地域社会など企業を取り巻く全てのステークホルダーが、企業の社会的使命と責任を注視しています。

今回のメインテーマでもあるブランディングにも直接つながっていきます。

パーパス経営が注目される背景 タナベコンサルティング作成

パーパスをインナーブランディングからはじめよう

パーパスの再定義と浸透にむけたプロジェクトの始動

多種多様な表現や文章が混在している理念や社是をベースに、現在経営の世界で共通言語化しつつあるパーパスにアップデートしていくという崇高かつ根源的なタスクは非常な重責です。今はそれを現経営メンバーではなく、社員たちで実施していくということも多くなっています。固い文章を現代風の表現にしわかりやすくする、今後語り継がれていくパーパスは未来の経営者・経営幹部候補メンバーが作っていく、全社員からキーワードや思いをアンケートや分科会などを通じて募る、そして、そのプロセスを社内報などを通じて見える化する。つまり、組織全体でパーパス、MVVをこのようにアップデートしていくことが根底からのインナーブランディングにつながっていきます。
もちろん、企業規模・従業員数によって組織の動かし方や巻き込み方はそれぞれ工夫が必要です。規模が大きくなればなるほど大変になりますが、現在は様々なリモートコミュニケーションのツールがあるため、それを活用することも有効です。大変イコール大掛かりな仕組みや運用となるため、結果として全社全体のムーブメントになります。
つまり、もしかすると今まで経営理念や社訓などを意識していなかったかもしれない社員も、パーパス・MVVの再定義という全社活動を通じて、あらためてそれを意識することになります。ブランディングの第一ボタンである認知がパーパスのリリースされる前からできている状態が達成できます。
その後は、パーパスの浸透を次のような形で進めていきます。経営理念や社是からパーパスにアップデートした経緯や背景、新しいパーパスへの思いなどを冊子やホームページに特設サイトなどを通じて大々的にPRします。そして、経営トップ自らがパーパスを語る場を設けます。それは経営方針発表会や全社集会という場がベストですが、それ以外の推奨モデルとしてパーパス研修会があります。トップメッセージからスタートする研修カリキュラムを組み、パーパスのインプットだけでなく、その浸透や実践施策などについてのグループワークをします。また、ベテラン社員や先輩社員の方から職務の中でパーパスの実践にあたる実体験を語っていただく場を設定するとよりリアリティが高まり、有益な研修会になります。

インナーからアウターブランディングへ

組織のど真ん中にいる社員の共感と行動なくしてブランディングは成立しない

モデル事例をパーパスエピソードとして磨き上げてブランディングへ

素晴らしいパーパスができたらすぐに社外発信し、大々的にPRするのも重要ですが、前段で記載した通り、どんなに立派な文章や表現が記載されていても、それを実践する社員が理解していなければ文字通りの絵に描いた餅になってしまいます。社外に広く知れ渡っているにもかかわらず、自社の社員が社外で異なる言動をとっていると逆効果になってしまいます。パーパスが企業価値としてブランディングされている会社は例外なく、社員の言動や社風などがそれを担っています。
つまり、パーパスのブランディングはアウターよりもインナーのブランディングの方が大切なのです。理念経営やパーパス、クレドなどで有名な企業、つまりブランディングされている企業といえば、日系ではパナソニックやソニー、京セラ、外資系ではジョンソンエンドジョンソンやリッツカールトンなどが挙げられます。国や業界が違えども共通しているのは、歴代の経営者や社員の意思決定、行動において語り継がれる素晴らしいエピソードです。
つまり、理念やパーパスを実践している組織メンバーがその行動によって、ブランディングを成し遂げているのです。比喩的な表現になりますが、インナーからアウターに自然とにじみ出るようなブランディング活動こそ普遍的な価値となります。事例で挙げた企業をモデルとして、企業が学ぶべきアウターブランディング施策の一つに、エピソードマネジメントがあります。顧客に対して誠実に仕事をしている企業であれば、大なり小なり、多かれ少なかれ、理念やパーパスを実践してきた素晴らしいエピソードがあるはずです。一般的に日本人は謙虚で謙遜する性質なので、社内に埋もれているであろうそれらのエピソードを発掘することからはじめる必要があるかもしれません。
発掘したエピソードを磨き上げ、語り継ぎ、様々なコミュニケーションツールやメディアなどを通じて、恒常的にそれらを発信し続けることがインナー&アウター両方のブランディングになっていきます。

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「日本には企業を救う仕事が必要だ」という
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