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中期経営計画は3年~5年で描かれる企業の未来像です。社会の環境変化が早く、不透明になっても企業は目指すべき灯りを示す必要があります。その灯りとは意思だから。会社のトップの意思を目指し、共感し、組織、社員は歩みをともにします。中期経営計画を社員と一体となって目指すためには、わかりやすくいつまでに、どうなりたいのかを伝える必要があります。それがスローガンなのです。
企業におけるスローガンの役割
スローガンとは企業や組織の目的、主張、思いを簡潔に言い表した覚えやすい標語のことです。
「お、ねだん以上。」ニトリ♪や「Inspire the Next」日立♪はCMで使用され、その短いフレーズの中に、伝えたいことを集約させ、耳に残る音程をつける。広く世間に認知されています。これもスローガンです。スローガンとは伝えたい相手が共感することが大事です。
ニトリの「お、ねだん以上」は文字通り、ニトリの商品は価格以上の価値をお客様に提供していることを意味し、
日立の「Inspire the Next」は次なる時代に息吹を与えていくというものづくり企業「日立」の次の時代を先取りするという先進性が表れているといえます。
つまり、スローガンがあったほうが従業員に、顧客に、取引先に響くのです。スローガンとは従業員に、顧客に、取引先に目指すべき方向性、自社の特徴、商品に込めた思いなど、「誰に、何を」わかりやすく簡潔に、印象的に知ってもらうという認知、共感機能を持っています。
中期経営計画のスローガンを策定する
スローガンはどのように考えて作ればよいか
中期経営計画はトップが一人で作るものでもなければ、コピーライターがかっこいい言葉を並べるものでもありません。
中期経営計画はその方針を全従業員の理解、共感を得て、実行して、成果につなげるものです。
お題目でなく、従業員に響かせること、腹落ちしてもらうことが重要です。その点、ピンとこないフレーズや難しい英語表現、長すぎる文章なども響かない可能性があります。
次に、誰に向けたスローガンなのかを考えます。相手に響くメッセージとは伝えたい相手を明確にすることです。結果として世間も含めた一般の方に伝えたいメッセージであっても、ペルソナを設定して考えます。そうすることにより、誰に、何を伝えるためのスローガンなのかが見えてきます。
経営理念、パーパス、MVVと関連付ける。中期経営計画は3~5年の時間軸ですが、企業には企業の存在価値や使命感を示した経営理念などがあります。この企業の根幹の延長線上であることが前提となります。
誰が策定するのか。役員会や経営企画室が考える企業も多いですが、従業員が共感し、実行して、成果につなげるという点から考えれば従業員を巻き込みながら策定する企業もあります。
中期経営計画策定プロジェクトに現場リーダークラスにも参加してもらい計画のアクションプランの案を出し、スローガンを決める。わかりやすく、短いフレーズに思いを込める。自分たちが共感する言葉で練り上げる。そのディスカッションの時間が現場の一体感を高め、中期経営計画への思いを強くしていく時間でもあります。
とある企業では、オブザーバーとしてディスカッションを見ていた社長はメンバーの豊かな発想力に驚き、会社の将来を頼もしく感じたそうです。
中期経営計画のスローガン事例
いつまでに、どうなりたいのか、そして従業員の心を熱くする!
ブルドックグループは、2032年のあるべき姿を定めた長期ビジョン、2025年度を最終年度とする中期経営計画を策定しています。
長期ビジョンは「 BGI(Bull-Dog Global Innovation 2032」
中期経営計画は「B-Challenge2025~挑戦のはじまり~」
長期ビジョンは、Globalのキーワードがあるように「『Sauce』を極める世界ブランドに成長する」。2032年には名実ともに国内・海外でトップブランドになることを目指すとしています。そのためのはじまりとして「国内ソース市場におけるリーディングカンパニーの確固たる地位を確立する」。つまり、2025年までに国内での地位確立、そして2032年には世界ブランドにという方針、ターゲットが明確に表現されており、その未来に向けた企業の成長が誰の目にもイメージしやすく策定されています。この連続性も大切です。
このように、2032年ビジョンは世界へ、2025年中期経営計画はその大きなビジョンに向けた、挑戦のはじまりなんだという位置づけ、意思が読み取れます。この壮大なビジョン、会社の意思を示され心を熱くする従業員も多くいます。何より策定したメンバー一人一人が言葉を選び、悩みに悩み、練り上げた素晴らしい表現であると感じます。
時の積み重ねが全従業員が共感する中期経営計画を完成させる
従業員を巻き込んで中期経営計画のスローガンの表現を練りあげることは大事なプロセスですが、完成すれば、全従業員に浸透していくものではありません。従業員に浸透させていくためにはその背景、ストーリーを伝えていきます。完成後の周知ではなく、プロセスを社内で発信している会社もあります。議事録の文字だけでなく、写真やディスカッションプロセスでのつまずき、悩み、苦悩、目からうろこが落ちるようなフレーズができた時の感動など。そのプロセスに共感する従業員もいます。中期経営計画、スローガンをポスターで掲示する会社もあります。多くの目に止まることは浸透の一歩ですが、参加メンバーがプロジェクトに参加していない部署で過程を話す会社もあります。昼食を活用し、食事をしながらざっくばらんに思いを話し、聞いているメンバーもスローガンの背景を質問します。
メンバーが中期経営計画、スローガンを策定する「時(時間)」、そして、完成後にメンバーが従業員に伝える「時(時間)」。この時の積み重ねで、全従業員が共感する中期経営計画を完成するのです。
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