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Ⅰ.製造業の中期経営計画のポイントは
"Business model Transformation"
~未来に向けて事業の柱をどのように変化させていくか~
製造業が中期経営計画において考えるべき方向性は、"Business model Transformation"です。 "Business model Transformation"とは、つまり「未来に向けて事業の柱をどのように変化させていくか」ということです。
それぞれ皆さまの企業にも主力事業があると思いますが、過去を振り返っていただき、その主力事業=事業の柱は、いつモデルチェンジをされましたでしょうか。先行き不透明なVUCA時代において、主力事業の提供価値をモデルチェンジしていかなければ、外部環境の変化についていけなくなるといったことが起きかねません。
主力事業が5年後も10年後も主力事業であり続けられるかどうか、今の提供価値を5年後も10年後も提供し続けられるのかどうか、単純に考えるとなかなか難しいのではないかと思います。未来に向けて主力事業の提供価値を変化させず、今のままで5年後も10年後も15年後も安泰だという事業は、恐らく一つもないでしょう。
※出所:タナベコンサルティング作成
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Ⅱ.2030年までの政治社会・経済マーケット・
産業テクノロジーの変化
外部環境の変化について、政治社会・経済マーケット・産業テクノロジーの3つの切り口で下の表にまとめています。
※出所:タナベコンサルティング主催2021年度経営戦略セミナーテキストより作成
政治社会においては、人口減はよく言われていることだと思いますが、2030年には日本人の3人に1人が65歳以上の高齢者になると言われています。また、別の視点では、2030年には国内の温室効果ガスの排出を2013年度比で46%削減を目指そうという環境に配慮した取り組みが今後加速していくでしょう。
経済マーケットにおいては、2030年には少子化の影響により、人手不足数が約644万人に拡大するという大きな人手不足が見込まれます。また、2030年にはAIの進展で製造業の就業者数が約160万人減少、逆にサービス業の就業者数は約158万人増加すると言われています。AIの進展が製造業・サービス業それぞれにとって、プラス・マイナスの影響を及ぼしていくことが現時点でも見てとれる変化です。
産業テクノロジーにおいては、2030年には第6世代移動通信システムが実用化され、AI・ロボット・仮想空間を活かした企業活動が重要になるということや、2030年には海外からの外国人旅行客が年間6千万人となることが想定されています。
このように一見マイナスなトピックが多いなかで、いかに自社のビジネスモデルを変化させていくのか。チャレンジングな目標を掲げ、事業戦略も経営戦略も一変するようなイノベーションへ挑戦する必要があるのではないでしょうか。
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Ⅲ.製造業の中長期経営計画で重要になる3つの戦略ワード
「ミッション・ポートフォリオ・ブランド」
製造業が中長期視点で取り入れるべき戦略について、"Business model Transformation"における3つの戦略ワードをご紹介します。
戦略ワード1つ目:ミッション
※出所:タナベコンサルティング作成
パーパスやMVVと呼ばれるキーワードが良く聞かれると思いますが、ミッション・ビジョン・バリューの上位概念にある「ミッション=使命」において、自社のミッションを言語化することが非常に重要です。事業への情熱、これを言語化することに挑戦していただきたいと思います。
事業への情熱を言語化したミッションこそが事業領域を決め、自社の未来の事業領域を決めることに直結していきます。是非そのような視点で5年後・10年後を見据えたミッションの再定義をお願いしたいと思います。
戦略ワード2つ目:ポートフォリオ=事業の構成
※出所:タナベコンサルティング作成
上の図のように、ミッションを中心として事業が3つ(事業A・事業B・事業C)あるとします。それぞれの事業をどう成長させるかということも勿論大切ですが、ミッションを実現するために事業数自体をどれだけ増やすのかということも大切で、事業を増やそうと意思決定することが重要です。
また、事業を増やすためには事業を増やすことのできる組織をつくらなくてはなりませんが、人という限られた経営資源のなかでは、顧客価値・提供価値・提供方法・収益モデルという切り口で事業をデザインしていく必要があります。事業数を増やすことで、やはりビジネスモデル自体は大きく変化します。
そして、企業の持続的な成長に繋がっていくということにおいても、非常に大切な考え方になってきます。
戦略ワード3つ目:ブランド
※出所:タナベコンサルティング作成
全てのビジネスモデルをブランド化することが重要です。ブランド化とは、事業自体の付加価値(事業の粗利)を高めることを言います。
ブランド化の方法としては「企業のサステナビリティと社会のサステナビリティを同期化させる」ことがポイントです。社会のサステナビリティとは、環境汚染を防止しなければならない、人種差別をなくさなくてはならないといった、将来的な社会の姿を見据えた社会の要請のことです。
そのような社会課題を企業が事業戦略・経営戦略で解決し、その事業自体の稼ぐ力を中長期で持続化・強化する、そして新たに出てきた社会課題を事業化する、といったように事業⇔社会、企業⇔社会の関係性をしっかりと回していくことが大切です。
その取り組みを社外へ発信することで、わが社の事業は社会性が高い、そして社会課題を解決する企業であるとブランド化され、付加価値を高めていくことができます。
今回ご紹介した"Business model Transformation"における3つの戦略ワードは、中長期視点で方向性を考える際に取り入れていただきたい有効的な考え方です。5年後・10年後も選ばれる企業であり続けるために、未来に向けて事業の柱をどのように変化させていくのか、この機会に自社の事業を見直し、変化に挑戦していただきたいと思います。
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