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タナベコンサルティングが2022年10月に実施した長期ビジョン・中期経営計画に関する企業アンケート調査によると、中期経営計画を策定している企業は74%にも上ります。アフターコロナの兆しが見えつつある状況下でも企業の羅針盤として中期経営計画策定は役立ちます。本コラムでは、中計策定のステップ別で活用できる有益なテンプレート/メソッドをご紹介していきます。
中期経営計画策定の7Step
中期経営計画は以下の通り、策定するケースが一般的です。(図1)
次章以降は7Stepに分けてメソッド&テンプレートをご紹介していきます。
図1
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長期ビジョン・中期経営計画に関する企業アンケート調査レポート 2022年
Step1. 現状分析
現状分析は、中期経営計画策定においては最も重要なstepの一つです。
それはなぜか?
現状分析は7stepの最初のstepであり、シャツでいえば第一ボタンに当たるのがこのstepです。孫子が残した格言に「彼を知り己を知れば百戦危うからず」というものがあります。自分を知り、敵を知れば、百戦したとて危険ではないということです。ビジネスに置き換えると、自社(内部環境)を知り、外部環境(マクロ、ミクロ、ライバル)を的確に把握することが持続的成長に繋がる最低条件ということです。そこで以下では現状分析における代表的なテンプレートを4種類紹介します。
◆現状分析におけるテンプレート
①PEST分析:マクロ環境を分析するテンプレート(政治・経済・社会・技術)
【関連コラム】バックキャスティングで描く中期経営計画のストーリー
図2②ライバル分析:ライバルを定量・定性で分析するテンプレート
③SWOT分析:強み(Strength)・弱み(Weakness)と機会(Opportunity)・脅威(Threat)で分析するテンプレート
図4
④バリューチェーン分析:自社が顧客へ提供する価値を機能別に分析するテンプレート
図5
上述したテンプレート以外でも、様々な分析手法があります。
外部環境系:商流分析・市場規模/成長性分析・ファイブフォース分析・ライバル分析
内部環境系:成長過程と成長要因分析・ABC分析(パレート図)・VRIO分析・4P分析・ストアカバレッジ分析
Step2.中期ビジョン
中期ビジョンにおいては、決まりきったテンプレートはありません。自社の風土・社風から意思決定をしなければなりません。とはいえ、類型は存在します。図6は上場企業を中心とした事例をタナベコンサルティング独自で分析し、ビジョンの類型をまとめたものです。社内外から評価の高い中期ビジョンは筆者の経験則上「自社らしさ」「ワクワク感」「新しさ」を一言で表現されているものが多いと言えます。この類型を参考に自社の中期ビジョンを振り返ってみてください。
図6
Step3.全社戦略
中期経営計画を本で例えるならば、中期ビジョンは「タイトル」、全社戦略は「要約文」となります。
全社戦略において、留意すべきポイントは3つです。
①中期ビジョンとの連動性はあるか
②テーマ数は多すぎずかといって少なすぎない粒度であること(テーマ数は3~5が望ましい)
③事業と経営のテーマを網羅的にカバーし、バランスしているか(例:5つのうち、3つが事業、2つが経営)
全社戦略テンプレートサンプル(図7:IT系企業のサンプル)
Step4.数値骨子設計
数値骨子設計では、Step5以降をスムーズに進めるための数値計画の大枠の合意形成を図ります。
いわば「仮縫い」を行うということです。(売上高・粗利益率・営業利益率の大枠を決める)
本ステップで意思決定すべき内容は以下の4点です。
①最終年度の売上高・利益目標の設定
②(複数事業の場合)事業別成長ストーリーの設計
※事業別成長ストーリーとは、例えば、A事業は高収益かつ成熟市場のためキャッシュの創出、B事業は粗利率でなく粗利額を追求していく等
③上記①、②および全体戦略を加味した事業ポートフォリオ設計
④投資額の仮設定(M&A・設備・新規事業・人的投資 etc....)
Step5.個別戦略(事業)
本ステップでは、個別戦略のうち、事業を中心とした内容を検討します。
具体的な策定項目を大別すると、以下2つに分かれます。
①事業戦略(=差別化戦略)
②機能戦略(ex.企画・研究開発・製造・仕入/調達・販売)
①事業戦略は全社戦略に基づき、各事業において「どの領域で、どう勝っていくのか」を明確にしていきます。
②機能戦略は業種業態・企業別で異なり、上記①を実現するための自社最適の機能戦略を描くことが求められます。
今回は①事業戦略のテンプレートとして、戦略検討フォーマットを図8で示しています。
図8
Step6.個別戦略(経営)
本ステップでは、個別戦略のうち、経営を中心とした内容を検討します。
具体的な策定項目を大別すると、以下4つに分かれます。着眼ポイントとともに解説していきます。
①組織成長モデル設計
②人事人財戦略設計
③DX戦略
④非財務資本(ESG・SDGs・ブランディング 等)
本コラムでは①組織成長モデル設計にフォーカスを当て、検討テンプレート(図9)を紹介するとともに
以下にて設計ポイントを記載します。
図9
◆組織成長モデル設計のポイント
a.上記Step5までの内容を組織デザインとして網羅的に反映できているか
b.中計を策定した当事者メンバーが推進者として、組織上の要所に配置されているか
c.中計初年度の組織図が作られているか
d.新たな組織体/部署が形成される場合、その責任者にはエース級人財を投入できているか
Step7.数値・行動計画意思決定
Step7ではStep6までに検討を重ねてきた集大成として数値と行動計画(=アクションプラン)に落とし込みます。
数値計画については、以下の粒度での設計が理想です。
①人員計画(増減人員計画+想定人件費 ※一人当たり生産性に注視した設計を行う)
②投資計画(M&A、新規事業、設備関連、IT関連、その他)
③PL(全社・事業別)④BS、⑤CF
策定した中計が「絵にかいた餅」となるか否かを分けるポイントがこの行動計画(=アクションプラン)です。
中計達成度を高める「明確にすべきポイント」として以下の通り記載します。
①初年度でアクションとして何をやるかを明確にする
②誰が担当なのかを明確にする
③中計策定~初年度スタートまでに何をやるのかを明確にする
④レビューおよびマネジメントするためのアクションテーマ別KPIを明確にする
アクションプラン設計テンプレート(図10)
テンプレート・メソッドをフル活用し、唯一無二の中計をデザイン
テンプレートという箱に収めて中期経営計画を策定することは比較的容易といえるでしょう。
しかし、中期経営計画もビジネスモデル同様にこの世に二つとして同じ計画は存在しません。
テンプレート・メソッドを知り、自社に取り入れるべく推敲して初めてそれらを活用できるということです。
中期経営計画策定の7Step別に、テンプレート・メソッドをご紹介してきました。
これらが貴社の中計策定の一助となれば幸いです。
中期経営計画策定完全ガイド~企業事例から見直しのポイントまで一挙ご紹介~
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