COLUMN

2023.07.11

中期経営計画5つのメリット|策定ステップからポイントまで解説

中期経営計画や、長期の計画を立てることは、事業を成功させるために最も重要です。
理由はビジョンやゴールがあっても、その道のりや過程が示されていなければ、社員やステークホルダーは本当に計画が達成できるかどうかわからないからです。

3〜5年後の未来を見据えることも難しい昨今ではありますが、長期的なビジョンを達成するための計画と実行は欠かせません。また、長期計画の方向性を途中で見直したりするのも中期経営計画は必要です。

ここでは、中期経営計画のメリットと作成手順について解説します。企業の持続的な発展のために、ポイントを押さえておきましょう。

中期経営計画はビジョンの達成に不可欠

中期経営計画とは、企業が3〜5年先までに行うべき経営の計画です。
長期経営計画(10年先)を最終的なビジョンとすれば、中期経営計画は、その達成のための中間地点までの計画を指します。
変化が激しく不透明な時代と言われますが、数年後までの計画を考えるだけでも、解決の糸口を見つけられるはずです。

また、経営資源をどのように有効に配分するか、具体的な施策をしっかり盛り込む必要があります。企業のビジョンを確固たるものにするためのステップと考えて、中期経営計画の策定に積極的に取り組むことが重要です。

中期経営計画はビジョンの達成に不可欠

中期経営計画を策定するメリット5選

中期経営計画を策定することで、さまざまなメリットが得られます。
ビジョンへの方向性を確認できるだけでなく、毎年の短期経営計画を立てるときには指針にもなるでしょう。
ここからは中期経営計画のメリットを5つのポイントから解説します。

①経営の現状を把握できる

中期経営計画を立てることには、目標に対する経営の現状を、早い段階で明確にできるというメリットがあります。

中期経営計画は、長期経営計画に対する中間目標です。そのため、計画を策定する際には自社の現状を把握する必要があります。
中期経営計画で掲げた目標に対して中間地点でどの目標値にする必要があるか、具体的な数値を用いて策定します。
また中期経営計画を実行する過程で生まれる目標とのギャップを明確にする際にも、その都度自社の現状を把握しなければなりません。

②経営の方向性を明確にできる

中期経営計画を立てることで、経営の方向性を明確にできるというメリットが得られます。

長期より中期の方がより具体的な目標を立てやすいため、資金調達・人材採用・商品開発・生産・販売などの行動指針を明確にできます。
そのため実現可否の判断がしやすく、進行度合いに応じて長期計画を修正でき、経営の方向性が、より確かなものとなるでしょう。

長期経営計画の最終目標を達成するためには、中間地点までにどのレベルを達成すべきか、中期的な計画を立案することが重要です。
中期経営計画で実現すべき売上高・利益率・社員数などの具体的な目標値を定めましょう。

③経営の信頼感が高まる

中期経営計画を立てておくことで、株主や顧客などのステークホルダーに対し、決算だけでなく課題やビジョンを具体的に示すことが可能です。

中期の経営の方向性を明確にすることで、消費者による購買、投資家による出資に迷いや疑念が生まれにくくなるでしょう。
計画に社会課題や環境問題の解決を盛り込むことは、SDGsの目的にも叶っており、多くの消費者の共感を得やすい方向性です。
これらの結果として、企業と経営、サービスへの信頼感が高まります。

④社員と意識が共有される

企業が計画を社員と共有することで、社員との間で具体的な共通認識を持つことが可能です。

全社的なコンセンサスを得た計画は、実施段階になって問題が浮上することのないスムーズな実施が期待できます。 中期経営計画を策定するためのプロジェクトを立ち上げ、経営者から管理職、一般社員までのすべてに計画を示し、参加を求めます。 経営や事業の方向性に対する意識やベクトルが一致していれば、余計な力を必要とせずに施策を実行できるでしょう。

⑤社員のモチベーションが向上する

社員一人ひとりが目的意識を持てばモチベーションが向上し、自主的に動くことで働きがいを感じたり、主体性が育まれるでしょう。

個々の社員が意識を少し変えるだけでも、業績には影響が表れます。
各セクションとも末端の社員に至るまで、中期経営計画がはっきりと伝わっていれば、各自が計画をブレイクダウンし、自身の目標を設定可能です。
社員が経営の方向性を理解できれば、自身の仕事の目的やスキルアップの目標が立てられます。

中期経営計画策定の5ステップ

中期経営計画を策定するには、ポイントを押さえた正確な計画立案が必要です。
計画を確実に実行し、課題を迅速にフィードバックするサイクルができれば、中期経営計画の達成に近づきます。
ここからは経営計画策定のステップを順を追って見ていきましょう。

①経営理念の確認

経営者の理想を言語化した「経営理念」を確認します。
理念はMVVの3要素で構成されます。

● M - ミッション:企業の使命 → 何をなすべきか
● V - ビジョン:企業の方向性・将来像 → どうなりたいか
● V - バリュー:企業の価値 → 何を大切にするか・どう表現するか

さらに社会的な視点から、MVVを通して企業の存在意義を示す「パーパス」を策定することが、近年のトレンドです。
MVVやパーパスを社員に浸透させ、ステークホルダーに約束します。

②経営の現状分析

現在の自社の状況は経営理念に沿った内容であるか、現状を分析します。
経営資源のボリュームや配分、商品・サービスの価値、顧客層をデータに基づいて把握し、自社のポテンシャルを数値的に確認しましょう。

これらの把握した現状と、長期経営計画の目標を達成するために必要なものとを比較して検討します。
差異をデータで把握することで、中期経営計画の目標としてどのレベルを達成するかを明確にできます。

③経営環境の把握

PEST、SWOTなどの手法を用いて、経営が置かれている外部環境と、対する自社の内部環境(強み・弱み)を分析します。

外部環境としては景気や法制度・業界・他社の動向、市場の見通し・関連技術のトレンドなど。
内部環境としては、ヒト・モノ・カネ・情報すなわち経営資源のそれぞれの状態を把握します。

自社のビジョンに対する差異とともに、他社との違い、業界における立ち位置を明確にします。

④行動計画立案

中期経営計画において、経営戦略を決めるだけでは行動が伴いません。
具体的にいつまで、何を実行してどう達成するか(5W1H)の行動計画を立案し、数値目標を設定します。
数値にできない場合は、定性的な目標、例えば「社員の自発的なアイデアによる店舗運営」のようなものでも構いません。

他社との差別化や市場への最適化の方法としては、強みを伸ばす施策とともに、弱みを補う施策も実施して両輪での経営強化を図ることも重要です。

⑤実施とモニタリング

施策の実施に際しては、各事業、各部門の戦略に落とし込む必要があります。
各部門ごとの目標と施策を明確にして計画を実行しましょう。

企業の目標を社員と共有し、個人の目標までブレイクダウンすることによって、社員のモチベーションを高め自発的な経営参加を促します。

数値目標に対する実績値の差異をモニタリングし、月次のレベルで業績を評価します。
目標に達しないプロジェクトの改善策を検討し実施するなど、PDCAを回すことが重要です。

中期経営計画策定の5ステップ

中期経営計画作成のポイント

中期経営計画作成のポイントとしては、以下を盛り込むことが重要です。

1. 数値目標を基本とし、全社で共有する
2. 計画と進捗がズレた場合の対応方法を共有する
3. 特定の数値的成果が得られるタイミングでモニタリングする
4. PDCAで改善を図る

計画だけでなく、モニタリングで評価する方法や、改善につなげるワークフローを予め決めておき全社で共有すれば、PDCAの実務においても各部門が支障なく進められるでしょう。

まとめ

中期経営計画に限らず、経営をチェックするステップが多い方が、目標に近づけやすくなるとともに、緊張感も維持できます。

中期経営計画は、長期経営計画達成への足掛かりになるとともに、短期経営計画の指針となるでしょう。
経営理念と現状を確認し、将来目標を具体化・数値化したのち、中期の目標を設定します。
目標を社員と共有し、社員の目標まで落とし込みます。
施策の実行に際しては、定期的にモニタリングを実施し、計画のPDCAを回すことが重要です。

著者

タナベコンサルティング
取締役
ストラテジー&ドメインコンサルティング事業部

山本 剛史

大手ゼネコンにて設計・監督業務に従事後、当社に入社。事業戦略を事業ドメインから捉え、企業の固有技術から顧客を再設定してビジネスモデル革新を行うことを得意とするタナベ屈指のコンサルタント。成果にこだわるコンサルティング展開で、特に現場分散型の住宅・建築・物流事業、多店舗展開型の外食・小売事業で、数多くの生産性改善実績を持つ。

山本 剛史

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