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「中期経営計画を策定したが、社内に浸透しない」
「今までの流れの中で中期経営計画を策定しているが、現状の延長線上になっており、大きな変化は望めない」
「中期経営計画通りに運用が出来ていない」
企業経営者・経営企画担当者からは上記のような悩みを多くいただきます。
どんなに立派な中期経営計画を策定したとしてもそれが実行・推進されていなければ、絵にかいた餅になり中期経営計画策定に割いたリソースは無駄になってしまいます。中期経営計画は経営者の想いを反映させる半面、前述のリスクを秘めていることを認識しなければいけません。
本コラムでは、中期経営計画を策定する目的やその策定のポイント、また中期経営計画を浸透させるポイントについて実例を交えて紹介していきます。
中期経営計画の目的と中期経営計画発信に向けた3つの視点
中期経営計画は計画を実現するためにある
ステークホルダーの理解を得られる発信内容とする
中期経営計画の目的
中期経営計画は、中期(3〜5年後)の企業のあるべき姿を具体的な数値目標で設定したものであり、中期経営計画実現に向けて数値目標に対して具体的な施策を決めていきます。施策の実行にはステークホルダーの協力が不可欠であり、企業側からはステーホルダーに対する分かりやすい説明が求められます。
ステークホルダーの協力を経て施策が実行推進された結果、中期の目標達成に近づき、企業は次の中期やより長期的な未来を見据えた成長を実現することができます。企業を計画的に成長させていくためには中期経営計画の存在が欠かせないといえるでしょう。
中期経営計画に協力を得るための3つの視点
前述の通り、中期経営計画にはステークホルダーの協力が欠かせません。中期経営計画は作って満足するものでも、経営者だけが理解していればいいだけのものではなく、読み手(ここではステークホルダー)に向け分かりやすく作成し、メッセージを込め協力を促すことが必要となります。
筆者のこれまでのコンサルティング経験則と中期経営計画を発信している企業(主に上場企業)を調査した結果として、3つの視点
①中期経営計画にメッセージが込められている
②中期経営計画の読み手(ターゲット)が明確
③成長ビジョンとの連動が図られている
を満たしている企業事例を紹介していきます。
わかりやすい中期経営計画の優良事例
事例①「バリュエンスホールディングス株式会社」
中期経営計画実現に向けたKPIマネジメント
バリュエンスホールディングスは買取専門店「なんぼや」を中心に事業を行う2011年12月設立の企業です。
同社はCovid-19パンデミックの影響を受け売上高・営業利益ともに中計目標に対し進捗遅れが発生しました。そのため、中計を見直し、「VG1000 ver2.0」を再度設定、前提条件の見直しとパーパス設定を行い、より長期を見据えた中期経営計画の策定を2022年12月に行い発信しました。同社を取り巻く環境はCovid-19によって大きく変化しており、長期的な成長に向けて更なる投資が求められる状況であります。
そんな中、中期経営計画の内容はデザイン性高くかつ分かりやすく1枚1枚のページが構成されております。また、同社のビジネスモデルに加えて、顧客となる一般消費者との関係性強化・仕入れ先となるパートナー会社との関係性強化の方向性について図示しており、同社の稼ぐ力の源泉とその強化策について分かりやすく掲載されています。
出所:バリュエンスホールディングス 中期経営計画よりタナベコンサルティング作成
また、中期経営計画を実現するためのKPI指標を定め、それをビジュアルとして計画実現の重要項目が分かりやすく表現されています。同社が重点的に管理していくための指標が表現されており、中期経営計画実現に向けた意思の強さが感じられます。
出所:バリュエンスホールディングス 中期経営計画よりタナベコンサルティング作成
以上から、同社は長期成長戦略と中期経営計画の実現に向けて設備投資を継続的に行うことが必要としており、そのために投資家に向けたメッセージを発信していると言えます。また、そのKPI指標として提示することにより重点集中でグループ全体に対しても経営資源をどこに集中させるのかを明確にしております。
中期経営計画を達成させていくための優良事例の一つであると言えます。
事例②「コクヨ株式会社」
コクヨは「文房具の製造・仕入れ・販売」を中心事業として行う企業です。
同社は長期ビジョン「CCC2030」の中で、森林経営モデルを軸に売上5,000億円を掲げております。
2021年11月に第三次中期経営計画となる「Field Expansion2024」を策定し発信しました。
今回の第三次中期経営計画は長期ビジョンに向けた折り返し時点の立ち位置として、2030年の持続的な成長に向け、事業領域の拡大を加速することとしています。
出所:コクヨ 中期経営計画よりタナベコンサルティング作成
本説明資料の構成として、①2030年の長期ビジョンの提示、②前回の中期経営計画の振り返り、③新たな中期経営計画という流れとなっておりシンプルな構成です。また、資料のデザインもシンプルかつ洗練されており、各ページの伝えたいメッセージが明確に伝わりやすい内容となっております。
長期ビジョンとの連動や読み手の気持ちに合わせたメッセージ性の高い内容など参考になるページが多く、優良事例の一つとなります。
まとめ
ステークホルダー目線の中期経営計画を策定する
「中期経営計画を策定しているが社内に浸透されず、実行推進されない」という悩みの問題の本質には、事例で述べてきたような「分かりやすさ」や「ステークホルダー目線」が欠けていたように感じます。そのため、会社が求めることとステークホルダーの間で温度差が生じ、協力を得られていないということに繋がるのではないでしょうか。
中期経営計画の「目的」、「誰に見てほしいのか・誰の協力を得たいか」を再度洗い出し、それを達成出来るような構成で中期経営計画を策定することが必要となります。
ぜひ、今後の中期経営計画づくりの参考になれば幸いです。
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