人事コラム

コンサルタント一問一答人材育成・研修

研修制度見直し・導入で失敗しないために押さえるべき5つのポイント

これからの時代変化に適応できる人材育成を実現するには、これまでの研修制度の思想を一度リセットし、AIとの共存を前提とする。

昨今、研修制度を新たに導入・見直しする企業は増加傾向にあります。一方で各社からは「一過性で終わった」「結局何も変わっていない」といった声もあります。何故いま研修制度を見直しているのか、そのために押さえる5つのポイントをご紹介します。

社内の研修制度に関する議論で「前年踏襲」「流行だから」と話していたら要注意です!

多くの企業が「研修制度」の見直し・導入を急ぐ理由

多くの企業が「研修制度」の見直し・導入を急ぐ理由

この3年ほどで我々の仕事の中に「生成AI」が入ってきており、業務の進め方が大きく変わってきました。AIの急速な普及によりビジネスで求められるスキルも変わり、早急に習得することが求められています。
以下は経済産業省が提唱しているこれまでとこれからで求められるスキルTOP3です。

 

・2015年 ①注意深さ・ミスがないこと ➁責任感・まじめさ ③信頼感・誠実さ
・2050年 ①問題発見力 ➁的確な予測 ③革新性
※出典:経済産業省_未来人材ビジョン(令和4年5月)

 

AIと共存するために上記のスキル習得は急務になっており、これまで特に日本人に重宝されてきた「確実に仕事を遂行する業務」は今後置き換わる可能性が高いと言われています。「正確な仕事」はAIが得意としているため、資料の誤字脱字・修正や体裁を整えるなどの確実性が求められる業務はAIに任せた方が確実です。
一方でVUCAといわれる先行き不透明な時代の中で「問題発見力・的確な予測・革新性」など創造的スキル、つまり「答えのないことを検討するための知恵」がより求められる時代になりました。
この時代背景から求められるスキル変化が研修制度の見直し・導入を急ぐ大きな理由です。

研修制度がもたらすメリットとありがちな失敗

研修制度がもたらすメリットとありがちな失敗

表題について紹介する前に、研修制度導入において押さえておくべき2つの観点を紹介します。

 

観点1.研修制度が経営ビジョン実現に向けた戦術としてつながっているか

各社様から研修相談時に制度を変える問題意識として「10年以上変えていないから形骸化しているのではないかと思った」「これまで○○の層に実施していないから何か手を打ちたい」といった声を度々伺います。こちらもとても重要な問題意識ですが、大切なのは「何のために研修を実施して企業に何をもたらしたいか」を押さえることです。これが経営ビジョン実現に繋がっているのか、繋がっていると確信できるまで何度も行ったり来たりすることが重要なポイントです。

 

観点2.それぞれの目的に合致した「研修制度と内容」になっているか。

スポーツも基本動作を覚えたのちに反復練習など研鑽や修正を通じて技術が磨かれるように、研修も1回受講するだけで習得できるものではなく、研修受講後の状態はスポーツでいえば「基本動作を理解したレベル」です。
また、求められるスキルレベルが向上している中で、「できるレベル」に到達するには研修だけでは非常に困難です。スキル習得に向けてはスポーツでいう「反復練習」が必要であり、その機会が「OJT」であり、一連の学習の流れを体系化したものが「研修制度」です。

上記を踏まえて、研修制度がもたらすメリットとありがちな失敗は以下になります。

 

1.メリット

(1)日常業務では学びにくいが経営ビジョン実現に向けて必要とされるスキル習得を通じて意図した人材に近づける。
(2)プログラム受講を通じて、会社・経営層が何を求めているかというメッセージを受講者本人がダイレクトに受け取ることができる。

 

2.ありがちな失敗

(1)目的が不透明でかつ発生した問題の対処的な一過性の研修しか実施しておらず受講者の一時的な変化で終わってしまった。
(2)何十年も同様の研修制度で実施しており、担当者が問題意識を持っていないため、経営ビジョンと研修制度がリンクせず、研修実施の意味が見いだせない。
(3)毎年その時々で受講する研修を変えており、場当たり的になっている。

研修制度の導入を成功させる5つのポイント

研修制度の導入を成功させる5つのポイント

研修制度を成功させるには以下の5つのポイントがそれぞれ「連動している」状態が望ましく、これらが「他社との差別化要因」になります。

 

(1)経営ビジョン

→中長期で企業がどう進化していくか、企業が目指す姿が明確にある

 

(2)期待する人材像

→ビジョン実現に向けて人材に何を期待しているか、これまでと何が変わるかが明記されている

 

(3)研修体系化と達成基準

→研修制度全体で必要スキルが網羅されて、適切なタイミングとフローが明記されており、達成基準が明確である

 

(4)現場理解

→「なぜ・何を・どうやって」学ぶのか意図と達成基準を現場上司・受講者が理解しており、現場で共有されている

 

(5)効果測定

→達成基準に合わせて終了後に効果測定をして、企業が目指す方向性と照合させて改善策を練る機会がある

研修手法の比較

研修手法の比較

研修手法は様々あり、それぞれの特性を活かして学習項目と見比べてみることが重要です。
代表的なのは以下です。

 

(1)取り組み手法

OJT(実践値が積める)or OFF-JT(日常業務では学べないことが学べる、自分の現在地を知る)

 

(2)研修手法

オンライン(手軽にできる)or 対面(空気感を味わえる。ダイレクトに伝わる、深い議論ができる)

 

(3)研修内容

講義・ケーススタディ(疑似体験・自分の頭で考えることでスループットする)・ロールプレイング(疑似的に取り組んでみて現在地を知る)・ワークショップ(他者の意見を取り入れてアウトプット力を高める)・アセスメント(客観的な評価をすることで、能力を可視化する)

 

研修制度の参考例としてこれまでの背景も加味して紹介します。

 

1.企業ビジョン

「新たな未来を切り開く」

 

2.問題意識

(1)これまでは「安全性・確実性」が求められていたが、AIの登場により求められるスキルが変わっている
(2)これまでにないビジネス展開を模索しており、マインドセットを変えないといけない

 

3.人材像

「これまでのDNAを継承しつつ、新領域の未来を創れる人材」
求める能力(今回は部長を例):「問題発見力・的確な予測力・自らベクトルを作る力・一歩踏み出す力」

 

4.研修

「ビジョン策定(問題発見力・的確な予測力)とリーダーシップ(自らベクトルを作る力・一歩踏み出す力)」

 

5.達成基準

①上記の能力が理解できているか、➁(次の階層への)能力があるか(数値化する)

 

6.取り組み手法

OFF-JT→ビジョン策定、ベクトルづくり
OJT→ビジョンをメンバーに伝達して動いてもらう

 

7.研修手法

対面研修(自らの志を掘り下げるため、五感で感じることを重要視したプログラムが重要であり、一部非日常空間で実施)

 

8.研修内容

(1)講義(ビジョン策定とは、自分らしさとの向き合い方)
(2)ケーススタディ(架空の人物になりきりビジョン作りのカンコツを得る)
(3)ワークショップ(自社の経営ビジョン策定・内省と対話を通じて自らのベクトルをつくる)
(4)アセスメント(研修事前事後の能力評価・ビジョン策定においてのクオリティ評価)

 

最近の傾向では「パーパス」や「オーセンティック」など自分と向き合い、自分発信で価値判断軸を作るケースが増えてきております。したがって先行き不透明な時代だからこそ、アナログな「自分と向き合う」ことが人としての価値です。

 

9.実践

研修時に出たアウトプット内容を検討内容として実際の経営アジェンダに入れる(ジャッジは経営者が判断)
※徹底してAIも活用し、プロンプト作成能力を磨き上げます。

 

10.効果測定

①経営承認された事案数、➁スキルレベル到達、③リーダーとしての資質判断(レビュー)

研修制度は作って終わらせないために

研修制度は作って終わらせないために

研修制度を作って終わりにしないためには、単に実施するだけでは形骸化しやすく「他制度との連動」「実務と連動し成果実感を得る」ことが重要です。例えば、以下のようなことが挙げられます。

 

1.昇格要件など必須研修に設計することで受講者の当事者意識を喚起する

→「やらされ感」があったとしても、強制的な自分たちのメリットにつなげることで「やらねば」につなげる

 

2.長期にわたる研修はそれをトリガーにして職場内一大イベントにする

→例えば「○○さんを部長に昇格させるために職場メンバーみんなで取り組もう!」「研修内容を無駄にしないようにみんなで話し合って実践してみて目指す姿に近づこう!」といった一大イベント化することで、実践力を上げてかつ組織に一体感が生まれて、結果として組織単位でのエンゲージメント向上につながります。

 

3.最初はスモールステップから入ること(受講者に関心を持たせる、いきなりハードにしない)

→人はハードルが高すぎるとやる気がなくなりやすいです。関心を持ってもらうためには入りやすいテーマから入っていくことが望ましいです。

 

上記のような経営ビジョンとの「連動」と受講者の「感情を動かす」ような仕掛けがあることで学びを実践し、社員1人ひとりが成長することで企業成長へと繋がる研修制度になります。

この課題を解決したコンサルタント

伊東 孝朗

タナベコンサルティング
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チーフコンサルタント

伊東 孝朗

人材業界にて400社以上のキャリア・新卒採用支援を通じ採用領域の上流設計から運用定着まで組織活性化を数多く経験。入社後は、人材開発、組織開発のノウハウを生かし、人と組織の領域のコンサルティングに携わる。採用から社員の定着、活躍まで、HR全般をワンストップで支援できることを強みとする。

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