
役員研修を実施する目的
具体的には以下のような目的がある。
(1)経営能力の向上:経営戦略、財務、リスク管理などの専門知識を深める。
(2)リーダーシップ強化:組織を牽引するリーダーシップスキルを磨く。
(3)ガバナンスの強化:企業倫理やコンプライアンスに関する理解を深め、健全な経営を実現する。
(4)変化への対応力向上:市場環境や技術革新に迅速に対応するための視点を養う。
(5)役員間の連携強化:役員同士のコミュニケーションを促進し、チームとしての結束力を高める。

役員研修の重要性とその背景
役員研修は、企業の経営陣がその役割を適切に果たすために不可欠であり、以下にその重要性を示す。
(1)経営者の影響力
企業は経営者や役員の価値判断や意思決定によってその方向性が決まる。「魚は頭から腐る」という言葉が示すように、経営陣の質が企業全体に影響を与えるため、役員の育成は企業の健全な成長に直結する。
(2)コーポレートガバナンス・コードの規定
上場企業においては、取締役や監査役が重要な統治機関としての役割を果たすために、必要な知識や理解を深めることが求められている。これにより、役員はその責務を適切に果たすことが期待される。
コーポレートガバナンス・コードの原則において、「取締役・監査役のトレーニング」として以下のように規定される。「新任者をはじめとする取締役・監査役は、上場会社の重要な統治機関の一翼を担う者として期待される役割・責務を適切に果たすため、その役割・責務に係る理解を深めるとともに、必要な知識の習得や適切な更新等の研鑽に努めるべきである。」
(3)聖域化の問題
役員自身が「必要がない」と感じることが多く、研修が聖域化されている実態がある。このような状況では、リスキリングや自己成長の重要性が軽視されていると言える。

役員研修を行うメリット
役員研修を実施することで、企業全体に以下のようなメリットがもたらされる。
(1)経営の質の向上:役員が最新の知識やスキルを習得することで、意思決定の精度が向上する。
(2)リスク回避:法規制やコンプライアンスに関する理解が深まり、リスクを未然に防ぐ。
(3)企業価値の向上:役員が戦略的な視点を持つことで、企業の競争力やブランド価値が向上する。
(4)組織の一体感強化:役員間のコミュニケーションが活性化し、経営陣としての一体感が生まれる。
(5)後継者育成:次世代のリーダー候補が役員研修を通じて育成される。

役員研修を成功させるポイント
役員研修を効果的に実施するためには、以下のポイントを押さえる必要がある。
(1)目的の明確化:研修の目的を明確にし、役員にその重要性を理解させる。
(2)カスタマイズされた内容:企業の業界や課題に応じたオーダーメイドの研修プログラムを設計する。
(3)実践的なアプローチ:座学だけでなく、ケーススタディやワークショップを取り入れ、実践的な学びを提供する。
(4)外部専門家の活用:必要に応じて外部の講師やコンサルタントを招き、専門的な知識を提供する。
(5)継続的なフォローアップ:研修後も定期的なフォローアップを行い、学びを実務に活かせるよう支援する。
(6)役員の主体性を促す:役員自身が積極的に学びに参加する姿勢を持つことが重要である。

役員研修に盛り込むべき内容
役員研修の内容は、企業の状況や役員のニーズに応じて設計されるが、以下のようなテーマが一般的である。
(1)経営戦略:市場分析、競争戦略、成長戦略の立案と実行。
(2)財務・会計:財務諸表の読み方、資金調達、投資判断。
(3)リスク管理:リスクアセスメント、危機管理、コンプライアンス。
(4)リーダーシップ:変革型リーダーシップ、意思決定力、コミュニケーションスキル。
(5)ガバナンス:取締役会の役割、企業倫理、法的責任。
(6)デジタル化・DX:デジタルトランスフォーメーションの理解と推進。
(7)グローバル視点:国際市場の動向、文化的多様性への対応。
(8)イノベーション:新規事業開発、創造的思考の促進。

タナベコンサルティングが提供する役員向け
『他流試合』研修
参考までに、タナベコンサルティングが提供する「プロ役員セミナー」のプログラムを記載する。
4つのインプットと参加者同士の討議、異業種交流が特徴である。
(1)プロ役員の条件と経営の本質
①プロ役員の条件と役割
②プロ役員に必要な能力
③プロ役員の責任と義務
(2)プロ役員に求められるビジネスモデル思考
①プロ役員にとっての事業とは
②ミッションから始めるビジネスモデル
③環境変化を読解
④ビジネスモデル思考
⑤競争力の強化
⑥売上高経常利益率10%実現の五つの条件
(3)プロ役員としての人・組織づくり
①プロ役員に求められる経営センス
②経営のバックボーンシステム
③組織デザインと人材マネジメント
(4)プロ役員としてのアカウンティングスキル
①プロ役員が押さえるべき経営指標
②収益構造から生産性を診る
まとめ
役員研修は、企業の持続的な成長を支える重要な取り組みである。経営者や役員がその役割を適切に果たすためには、研修を通じて必要な知識やスキルを習得し、継続的な成長を目指すことが求められる。
各企業は目的を明確にし、メリットを理解した上で、狙い・成果のポイントを押さえた研修を設計・実施することで、経営陣の能力を最大限に引き出すことができ、健全な企業運営を実現する。
ぜひ、役員研修を通じて、企業の未来を担う経営陣を育成し、競争力のある組織を構築していただきたい。
関連情報
この課題を解決したコンサルタント

タナベコンサルティング
HRコンサルティング事業部
エグゼクティブパートナー松本 宗家
- 主な実績
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- 上場建設業の人事制度構築支援
- 上場製造業の次世代幹部育成・ジュニアボード運営支援
- 中堅企業の中期ビジョン策定
- 卸売業、サービス業、建設業、製造業の社内アカデミー構築& 人材育成支援
