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執行役員の役割とプロセスを解説
経営を成功に導くスキル・指標の完全ガイド!

執行役員制度は、取締役会のガバナンスと現場執行の役割を分離し、経営スピードと実効性を高める仕組みとして大変有効である。導入には目的の明確化、権限設計、人材選定、評価制度整備等が不可欠であり、外部サポートの活用が成功のカギとなる。

執行役員とは

執行役員とは

執行役員とは、企業において「業務執行」を専門的かつ迅速に担うために設けられた役職のことを指す。取締役会で策定された経営方針を実際の事業運営へ落とし込み、現場レベルでの意思決定や業務遂行を担うのが主な役割である。
法的には会社法上の「役員」には含まれず、いわば企業独自の制度として導入されるケースが一般的であり、そのため、取締役が担う法的責任や監督機能とは異なり、執行役員は純粋に事業の執行に重きが置かれる。

この仕組みは、取締役会がガバナンスや戦略策定に集中できるようにする一方で、執行役員がスピーディに意思決定を行うことを可能にする。特に環境変化が激しい現代では、経営陣と現場を繋ぐ「橋渡し役」としての存在感が高まっている。

執行役員制度が求められる背景

執行役員制度が求められる背景

日本企業において執行役員制度が導入され始めたのは1990年代後半以降であるが、その背景には大きく三つの流れがあるとされる。

①経営環境の変化
グローバル競争の激化や技術革新のスピードが高まる中で、従来の取締役会中心の意思決定ではスピードが追いつかなくなった。取締役会は法的責任やガバナンスを重視する場であるため、どうしても慎重な意思決定になりがちである。その一方で、事業現場は市場の変化に即応した判断を迫られる。このギャップを埋める仕組みとして、実行専任の役職=執行役員が求められるようになっていった。

②ガバナンスと経営執行の分離
バブル崩壊以降、日本企業でも「コーポレートガバナンスの強化」が叫ばれ、取締役会は監督機能に集中するべきだという考え方が広がった。その結果、経営方針の策定や監督を取締役会が担い、日常の業務執行は執行役員が担うという役割分担が浸透していく。これにより、取締役会は戦略やリスク管理に集中でき、組織全体の健全性と透明性が高まる効果が期待された。

③組織の専門化と多様化
事業領域が拡大し、専門性が求められる中で、各部門を統括できる人材を「経営層の一角」として位置づける必要が生まれた。従来の部長・本部長の権限では不十分な場面も増え、より強いリーダーシップと裁量を持たせるために執行役員のポジションが活用されるようになった。

こうした背景から、執行役員制度は単なる肩書きの変更ではなく、組織全体のガバナンス強化とスピード経営を両立させるための仕組みとして定着した。近年では、大企業だけでなく中堅企業やベンチャー企業でも導入される事例が増えており、経営の実効性を高める重要な制度といえる。

執行役員制度導入プロセス5ステップ

執行役員制度導入プロセス5ステップ

執行役員制度を導入する際には、単なる役職新設ではなく「経営体制の再設計」として段階的に進めることが重要である。代表的な導入プロセスは以下のような5ステップになる。

ステップ1:目的の明確化
まず、自社がなぜ執行役員制度を導入するのかを明確にする。「経営のスピードアップを図りたい」「ガバナンスと執行を分離したい」「事業部門の責任を明確化したい」など目的を定義することで、その後の制度設計に一貫性が生まれる。目的が曖昧なままでは、形骸化しやすく失敗に繋がりやすい。

ステップ2:役割と権限の設計
執行役員に与える権限範囲を決めることが次のステップである。取締役会で決定された方針を実行するためにどこまでの裁量を持たせるのか、どの範囲を取締役や社長が保持するのかを明確に線引きする。特に人事権や投資判断に関しては、企業ごとに大きな違いが出る部分であり、慎重な設計が求められる。

ステップ3:選任基準の策定
執行役員は経営層と現場の橋渡しを担うため、選任基準も通常の部門長とは異なる。部門実績や専門知識に加え、経営視点での意思決定力や横断的な調整力が求められる。最近では、将来の取締役候補を育成する観点から、次世代リーダーを抜擢するケースも増えている。

ステップ4:運用ルールの整備
役割や権限が定義されたら、実際に制度を動かすための会議体や報告ルートを設計する。例えば「執行役員会議」を定期開催し、取締役会に対して進捗を報告する仕組みを設けるなど、情報共有のフローを整備することが不可欠である。このプロセスが弱いと、取締役会との連携が途切れ、制度が孤立してしまいがちである。

ステップ5:定期的な評価と改善
制度導入は一度きりで完了するものではない。執行役員の役割が組織に適切に機能しているかを定期的に評価し、必要に応じて権限や人員配置を見直す。評価には定量的なKPIだけでなく、組織内のコミュニケーションや意思決定スピードへの影響といった定性的な側面も含めることが効果的である。

以上のステップを丁寧に踏むことで、執行役員制度は単なる制度導入に終わらず、企業の成長戦略を支える仕組みとして定着していくのである。

執行役員に求められるスキル&KPI

執行役員に求められるスキル&KPI

では、執行役員は経営と現場を繋ぐ存在として、どのようなスキルが求められるか?
主には下記4点がそのスキルとなる。

①経営視点での意思決定力
部門利益だけでなく、会社全体の成長や持続性を見据えた判断を行う力が不可欠となる。短期的な数字に囚われず、長期戦略との整合性を意識できる視点が求められる。

②リーダーシップと人材育成力
執行役員は自らの部門を率いるだけでなく、次世代リーダーを育てる役割も担う。人を動かす力、チームを鼓舞する力、組織文化を浸透させる力が重要である。

③横断的な調整力
営業、開発、管理部門など複数の部門間を繋ぎ、矛盾や摩擦を解消しながら全社最適を実現するスキルが求められる。縦割り組織を超えた連携を推進できる能力が評価される。

④変化対応力とスピード感
市場や顧客のニーズが変化する中で、素早く意思決定し実行に移せる能力が求められる。特にデジタル化やグローバル展開が進む現在では、俊敏な対応が競争力を左右する。

そして、執行役員の成果を測る指標は、単なる売上・利益といった数値だけでなく、組織全体への波及効果を含めて設定する必要がある。代表的なKPIには以下のようなものが考えられる。

①事業成果指標:売上成長率、利益率、新規顧客獲得数など部門ごとの数値目標
②組織・人材指標:部門の離職率、後継者育成計画の進捗、従業員エンゲージメントスコア
③プロセス指標:意思決定から実行までのリードタイム短縮、プロジェクト達成率
④全社貢献指標:他部門との協働プロジェクト件数、横断的な課題解決への貢献度


KPIは「数値化できる実績」と「組織変革への貢献」をバランスよく組み合わせることがポイントである。これにより、執行役員が短期業績に偏らず、持続的な企業価値向上に貢献できる仕組みが整うこととなる。

執行役員制度導入を成功させるサポート活用法

執行役員制度を効果的に機能させるためには、社内設計だけにとどまらず、外部の知見や仕組みをうまく取り入れることが成功のカギとなる。特に以下のようなサポート活用が有効であるとされる。

①専門コンサルティングの活用
制度設計段階では、ガバナンスや人事制度に精通した専門コンサルタントの助言が役立つ。どの範囲の権限を執行役員に委譲すべきか、評価制度とどう連動させるかといった論点は企業ごとに異なるため、外部のベストプラクティスを取り入れることで制度の形骸化を防ぐことができる。

②研修・人材育成プログラムの導入
執行役員に就任した人材が必ずしも経営スキルを十分に備えているとは限らない。そのため、経営戦略、ファイナンス、リーダーシップ、ガバナンスなどに関する研修を体系的に用意することが望まれる。また、社外役員や取締役経験者によるメンタリングも有効である。これにより、経営層と現場の両視点を持ち合わせた人材育成に繋がる。

③外部ネットワークや情報共有の場
執行役員は孤立しやすい立場でもある。他社の執行役員や経営層とのネットワークを持つことで、客観的な視点や新しいアイデアを得やすくなる。業界団体や経営者フォーラム、勉強会などへの積極的な参加をサポートすることも、成果発揮に直結する。

④評価・報酬制度の外部監査
内部だけで評価制度を作ると、どうしても従来の延長に偏りがちである。外部専門家による制度監査やフィードバックを活用すれば、KPIの妥当性や運用の公平性を検証でき、透明性と納得感を高めることが可能となる。

⑤ITツールによる意思決定支援
執行役員の意思決定をスピード化するには、データに基づいた判断が不可欠である。経営ダッシュボードやBIツールを導入し、売上・利益・人材データをリアルタイムで可視化することで、権限委譲を裏付ける仕組みとなる。

これらのサポートをうまく組み合わせることで、制度が単なる「肩書きの新設」に終わらず、実効性をもった経営改革へと繋がる。執行役員制度は企業文化や経営スタイルに適合させることが重要であり、外部の知恵を柔軟に取り入れる姿勢が成功の大きな要因となるのである。

この課題を解決したコンサルタント

鎌田 智一

タナベコンサルティング
HR&人材育成
ゼネラルマネジャー

鎌田 智一

建設業界での営業・経理経験、人材業界での採用コンサルティング経験を経て、当社へ入社。業種・業界に関わらず、大手から中堅・中小企業の企業の採用支援、社員定着化を得意とする。またビジョン策定・ホールディングス・RPA導入など強い組織を実現するテーマへ活躍の幅を広げている。

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