人事コラム
人材育成フレームワークを活用し、自社のレベルに合った教育研修体系を構築する
他社の真似や「とりあえずe-ラーニング」から抜け出し、再現性があり、効果のある自社オリジナルの教育研修体系を構築しましょう!
このコラムでは、カッツモデルを活用した教育研修体系の構築方法を解説します。人材育成の課題を整理し、コンセプチュアルスキル・ヒューマンスキル・テクニカルスキルを体系的に組み込む具体的なステップを紹介。自社に合った教育体系を作り、社員の能力向上を目指しましょう。
まずは、人材育成において、社員に何を教えたいのか、洗い出して整理しましょう
ビジネスで直面する人材育成の課題
皆様の会社の教育制度は、以下のような状態になっていませんか。
(1) 思いつき・その場限りの教育になっている(→計画性がない)
(2) 誰も全体像を把握していない(→体系的でない)
(3) 教育研修は現場任せになっている(→把握していない)
(4) あまり意味がないので、教育をしていない(→ニーズに合致していない)
これらは私が様々な業種・規模の人事担当役員にお会いする際に、共通してお伺いする内容です。
こういった場合、私は「まずは、社員に何を教えたいのか、洗い出して整理しましょう。」とお伝えしています。
その後またお話しを聞くと「各自、教えたいことは色々と出てくるのですが、内容がバラバラで、何から手を付けるべきなのかわからない」と頭を抱えておられることが多いです。
そこで、本コラムでその整理の仕方・活用の仕方をお伝えすることによって、皆様の会社に合った教育体系を作るための一助になれば幸いです。
次項以降でその方法を具体的にお伝えしますのでご覧ください。
教育研修体系は、学生が応募の際に必ず見ている内容でもあります。
人材の能力アップと採用力アップを実現しましょう!
人材育成フレームワークの紹介
代表的な人事育成フレームワークとして、カッツモデルを紹介します。
カッツモデルとは、アメリカの経済学者、ロバート・L・カッツ氏が提唱した、組織のマネジメントに求められる能力を「コンセプチュアルスキル」「ヒューマンスキル」「テクニカルスキル」の3つに分類した理論です。以下それぞれポイントをお伝えします。
(1)コンセプチュアルスキル
物事を俯瞰的に捉え、全体像を理解し、戦略的な意思決定を行う能力です。
このスキルは特に経営層や上級管理職など、組織全体の方向性を決める役割を担う人にとって不可欠です。
具体例:
①経営戦略の立案: 会社のミッションやビジョンを基に、長期的な戦略を策定する。
②市場トレンドの把握:業界全体の動向を把握し、会社の方向性を決定する。
③組織変革の推進:組織再編や業務プロセスの改善に向け、関係者を巻き込みながら変革計画を策定し、実行に移す。
コンセプチュアルスキルは、会社組織を正しい方向に導くために重要です。
このスキルが欠けていると、短期的な視点に偏り、組織の成長を阻害する可能性があります。
コンセプチュアルスキルを構築する前提は、自社のコアコンピタンスやKFS(Key Factor for Success)が明確になっていることです。
なぜなら、コンセプチュアルスキルは「自社が勝つための条件がこれだ」「この能力が高い人に経営層になってもらいたい」と言っているようなものだからです。もちろん一般的な「経営層に求められるスキル」も必要ですが、卓越しているべき能力が何か、という点では業種ごと、会社ごとに違いが出ます。
(2)ヒューマンスキル
他者と円滑にコミュニケーションを取り、信頼関係を築き、チームを効果的に運営する能力を指します。
このスキルは、対人折衝をするすべての職業および会社のリーダー層を目指す方にとって重要です。
具体例:
①部下のモチベーション管理: チームメンバーのやる気を引き出し、目標達成に導く。
②対立の解消: チーム内で意見の衝突があった場合に、双方の意見を調整し、解決する。
③フィードバックの提供: 部下の成長を促すために、建設的なフィードバックを行う。
ヒューマンスキルは、一緒に働くメンバーの力を最大限に引き出すために必要です。このスキルが不足していると、チーム内のコミュニケーションが滞り、パフォーマンスが低下する可能性があります。
ヒューマンスキルを構築する前提は、自社のパーパス・経営理念・ビジョンなどの「わが社が長期的に目指す姿」「わが社のあるべき人材像」が明文化されていることです。
(3)テクニカルスキル
特定の業務や専門分野における知識や技術を指します。このスキルは、現場で直接業務を遂行する方にとって特に重要です。
具体例:
①プログラミングスキル: IT部門のリーダーが、システム開発の知識を持っている。
②営業スキル: 営業チームのリーダーが、顧客との交渉や契約締結のノウハウを持っている。
③製造技術の知識: 工場の現場リーダーが、製品の製造工程を熟知している。
テクニカルスキルは、現場業務を生産性高いものにすることに役立ちます。
テクニカルスキルを構築する前提は、自社の業務フローが明確になっていることです。言い換えると業務内容が不明確、例えば属人化していて見えない、アウトソーシングしておりブラックボックス化している状態だと、表面的な業務スキルに留まり意義が薄いものになります。
余談ですが、立場によってメンバーに要求する(育てたいと思う)スキルが異なる場合が見られ、現場はテクニカルスキル、人事はヒューマンスキル、経営層はコンセプチュアルスキルを持った社員を求める傾向にあります。
そのため教育研修を行っていても、現場は「人事が主催する研修は役に立たない」と言い、人事は「現場でOJTがなされていない」と言い、役員は「教育研修に投資しているのに次世代経営層が育たない」と言う。このような認識齟齬は度々発生します。このような場合は、冒頭に申し上げた「教えたいこと」を洗い出すことで認識の齟齬に気づくことができます。
カッツモデルに沿った教育研修体系の作り方
この章では、カッツモデルを考慮した教育体系の作り方をお伝えします。
一例ではあるものの、教育研修体系の作り方は以下が一般的です。
ステップ1:スキルの洗い出しを行う
ステップ2:スキルの習得難易度評価を行う
ステップ3:等級や成長ステップと紐づける
ステップ4:学び方・スケジュールを決める
カッツモデルの各スキルを組み込む際の注意点は、各ステップの中で解説します。
ステップ1:スキルの洗い出しを行う
まずはスキルの洗い出しを行います。具体的にはコンセプチュアルスキルは自社のコアコンピタンスやKFSから、テクニカルスキルは業務フローから、ヒューマンスキルはわが社のあるべき人材像からスタートすると良いでしょう。
ステップ2:スキルの習得難易度評価を行う
スキルを洗い出したら、次は習得難易度評価を行います。抽象的なコンセプチュアルスキルは高難易度に、具体的なテクニカルスキルは低難易度になり偏りが起きますが、そういうものだと割り切って進めて下さい。
ステップ3:等級や成長ステップと紐づける
スキルの習得難易度が決まったら、次はいつまでに学ぶか、を決めます。一般的には人事制度上の等級や、それより細かく区切った成長ステップと紐づけることが多いです。さらには昇格基準に紐づけたりします。
人事制度が存在する会社では、等級定義にある程度各スキルが組み込まれていることが多いので、そのレベルに合わせて他のスキルを入れるとスムーズです。
ステップ4:学び方・スケジュールを決める
一つ一つのスキルについて、いつ・誰が・何を学ぶかを5W2Hで決めます。いわゆる研修スケジュールやスキルマップとして設定されている会社が多いですが、実際は棚卸ししたスキルの数だけ学び方とスケジュールを決めることが望ましいです。そうでないと、せっかく棚卸したスキルが漏れてしまいます。ただし、全てを研修に落とし込む必要なく、OJTに任せるスキルもはっきりと決めて、いつまでに経験、習得させるかを決めれば問題ありません。
失敗するパターンとリスクマネジメント
ここまでカッツモデルに基づいた教育研修体系の作り方についてお伝えしました。
これに取り組もうとする方に向けて、よくある失敗するパターンを2つお伝えします。
(1)事業部門のみ・人事部門のみで構築しようとする
理想は、経営層主導で事業・人事部門が分担しながら構築することですが、様々な事情で事業部門もしくは人事部門が独自で進めるケースが見られます。これはデメリットが大きいです。
まず事業部門のみで構築するパターンは、スタートしやすいが完走しづらいです。事業部門のみで構築しようとすると現場寄りになりがちで、やたらと細かいテクニカルスキルが示される反面、コンセプチュアルスキルが大雑把で使い物にならないケースが見られます。逆に人事部門のみで構築しようとすると、テクニカルスキルが抽象的で現場では使い物にならない内容になりがちです。
特にコンセプチュアルスキルの構築には経営層の協力も重要であり、教育研修体系を構築する際は事業部門と人事(バックオフィス)部門両方に責任者を置き、全社プロジェクトとして実施することを推奨します。
(2)構築後のマネジメントシステムがない
構築後のマネジメントシステムとは、構築した教育体系を計画通り運用する仕組みのことです。運用する仕組みが無いと、教育体系を作っても形骸化してしまい、例えばテクニカルスキルの習得を進めていなかったり、必要な管理職研修を受けずに昇格してしまう管理職が居たりします。
教育体系の形骸化を防ぐために有効なのが教育体系の管理担当者の設置です。具体的には、教育研修担当者の役割に加え、事業部側が担当している教育内容(スキルマップなど)の進捗を管理する役割が加わったものです。
まとめ
本コラムでは、教育体系が未整備・発展途上企業の人事担当者様向けに、代表的な人材育成フレームワークであるカッツモデルを活用し、教育体系を作る方法についてお伝えしました。繰り返しになりますが、教育体系を作る際に大切なのは「社員に何を教えたいのか、洗い出して整理する」ことにあります。優先して教えたい内容は事業部・人事・役員で異なることが多いため、各自の意見をしっかりと聞いた上で教育体系の構築を進めて下さい。
とはいえ、各部門へヒアリングしたり、その整理をするのは想像以上に時間と労力がかかるため、通常業務を行いながら進めるのは厳しいという現実があります。そのような企業様のために、タナベコンサルティングでは「企業内大学(アカデミー)設立コンサルティング」というコンサルティングメニューがあり、こちらでは教育体系の構築だけでなく、教育コンテンツ(レジメや動画など)の作成支援を行っています。自前での構築に限界を感じたら、ぜひお問合せ下さい。
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教育体系構築・人材育成体系
構築コンサルティング
人材育成方針および人事制度との連動性を図りながら、各階層・各等級別に必要な教育・育成内容を整理・明確化させ、最適な能力開発機会を提供するための体系を構築します。
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