COLUMN

2025.10.07

海外進出に成功した企業事例と成功要因の解説

目次

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海外進出に成功した企業事例と成功要因の解説

はじめに

グローバル化が加速する現代において、日本企業の海外進出は生き残りをかけた重要な戦略となっています。国内市場の縮小と人口減少が進む中、海外市場での成功は企業の持続的成長に不可欠な要素です。本コラムでは、海外進出で顕著な成果を上げた日本企業3社の事例を詳細に分析し、その成功要因を探ります。

株式会社マンダム:インドネシア市場での圧倒的成功

海外進出の概要

株式会社マンダムは、男性用化粧品「ギャツビー」で知られる大阪発の化粧品メーカーです。同社の海外進出は、1958年のフィリピンにおける技術提携から始まりましたが、最も成功を収めたのはインドネシア市場です。1969年にインドネシアに合弁子会社を設立し、50年以上にわたって同国市場を開拓してきました。
現在、マンダムインドネシアは約1万3000の島々からなるインドネシア全土に販売網を構築し、離島の隅々まで商品を届けています。同社は1993年にはジャカルタ証券取引所に上場を果たし、現地企業としての地位を確立しました。

出典1:マンダムの強み「アジアの生活者へのお役立ち ~アジアに特化したグローバル展開~」(株式会社マンダム)
https://www.mandom.co.jp/ir/investors_strength2.html

海外進出の成果

マンダムは2024年3月末時点では、海外売上比率が約半分に達し、その中でもブランドの認知率はインドネシアがダントツNo.1を誇ります。インドネシアのヘアスタイリング市場において、マンダムは70%を超える圧倒的なシェアを獲得し、まさに独壇場の地位を築いています。

出典2:数字でわかるマンダムの強み(株式会社マンダム)
https://www.mandom.co.jp/ir/pdf/2024_mandom_report_06.pdf

出典3:マンダムレポート2024(株式会社マンダム)
https://www.mandom.co.jp/ir/pdf/2024_mandom_report_spread.pdf

成功要因の分析

現地化戦略の徹底

マンダムは単なる輸出企業ではなく、現地の生活者に「お役立ち」するという理念のもと、現地のニーズに合わせた商品開発を行いました。富裕層ではなく大衆層をターゲットとし、小袋パッケージで購入しやすい価格設定を実現しました。

長期的視点での市場開拓

50年以上という長期間をかけて市場を育成し、現地の販売網を1万3000の島々にまで拡大しました。短期的な利益追求ではなく、持続的な関係構築を重視した戦略が功を奏しました。

現地人材の積極的活用

現地法人の経営陣には現地出身者を多数登用し、現地の商慣習や消費者行動を深く理解した経営を実践しました。これにより、日本企業でありながら現地企業としての信頼を獲得しました。

株式会社マンダム:インドネシア市場での圧倒的成功

森永製菓:アメリカ市場でのハイチュウ大ブレイク

海外進出の概要

森永製菓のソフトキャンディー「ハイチュウ」は、1975年の発売以来、日本で愛され続けてきた定番商品です。海外展開は当初、マリーやムーンライトなどのビスケット類と一緒に輸出される一商品に過ぎませんでした。しかし、2008年にハワイでの売れ行きが好調であることが判明し、本格的なアメリカ市場開拓が始まりました。
転機となったのは2014年頃、ボストン・レッドソックスの田澤純一投手がハイチュウをチームメイトに持ち込んだことでした。メジャーリーガーの間で「もぐもぐタイム」として話題となり、一気にアメリカ全土に人気が広がりました。

海外進出の成果

2021年度のハイチュウ(HI-CHEW)の売上高は9200万ドルに達し、営業利益も過去最高の14億円(当時レート)を達成しました。2024年3月期の森永製菓の米国事業売上高は約191億円となり、年20%を超える高成長を継続しています。成功を受けて、2015年にはノースカロライナ州に現地生産工場を建設し、2024年には第2工場の建設も決定されるなど、生産体制の拡大を続けています。

出典4:2023年3月期決算説明会資料(森永製菓株式会社)
https://pdf.irpocket.com/C2201/CaoZ/MIZ8/vF3T.pdf

成功要因の分析

偶発的機会の最大化

田澤投手によるハイチュウ持ち込みという偶然の出来事を、森永製菓は戦略的に活用しました。レッドソックスとのスポンサー契約締結や、メジャーリーガーへのサンプル提供など、迅速な対応が成功につながりました。

現地生産による品質とコスト競争力の確保

2015年の現地工場稼働により、輸送コストの削減と新鮮な商品供給を実現しました。また、アメリカの食品安全基準に対応した生産体制を構築し、消費者の信頼を獲得しました。

スポーツマーケティングの効果的活用

メジャーリーグというアメリカ最大のスポーツコンテンツとの連携により、短期間で全国的な認知度向上を実現しました。プロ野球選手という影響力のある層からの口コミ効果が絶大でした。

森永製菓:アメリカ市場でのハイチュウ大ブレイク

ニデック株式会社:グローバルモーター市場での圧倒的地位確立

海外進出の概要

ニデック(2023年に日本電産からニデックに社名変更)は1973年に創業した精密小型モーターの専業メーカーです。創業者の永守重信氏の「世界一のモーターメーカーになる」という明確なビジョンのもと、積極的な海外展開を推進してきました。1980年代から本格的な海外進出を開始し、現在では世界40カ国以上に拠点を展開しています。
同社の海外戦略は、M&Aによる急速な事業拡大と、現地での技術力向上を組み合わせた独自のアプローチが特徴です。特に中国、東南アジア、欧米市場での地位確立に成功し、グローバルサプライチェーンの要となる企業に成長しました。

出典5:公式HPグローバルマップ(ニデック株式会社)
https://www.nidec.com/jp/worldwide_new/

海外進出の成果

ニデックの2025年3月期の売上高は約2.6兆円に達し、そのうち海外売上比率は80%を超えています。精密小型モーター分野では世界シェア1位を獲得し、ハードディスクドライブ用モーターでは世界市場の約80%を占めています。
また、電気自動車の普及に伴い、車載用駆動モーターの需要が急拡大する中で、同社は次世代技術の開発と生産体制の強化により、この成長市場でも主導的地位を築いています。

出典6:2025年3月期 決算短信(ニデック株式会社)
https://www.nidec.com/files/user/www-nidec-com/ir/library/earnings/2025/FY24Q4_3_jp.pdf

出典7:公式HP NIDEC、No.1(ニデック株式会社)
https://www.nidec.com/jp/technology/no1/

成功要因の分析

明確なビジョンと経営戦略

「世界一のモーターメーカー」という分かりやすいビジョンのもと、一貫した戦略を継続してきました。創業者の強いリーダーシップにより、全社一丸となった海外展開が実現しました。

積極的なM&A戦略

技術力のある現地企業を買収し、それらの技術と日本電産の経営ノウハウを融合させることで、短期間での市場参入と技術力向上を実現しました。これまでに70社以上の買収を実行し、グローバル展開を加速させました。

現地での技術開発力強化

単なる生産拠点ではなく、各地域での技術開発センターを設置し、現地の技術者を積極的に活用しました。これにより、地域特有のニーズに対応した製品開発と、コスト競争力の向上を両立させました。

ニデック株式会社:グローバルモーター市場での圧倒的地位確立

成功企業に共通する要因

3社の事例を分析すると、海外進出成功企業には以下の共通要因が見られます。

長期的コミットメント

いずれの企業も短期的な利益追求ではなく、10年、20年といった長期的な視点で市場開拓に取り組んでいます。現地での地位確立には時間がかかることを理解し、継続的な投資を行っています。

現地化の徹底

現地の文化、商慣習、消費者ニーズを深く理解し、それに合わせた商品開発やマーケティング戦略を実践しています。日本の成功モデルをそのまま移植するのではなく、現地に最適化したアプローチを取っています。

現地人材の活用と育成

現地出身の人材を積極的に登用し、彼らの知見を活かした経営を行っています。また、日本からの派遣者と現地人材の効果的な協働体制を構築し、組織全体の競争力向上を図っています。

柔軟な戦略転換力

市場環境の変化や予期せぬ機会に対して、迅速かつ柔軟に戦略を転換する能力を持っています。固定的な計画に固執するのではなく、現地の状況に応じた臨機応変な対応が成功の鍵となっています。

成功企業に共通する要因

まとめ

海外進出の成功は、明確な戦略と現地への深い理解、そして長期的なコミットメントによって実現されます。マンダムのインドネシア事業、森永製菓のアメリカでのハイチュウ成功、ニデックのグローバル展開は、それぞれ異なるアプローチながら、これらの共通要因を備えていることが分かります。
今後、海外進出を検討する日本企業は、これらの成功事例から学び、自社の強みと現地のニーズを的確にマッチングさせる戦略を構築することが重要です。グローバル市場での競争は激化していますが、適切な戦略と実行力があれば、大きな成長機会が待っています。

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