COLUMN

2023.08.04

中期経営計画で重要になるテーマと事例5選をご紹介

中期経営計画のテーマ策定は、経営の方向性を決める重大な意味を持つものです。そのため、既に明確な指針がある場合を除き、他社の成功事例を参考に、策定のヒントを得ることが望ましいといえるでしょう。
本記事では、中期経営計画を立てるメリットと、そのための参考にできる事例、策定の手順について解説します。

中期経営計画とは|企業が目指す長期的な中間目標

中期経営計画とは、企業の長期的なビジョンを達成するための方針を、3〜5年という比較的見通しやすい時期を目処に作られる、具体的な計画です。いわば中間目標ともいえるでしょう。

経営理念が会社の在り方やビジョンを示しているとしても、具体的な目標や施策(何をするか)を明確にしなければ、絵に描いた餅のようになってしまいます。そのため、具体的な数値を挙げて、経営理念や長期経営計画を成功させるためには何が必要なのか、どのようにして成功させるのかを明らかにする必要があります。
また、目標を達成するためには、現場の協力が必要不可欠です。実現不可能なラインで物事を考えず、常に現場の声を意識しながら計画を立てましょう。

中期経営計画が必要とされる理由

中期経営計画が必要な理由として、次のような内容が主に挙げられます。

●具体的な方向性を全社的に共有するため
●公開することでステークホルダーからの信頼を得られるため
●融資や助成金を受ける上で有利になるため

当面の計画がはっきりしていれば、従業員も目標が立てやすく、業務に邁進できる環境が作れます。
またステークホルダーからの同意・信頼を得られることは、各方面とのエンゲージメントが強まることにもつながります。銀行や自治体などからの印象もよくなり、社会的な期待が高まるでしょう。

中期経営計画を立てることで得られるメリット

中期経営計画の大きなメリットは、必要性の項にて前述した内容を得られることが主です。つまり、方向性の共有、ステークホルダーからの信頼、融資が得やすくなることなどが挙げられるでしょう。
これらに加えて、以下のような、従業員や管理職個人単位のメリットも得られます。

●現状の課題が目に見える形になる
●長期計画との相違点・位置付けが明確になる
●従業員のモチベーションが高まる

中期経営計画とは|企業が目指す長期的な中間目標

【事例別】中期経営計画に盛り込むべきテーマ5選

中期経営計画のテーマを策定するにあたって、参考となる事例を紹介します。
基本的な考え方として、企業としての成長がイメージでき、収益につなげられるテーマや目標を設定すれば従業員や株主・銀行等から評価されやすい、という点を意識して策定することがおすすめです。

いつも|シンプルな内容で投資家への訴求を重視

株式会社いつもは、2027年に達成すべき成長戦略として「いつも.5x」を掲げ、持続的な高成長を目指すというシンプルなテーマを掲げています。
向こう5年間の毎年の売上・利益目標を数値で明確に示し、さまざまな経営指標に対する取り組みをビジュアルで示すという内容です。

ミッション 日本の未来をECでつくる
中期ミッション
2027年中期経営計画
「いつも.5x」
持続的な高成長を目指し、5年間で5倍の成長を目指す

参考:株式会社いつも「中期経営計画」

トヨタ紡績|複数の目標を関連付けて解決

トヨタ紡績は、2030年に達成すべき長期計画を掲げたうえで、2025年に達成したい中期経営計画のテーマを定めています。
モビリティの車内空間に新たな価値を求めるべく邁進する姿勢を明確にしています。

ビジョン 明日の社会を見据え、世界中のお客さまへ感動を織りなす移動空間の未来を創造する
ミッション(2030年) 企業価値の向上によりサステナブルかつ世界トップレベルの企業になる(インテリアスペースクリエイターとして新しい価値を創造)
中期ミッション
2025年中期経営計画
内装システムサプライヤーとして"ホーム"となり、
グローバルサプライヤーを凌駕する会社

※「ホーム」とは、「現地現物」で、自分たちで付加価値をつけることができ、競合と比較しても競争力で勝っている事業や地域のこと

参考:トヨタ紡績株式会社「2025年 中期経営計画」

オークネット|近年注目されるSDGsを取り入れた計画

株式会社オークネットは、現状分析を踏まえたうえで2025年に達成したい中期経営計画のテーマを定めています。
SDGsをテーマにして、リユース市場の拡大を見据えた「循環型流通の構築」などの目標と、具体的な指標(数値目標)を設定した計画です。

ミッション
2025年中期経営計画
SDGs企業として、情報の力で流通課題を解決し、世界中の顧客から選ばれ喜ばれる企業

【SDGs】
・循環型流通の構築「Circulation Engine.」
・多様性の尊重

参考:オークネット「中期経営計画 Blue Print 2025」

大成建設|DX・SXのような時代の変化に適応した計画

大成建設株式会社は、2018ー2020年の中期経営計画の結果を受けて、中長期の計画として「TAISEI VISION 2030」を策定しました。
2021-2030年の中期経営計画は、中長期の計画達成のために作られています。
前回の計画の総括を踏まえ、業界再編・DX・社会課題の解決など、構造変化を捉えた計画を示しています。

中長期ミッション(2030年) 進化し続ける The CDE3(キューブ)カンパニー
人々が豊かで文化的に暮らせる
レジリエントな社会づくりに貢献する先駆的な企業グループ
2021-2023年中期経営計画 中長期ミッションのなかでの重点課題(事業・サスティナビリティ)を細分化して策定

参考:大成建設「TAISEI VISION 2030」

日本国土開発|社会的に自社が果たせる役割に言及した計画

日本国土開発株式会社は、経営理念・長期ビジョン・中期経営計画の関係を明示しています。
中期経営計画については、前回の計画の振り返りで一定の成果を確認し、DX等の推進と、環境・社会課題の解決を視野に入れた新事業の創出を目指す流れです。

経営理念 わが社はもっと豊かな社会づくりに貢献する
長期ビジョン(2030年) 社会課題を解決する「先端の建設企業」
中期経営計画(2024年) 「独自の強み」 を創る
① 建設を 「人」 から 「機械」 へ
② 新たな事業領域を構築する

参考:日本国土開発「中期経営計画2024」

中期経営計画を立てるための手順

中期経営計画を立てるためには、計画に必要な材料を揃えることから始める必要があります。
これまでの事業の流れや前年までの実績、現状を踏まえたうえで、自然な道筋を付けられることが望ましいでしょう。

自社の業績や理念など、現状を把握する

まず経営理念において、MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)が明確になっていることを確認しましょう。
次に経営の現状を把握します。前期までの業績・決算や資産の状況・従業員の配置・システム化の状況など、経営資源の現状を明確にします。

経営理念と現状に隔たりはないか、理念も含めた方向性に問題がないかなど、自社の現状についてしっかり分析することが大切です。

流行や競合の状況などから、市場について分析する

消費者や既存顧客のニーズ、価値観は変化し、競合他社もさまざまな動きをしています。
自社の商品・サービスが、現在あるいは今後の市場においてどのような価値を持つか分析する必要があります。
3C分析やSWOT分析などの手法を用いて、市場についての目に見えるデータを取得しましょう。

また、中長期的なスパンで考えて、それらがどのように変化するか、予測することも大切です。

分析結果をまとめ上げる

前述のような自社の現状と、市場における消費者や競合他社の状況など、分析を行った結果をまとめます。
この際、自社の強みや立ち位置、市場が自社に求めるものは何かを明確にします。
そのため、自社と事業の存在意義を核として中長期的な方向性を定め、ビジョンを言語化する作業が重要です。

具体的な数値を含めた中期計画を策定する

中期経営計画の策定には、数値目標が必要です。
事業全体の売上や利益のほか、個々の事業計画に関わる経営上の数値などは、株主や銀行へのIR情報として示す必要があります。

また新事業や新しい試みなど、明確な数値で表現できない項目については、定性的な目標を言語化して明らかにします。

中期経営計画を立てるための手順

まとめ

中期経営計画で重要になるテーマを事例を交えて紹介しました。
テーマを策定するヒントとなるものとしては、以下が挙げられます。

●自社の経営理念や強み
●これまでの実績の総括から見えてくるもの
●市場のトレンド(SDGsやDX)
●投資家の期待を得られる取り組みや数値

自社の状況に合わせ、自然で確固たるテーマを策定することが重要です。

著者

タナベコンサルティング
取締役
ストラテジー&ドメインコンサルティング事業部

山本 剛史

大手ゼネコンにて設計・監督業務に従事後、当社に入社。事業戦略を事業ドメインから捉え、企業の固有技術から顧客を再設定してビジネスモデル革新を行うことを得意とするタナベ屈指のコンサルタント。成果にこだわるコンサルティング展開で、特に現場分散型の住宅・建築・物流事業、多店舗展開型の外食・小売事業で、数多くの生産性改善実績を持つ。

山本 剛史

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「日本には企業を救う仕事が必要だ」という
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