COLUMN

2023.07.11

中期経営計画における振り返りの重要性とポイント

貴社の中期経営計画、策定して終わりになっていませんか? せっかく策定した中期経営計画を形骸化させないためには、適切なタイミングでの「振り返り」が必要不可欠です。 今回のコラムではその重要性や実施のポイントなどを紹介します。

中期経営計画の振り返りはなぜ重要なのか

中期経営計画の振り返りはなぜ重要なのか

出所:タナベコンサルティングにて作成

中期経営計画を策定する目的には様々なものがありますが、最も重要なのは中期ビジョンの実現です。まずはこの計画とビジョンの関係性を整理してみましょう。

企業や経営者には、自身の使命として追求していることや「いつかこんな風になっていたい」と思う会社の姿などがありますが、多くの場合、これらを「企業理念」として明文化し社内外へ示しています。この理念は、企業が将来に渡って追い求め続ける壮大な夢であり、一般には何十年と変わることはありません。
ただし、それだけだと自分たちが理念に向かって進むことができているのかが、どうしても見えにくくなってしまいます。こうしたことから、理念を追求していく途中の段階において、どのくらいの水準にまで到達していたい、ということを定めたものが「ビジョン」です。3~5年後の到達点を定めたものが「中期ビジョン」、10年以上先の到達点を定めたものが「長期ビジョン」ということになります。

一方で、ビジョンはあくまで将来の一時点での目指す姿を定めたものですので、ビジョンがあっただけではその実現は容易ではないでしょう。そうではなく、中期ビジョンを実現するため、具体的にどのようなことを行っていくのかを詳細に組み上げたものが「中期経営計画」となるのです。従いまして、冒頭の話に戻りますが、中期経営計画はそもそもが中期ビジョンの実現のために作られるものということになります。「中期ビジョンの実現」イコール「中期経営計画の達成」となるのです。

この点を整理すると、中期経営計画の振り返りの意義が明らかになってきます。つまり、中期経営計画でうたわれている各年月の定量的または定性的な目標の達成度合いが、中期ビジョン実現の可否に直結するということです。然るべきタイミングで達成度合いを確認し、不足があれば対策を講じる。場合によっては計画期間中であっても計画自体を見直す。このような中期経営計画の振り返りを行うことが、中期ビジョンの実現に向けて重要になるのです。

中期経営計画の振り返りはなぜ重要なのか

中期経営計画の振り返りのポイント

中期経営計画の振り返りを行う際に、意識していただきたいいくつかのポイントを紹介します。

①計画の進捗を定量的に評価する

計画で定めた各種目標が、どの程度達成されているかを確認する際は、必ず定量的に評価を行います。 定量的というのは数字で見るということですから、例えば売上高や利益額、顧客数や売上単価など営業面の目標項目は評価がしやすいです。 加えて、業績や営業の領域以外の項目についても、やはり評価は定量的に行います。 例えば、総務・人事の領域であれば「有給休暇取得日数」や「資格保有者数」、開発の領域であれば「商品開発数」や「売上高に占める新商品の割合」といったように、いわゆる間接部門の活動であっても定量的な目標を設定することで、その進捗を評価することができます。 後述のとおり計画の進捗に応じて様々な対策を講じていく必要がありますが、そのためにまずは計画の進捗を正確に把握することが重要です。

②原因を明確にする

次に、進捗が良い場合も悪い場合も、そのような結果となった原因や背景を捉えることが求められます。 進捗が良い場合は「どんな工夫がうまくいったのか」「どのようなスキルが活用できたのか」といった内容を認識することで、ほかのメンバーの参考にしたり別の施策へ活用したりと様々なプラス要素を展開することができます。 逆に進捗が悪い場合は「うまくいかなかった点は何か」「どのように改善すべきか」といった着想を得ることで、同じ失敗を繰り返さずに状況を好転させる機会となります。

③環境変化を考慮する

計画に対して考えうる想定の範囲を超えた進捗(この場合プラスでもマイナスでも)となることが少なからずあります。 それは担当者の工夫などといった次元ではなく、企業を取り巻く環境の変化が顕在化した結果である可能性があります。 例えば「強力な競合が参入してきた」「極めて安価な代替品が誕生した」といったケースです。 この場合、その環境変化を考慮しなければ、進捗に対する評価を大きく誤る恐れがあります。 環境変化によって中期経営計画で策定した戦略がそもそも市場に合致しなくなったとしたら、それはもう現場の担当者の戦術でどうにかできるものではありません。 大きく計画を下回った進捗を額面通りに捉えてしまっては、会社も社員も不幸になってしまうでしょう。 経営者や幹部は、高いアンテナでこうした変化を察知することが求められます。

中期経営計画の振り返りのポイント

計画見直しのポイント

前述のとおり、中期経営計画の進捗を正確に捉え、それに応じた対策を講じることが必要ですが、計画自体の見直しを行うことも重要です。最後に、そのポイントをいくつか紹介します。

①進捗を考慮して見直す

中期経営計画には様々な目標が定められていますが、一般的に進捗は目標項目によって異なります。 進捗が良い項目・悪い項目が混在しているということです。進捗が悪い項目についてはその戦略や戦術を再設計し、中期経営計画を更新します。 加えて、さらに大きく舵を切り直す必要がある場合には、注力すべき領域へ人員を転換するなど経営資源の再配分も検討します。 部門単位で考えると納得感につながらないかもしれませんが、中期経営計画の目的である中期ビジョンの実現に向けては、すべての目標項目を達成することが会社と全社員の至上命題であることを理解する必要があります。

②環境変化を考慮して見直す

計画の振り返りなどで捉えた環境変化を中期経営計画の見直しとして反映させていきます。 現計画の前提条件から見直し、最終的な目標は変えずとも様々な戦略を再構築することが必要です。 また、環境変化が大きい場合には、中期経営計画のゴール、すなわち中期ビジョンの見直しを考えなければならない場合もあるでしょう。 いずれにしても、持ちうる手段を総動員して環境変化を見極めることが求められます。

今回のコラムでは、中期経営計画の振り返りの重要性とポイントについてお話をさせていただきました。 会社の羅針盤ともいえる中期経営計画を経営者と社員の中で生きたものとして機能させ、企業成長の実現につなげていただければ幸いです。

著者

タナベコンサルティング
ストラテジー&ドメインコンサルティング
チーフマネジャー

矢野 裕之

金融機関にて国際業務に従事し、管理体制構築(AML)やコストコントロール(為替対策)、進出支援など、攻守両輪の実務を経験後、当社に入社。現在は、グループ経営システム構築支援を中心に、成長する組織体制づくりを専門領域としている。また、海外駐在での観光ビジネス経験から、インバウンド人材育成研修も行っている。

矢野 裕之

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