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メンター制度は「いらない」と言われる理由|~失敗原因と形骸化を防ぐ対策~

メンター制度が「いらない」と言われる背景を整理し、若手定着と組織内対話を支える運用基盤の見直し方を解説します。

メンター制度はなぜ『いらない』と言われるのか。
OJT制度との違いを踏まえ、目的の曖昧さや役割混同、負担過多など形骸化の原因と、廃止前に見直すべき改善策、自社に合う若手支援の考え方を分かりやすく解説します。

まずメンター制度の目的を定め、形骸化しない運用を進めましょう

メンター制度とは?OJT制度との違い

メンター制度とは?OJT制度との違い

メンター制度とは、直属の上司や評価者とは異なる立場の先輩社員が、若手社員や新入社員に対して継続的な助言や相談支援を行う仕組みです。業務知識の伝達だけでなく、職場への適応、キャリアへの不安、人間関係の悩みなど、日常業務の中では表面化しにくい課題を受け止める役割を担います。

これに対して、OJT制度は実務を通じて仕事を教える育成手法です。業務の手順、必要な知識、仕事の進め方を現場で習得させることが主な目的であり、即戦力化に直結しやすい点が特徴です。
つまり、OJTが「仕事を覚えるための支援」であるのに対し、メンター制度は「安心して働き続けるための支援」と整理できます。

問題が起きやすいのは、この二つの役割が混同されたときです。例えば、メンターが業務指導や進捗管理まで担うと、面談は悩みを話す場ではなく業務確認の場になりやすくなります。若手社員にとっては、評価に近い緊張感が生まれ、本音を話しにくくなるでしょう。制度を機能させるには、OJT、上司面談、メンター制度がそれぞれ何を担うのかを最初に整理しておくことが欠かせません。

なぜ「メンター制度はいらない」という声が上がるのか?

なぜ「メンター制度はいらない」という声が上がるのか?

メンター制度に否定的な声が上がる背景には、制度の目的が曖昧なまま導入されていることがあります。「若手の定着率を上げたい」「相談しやすい職場にしたい」といった方向性はあっても、誰を対象に、何を、どこまで支援する制度なのかが明確でなければ、運用はすぐにぶれます。結果として、面談が雑談で終わる、逆に報告や指導の場になる、といった形骸化が起きやすくなります。

また、制度導入そのものが目的化してしまうことも少なくありません。メンター制度は、導入しただけで成果が出る仕組みではなく、定着、不安の軽減、職場適応、エンゲージメント向上といった中長期の変化を支えるものです。それにもかかわらず、目的や評価指標を定めないまま運用すると、「続けてはいるが効果が分からない」という印象が強まります。

さらに、現場の負担が考慮されていない場合も、「いらない」と言われる原因になります。中小企業では、一人ひとりの役割が広いため、通常業務に加えて面談、記録、日程調整まで担うことになると、メンター役の社員に負荷が集中しやすくなります。善意や責任感に依存した制度は長続きしにくく、現場から見れば「理想論だが回らない制度」と映ってしまいます。

メンター制度がうまく機能しない組織の共通点

メンター制度がうまく機能しない組織の共通点

メンター制度が形骸化しやすい組織には、いくつかの共通点があります。

1.制度の目的が明文化されていない
離職防止、職場適応、キャリア支援など、制度の狙いが曖昧だと、メンターもメンティも何をすべきか分からなくなります。目的が不明確な制度は、運用ルールも定まりにくく、効果検証も難しくなります。

2.メンターの選定基準が曖昧である
仕事ができる人、社歴が長い人が、必ずしも良いメンターになるとは限りません。相手の話を丁寧に聴けるか、安心感を与えられるか、守秘意識があるか、継続的に時間を取れるかといった視点が欠けると、制度の質にばらつきが出ます。

3.メンターを孤立させている
相談先やフォロー体制がなく、相性が合わない場合の見直しルールもないと、メンターは一人で抱え込みやすくなります。結果として、負担感が増し、面談も形式的になっていきます。

4.運用が重すぎる
詳細な報告書、過度な面談頻度、細かすぎるルールは、制度を丁寧にするどころか現場の負担を増やします。実態に合わない仕組みは、かえって制度離れを招きます。

制度を廃止する前に試すべき改善策

制度を廃止する前に試すべき改善策

メンター制度が思うように機能していない場合でも、すぐに廃止を判断する必要はありません。まず行うべきは、「制度の問題か」「運用の問題か」を切り分けて確認することです。

STEP1.制度の目的を再定義
若手定着なのか、早期離職の防止なのか、職場への適応支援なのか。解決したい経営課題と結びつけて目的を明確にすることで、対象者、面談テーマ、運用ルールが定めやすくなります。

STEP2.OJT、上司との1on1、メンター制度の役割分担を整理
OJTは業務習得、1on1は上司と部下の継続対話、メンター制度は評価から距離を置いた相談支援というように守備範囲を切り分けるだけでも、制度の混乱は大きく減ります。

STEP3.メンターの選定基準と事前共有を見直し
業務経験だけではなく、傾聴姿勢、守秘意識、育成意欲、時間的余力を選定基準に含めることが重要です。また、大掛かりな研修でなくても、制度の目的、面談で扱うテーマ、対応に迷ったときの相談先を事前に共有するだけで、運用の安定性は高まります。

STEP4.現場の負担を軽くする運用へ見直し
例えば、面談頻度を無理のない範囲に設定する、記録は簡潔なメモにとどめる、相性に問題があれば変更できるようにする、人事や管理職が必要に応じてフォローするなど、「続けられる設計」に変えることが重要です。

さいごに

メンター制度の必要可否について問うべきポイントは、制度そのものではなく若手社員が安心して相談でき、職場で孤立せず、成長を実感できる環境が整っているかどうかです。制度が形だけになっているのであれば、廃止を急ぐのではなく、まずは目的、役割、負担の三つを見直すことが重要です。自社に合った形に再設計することで、メンター制度は人材定着と組織活性化を支える有効な仕組みとなります。制度を廃止する前に、目的・役割・負担を見直し、自社に合う形へ再設計していきましょう。

この課題を解決したコンサルタント

春藤 育

タナベコンサルティング
HR&人材育成
チーフ

春藤 育

経営コンサルティング会社にて、主に菓子/美容業界のブランド開発や業績改善にアシスタントとして携わり、セミナーや新入社員教育等も経験する。当社に入社後は、「お客様一人ひとりに徹底して寄り添う」を信条に、主にHR領域におけるチームコンサルティングの支援をはじめ、セミナー運営、顧客への訪問等、幅広くコンサルタントを支援している。

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