人事コラム
人事制度

中堅・中小企業の役員評価と報酬制度

自社の役員は役員の仕事をしてますか?仕事内容に見合った報酬を与えていますか?

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中堅・中小企業の役員評価と報酬制度

パーパス・ビジョン実現に向けた役員の役割・責任を明確にし、実行度合いを基軸に置いた報酬制度を設計する

名ばかり役員がなぜ多いのか

名ばかり役員がなぜ多いのか

はじめに、タナベコンサルティングでは、役員を「未来の業績に責任を持つ人」と定義している。加えて、1958年に開校した重役教室(現・プロ役員セミナー)において、重役とは少なくとも業務の50%を「方針の決定」と「計画を人に理解してもらうこと」と「他の人の意見を調整すること」に費やす人であるとお伝えしている。

一方、コンサルティング現場でよく耳にする役員の課題は、大きく3つある。
1. 役員が役員の仕事をしていない(何をしているか、何をすればよいかわからない)
2. 自事業・自部門にしか興味がなく、全社最適の視点を持っていない
3. 業績・成果責任の所在が曖昧(責任が経営者または部門長になるケース)

以上のことを踏まえ、現状を一言で表現すると「役員としてのあるべき姿が見えておらず、リーダーシップが発揮できていない」そして「職務権限などの規程類では明文化されているものの、具体的な役割や発揮能力まで落とし込みが図られていない」ことが要因となっている。
従って、役員のやるべきことを可視化し、役割・責任を全うする真の役員を輩出する仕組みとして、今回は役員評価・報酬制度を紹介する。

役員評価・報酬制度をつくる3つのステップ

役員評価・報酬制度をつくる3つのステップ

役員評価・報酬制度をつくる上で、3つのステップを踏み進めていく。
進め方は以下の通り。



STEP1 パーパス・ビジョンと経営トップの思想を踏まえ、全体構想を設計する

自社の現状を踏まえ、役員に関する全体方針と骨子を策定する。こちらを策定する上では経営トップを巻き込むのが必須条件にある。
経営トップへ確認すべきポイントは以下の5つである。

(1)自社の中長期ビジョン・戦略は?
特に必須なのは組織戦略である。役員を構成する上で、責任範囲・職務範囲を明確にしていかなければならないため、未来の組織と配置方針を確認しておく必要がある。

(2)自社の求められる役員像は?
パーパス・ビジョンを具現化させているモデル人材や思考・行動・発揮能力を具体的に確認する。

(3)指名方針や選定基準は?
指名するにあたっての目的や考え方を整理する。そのうえで、選定する上での基準を確認する。
例えば、業績・成果を重んじるのか、また自社内における推進・業務経験としているのかである。

(4)役員の評価方法は?
多くは管轄事業・部門の業績・成果を鑑みて評価・報酬を行っている企業が多い中、本来求められるビジョン・戦略推進や全社的なリーダーシップの発揮に関して評価されるケースが少ない。
何を基準に評価をすべきなのかを模索する。

(5)役員育成の方針は?
冒頭でもお伝えしたとおり、中堅・中小企業における役員はあるべき姿と比較的乖離している。あるべき役員像へと成長させるための育成方針を確認する。
※その他、運営体制や選解任基準、報酬ルール等、規程関連に示されているルールを確認し、課題を整理する。



STEP2 役員評価を設計する

STEP1における経営トップの考えを踏まえ、具体的に役員評価として落とし込みを図っていく。
手順は以下の通りである。

(1)役員フレームワークへ各役位の共通要件や事業・部門別の要件を整理し、全体像をまとめる。
(2)整理された役員フレームワークに従い、決裁基準ならびに職務権限の見直しを同時に図る。
(3)上記内容を踏まえ、切り口などフレームは各社の思想に従い評価項目を設計する。下記、参考までに一例をお示しする。

① 業績・成果評価 全社業績や中期経営計画の推進度合い等、KGI・KPIに関する項目
② 行動・能力評価 役員に求められる能力の発揮状況
③ 情意評価 理念・ミッションの体現度合い

(4)評価項目を整理した後に、評価基準、ウエイトや評語等の設定を行い、評価表を完成させる。
(5)その他、評価運用ルールを整理する。



STEP3 役員報酬制度を設計する

役員評価と連動させる前に押さえなければならないのは、

1. 市場価値・業界価値の観点で役員報酬の平均値比較する(現状)
2. 自社の中長期ビジョンにおける原資(役員報酬)(未来)

の双方を踏まることが重要である。
どれだけ役員報酬として捻出できるか、ポテンシャルを把握するところからスタートする。
次に、報酬体系を整理する。

1. 基本年俸 収益構造トレンドより定める(従業員の給与や市場・業界価値を鑑みて総合的に判断)
2. 変動報酬 役員評価を考慮して決定する(評価結果を鑑みて洗い替えなのか昇給テーブルをつくるのかは各社の意向を踏まえ判断)
3. 成果報酬 定められた全社の営業利益もしくは経常利益からの還元(その達成度合いは各社にて判断)
ポイントは役員評価を紐づけることにより、一貫性を持たせ、周囲への納得感を示せるのに加え、役員自身のモチベーション喚起も期待できる。

簡易ではあるが、基本的な設計の進め方として解説させていただいた。

役員評価・報酬の運用におけるポイント

役員評価・報酬の運用におけるポイント

3つのステップを踏んだのちに運用を進めていくこととなるが、本来の目的は、求める役員を輩出していくことである。
そのためには、評価・報酬制度の運用のみにならず、役員をどのような手段で育成していくのかも同時に検討を進めていかなければならない。
それは、単に研修を受講させるのではなく、一丁目一番地に設定した役員フレームワークに基づき、育成を進めていくことが望ましい。
また、役員トレーニングにおいては別の機会で解説する。

最後になるが、役員が役員の仕事をする。そのためには、まずは社としての目指す姿やモチベーション喚起に繋がる報酬など基準を明確にすることからはじめ、目指す役員を輩出し自社の企業価値向上へと繋げていただきたい。

この課題を解決したコンサルタント

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タナベコンサルティンググループは「日本には企業を救う仕事が必要だ」という志を掲げた1957年の創業以来
66年間で大企業から中堅企業まで約200業種、17,000社以上に経営コンサルティングを実施してまいりました。
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