人事コラム
2026年の法規制ポイントと企業の対応について
改正論点を先読みし、就業規則と人事制度の見直し要点を整理
2026年6月時点で確認できる法令と公表資料を踏まえ、労働基準法見直しの論点、総務・人事への影響、就業規則や人事制度の見直しポイントを整理します。先読み対応が働きやすさと組織の求心力を高める考え方も解説します。
2026年改正の概要と現時点
本稿は、2026年6月時点で確認できる法令と公表資料を前提に整理します。
まず押さえたいのは、労働基準法の根幹である労働時間と休日の原則です。現行法では、法定労働時間は1日8時間・1週40時間、休日は毎週少なくとも1回、または4週間を通じて4日以上とされています。そのうえで、2025年1月に公表された研究会報告書では、勤務間インターバル(終業から次の始業までの休息時間)の強化、連続勤務日数の見直し、法定休日の特定、年次有給休暇の賃金算定の整理、副業・兼業時の割増賃金計算の見直しなどが論点として示されました。
ただし、2026年6月時点では、包括的な改正内容と一律の施行日が確定したと整理できる段階ではありません。また、勤務間インターバルのように、現時点では関連法上の努力義務として位置付けられている事項もあります。企業実務では、現行法を正確に守ることに加え、見直しの方向性が就業規則、シフト、勤怠管理、給与計算にどう影響するかを先に点検する姿勢が重要です。
総務・人事業務への影響
総務・人事部門への影響は、法改正の条文確認にとどまりません。
影響が大きいのは、勤務実績の把握、休日の設計、割増賃金の計算、管理職の運用、現場への周知です。例えば、法定休日と所定休日の区分が曖昧なままでは、休日労働手当の計算根拠がぶれやすくなります。勤務間インターバルや連続勤務の見直しが進めば、シフト作成や応援配置の考え方も変わります。副業・兼業を認める企業では、申告内容の確認方法や健康確保の運用も整理が必要です。
さらに、デジタルでの連絡が常態化している職場では、勤務時間外の指示や返信期待が実労働時間の把握を難しくします。総務・人事に求められるのは、法令解釈を読む力だけではなく、現場の運用実態を数値と事実で捉え、制度と実務のずれを早く見つける機能です。改正対応の成否は、条文理解だけでなく、日々の勤務管理をどこまで再現性高く運用できるかにも左右されます。
就業規則見直しの要点
対応の中心になるのが、就業規則と関連規程の見直しです。
見直し対象は休日規定だけではありません。法定休日をどのように特定するか、振替休日や代休をどう扱うか、始業終業時刻の変更手続き、深夜残業が発生した場合の申請方法、時間外連絡の取り扱い、副業・兼業の申告方法など、実務で迷いやすい場面を条文に落とし込む必要があります。年次有給休暇の賃金算定や時間単位取得の運用を見直す場合は、賃金規程や申請様式との整合も欠かせません。ここで重要なのは、法改正への追随だけを目的にしないことです。
あいまいな表現を残したまま条文を足すと、管理職ごとの運用差が広がり、むしろトラブルの火種になります。人事部門は、誰が判断し、どの記録を残し、例外時に何を承認するのかまで明確にし、就業規則、労使協定、勤怠ルール、給与計算ルールを一つの体系として整える必要があります。
人事制度と業務の見直し
法対応を確実にするには、人事制度(等級・評価・報酬・配置)や人事部門の業務設計も見直し対象になります。たとえば、長時間労働を前提に成果を評価する運用が残っていれば、勤務間インターバルや連続勤務の抑制と整合しません。管理職評価に、部下の労働時間管理、休暇取得、業務平準化への取り組みをどう反映するかは重要な論点です。深夜や休日対応が避けにくい職場では、役割分担、応援体制、代替要員の確保、引き継ぎ手順を制度面と業務面の両方から整える必要があります。
また、人事部門自身の業務も、法改正のたびに手作業で集計する形では持続しません。勤怠、シフト、給与、申請、承認の流れを点検し、どのデータを誰が確認し、どこでエラーを止めるかを決めることが実務上の要です。法令対応を機に、人事制度を健康確保と生産性の両立という観点で再設計できれば、単なる守りの改定ではなく、組織運営の質を高める見直しになります。
先読み対応で魅力ある会社へ
各種法改正に関するスムーズな移行には、確定してから動くのではなく、先読み型の準備が有効です。
- 第1に、現行ルールと実態の差を洗い出します。
- 第2に、改正論点ごとに就業規則、シフト、給与、申請、教育への影響を整理します。
- 第3に、優先度の高い項目から試行し、例外処理まで含めて運用を固めます。
- 第4に、従業員と管理職へ目的とルールを説明し、定着状況を点検します。
この一連の対応は、単なる法令順守にとどまりません。エンゲージメントや企業の求心力は、休息の確保、公平な運用、説明の分かりやすさによって支えられます。情報にすぐアクセスできる時代では、制度の曖昧さや運用差も伝わりやすくなります。だからこそ、法改正を受け身で待つのではなく、先に働く環境を整える姿勢が、魅力ある会社づくりの土台になります。
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