営業生産性向上のための重要な指標とは?

コラム 2024.06.12
マーケティングDX SFA企業成長売上拡大業務効率
営業生産性向上のための重要な指標とは?
目次

営業生産性とは

昨今、業種・職種を問わず様々な企業で、経営課題に多く挙がるのが採用や離職率といった「人」に関するものです。中堅中小企業において、その問題は特に顕著であり、「仕事はあるのに人が足りない」「人が増えれば会社の規模はもっと大きくなるのに」などといった声は、多くの経営者から聞こえてきます。

この課題に対し、打てる手は「採用を増やす」、「社員に頑張ってもらう」の二つとなりますが、採用が厳しくなっている中で、すぐに即戦力を採ることはなかなか難しいのが現状です。それならば今いる社員に頑張ってもらうということになるのですが、こちらもそうはいきません。「社員に頑張ってもらう」には、社員の生産性・効率性をあげるという手段があります。倍の時間や量を働いてもらうのではなく、質や効率を高め、半分の時間、もしくは同じ時間でも2倍業務を進めるようにします。

総務や生産現場においては業務の効率化を耳にしますが、営業現場においてはまだまだ少ないのが現状です。あらゆるITツールがある中で、未だに営業個人に任せっきりの意味のない飛び込み営業や無駄なリスト作成による電話でのアポ取りなど、昭和の時代のままのスタイルで進化をしていない企業も多く存在します。SNSが普及し情報の取得が容易になった今では、最先端のツールやデータ活用を行うことで営業活動を効率的に行っている企業などの話を簡単に聞くことができる一方、所属している自社のレベルとの差に愕然とし、失望することでモチベーションの低下につながることは容易に想像できます。さらに最悪の場合、優秀な若手社員の退職に繋がってしまうこともあります。営業パーソンの高齢化による退職も今後必ず起こる課題の一つです。案件情報、クライアント情報の引継ぎや営業技術の承継など時間があれば丁寧なフォローも可能となりますが、体調不良や家族の問題など急な事態となるケースがほとんどです。

人的資本の減少や労働時間の制約、ワークライフバランスなど経営者や部門責任者を悩ませる人に関する課題は多くあります。限られた営業パーソンによる限られた時間の中でより大きな成果を上げること、すなわち営業における生産性の向上を図ることこそが営業における最も重要な戦略の一つとなるのです。

営業生産性向上の為の指標とその重要性

営業の生産性を上げるといっても、むやみやたらに改善をしろ、効率を上げろといっても目立った成果は出ず、むしろモチベーションの低下につながることにもなりかねません。マネジメント側においても何を管理すればよいのか、部下に何を指導すればよいのか分からず、結局は目先の案件に集中してしまい、ほったらかしとなってしまうケースも多くあります。

そうならないために、まずは営業の生産性向上に必要な目標となる指標、手段を具体的に設定することが必要となります。例えば指標においては「新規商談からの見積り提出率の向上」などが挙げられ、手段においては「営業パーソンのヒアリング能力の向上」、「初回訪問時の提案資料・紹介資料の改良」といったものから「SFAツールの活用による見込み顧客のリストアップ」といったものまで、さまざまに考えられます。まずは、すべて洗い出すことから始め、その中で優先順位を付けたうえで実行に移していくのが良いでしょう。さらにその手段、打った手に対して間違いではなかったか、どのくらい成果が出たかを知るために、KPI目標も定めましょう。指標、手段、KPIをあらかじめ設定し、行動に落とし込み、結果を分析というPDCAサイクルを回していくことが重要となります。

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図1:目標・手段・KPIの具体例(※コンサルティング事例を基に筆者作成)

図1:目標・手段・KPIの具体例(※コンサルティング事例を基に筆者作成)

営業生産性向上のための重要な指標一覧

業種によってさまざまな指標がありますが、ここではDXツールを用いて改善することが可能となる代表的な指標をまとめました。

図1:目標・手段・KPIの具体例(※コンサルティング事例を基に筆者作成)
図2:営業生産性向上の為に必要な重要指標(※コンサルティング事例を基に筆者作成)

もちろんこれらの指標を策定することがゴールではなく、指標をクリアすることで何を向上させたいのか、どうすれば指標の数値、KPIが向上し最終的な成果が出るのかが重要となります。一つの指標をクリアするだけでは効果は出にくいです。例えば、見積提出率が150%に増えているものの、顧客訪問前の準備時間が200%増えているのでは生産性向上となっているとは言えないでしょう。売上向上、営業パーソンの残業時間減少など様々な最終ゴールがある中で自社の現状の課題をクリアする指標を設定しましょう。

指標を活用した営業生産性向上の事例

最後に営業の生産性向上に向けた取り組みを、実際の事例を含めながらご紹介します。
A社は社員50名程で、生活雑貨を製造、輸入、販売している会社です。営業部隊は販売先の業種によって3つに分かれており(代理店、スーパー百貨店、その他)合計10名程となっております。

タナベコンサルティングと社長を含めたプロジェクトメンバーで、

(1)現状の営業における課題の抽出
(2)生産性向上に向けた改善具体策とアクションプランの決定
(3)各施策の実行フォロー

の3段階を行いました。

(1)現状の営業における課題の抽出

A社における大きな課題の一つが、ベテラン営業の高齢化に伴う退職であり、早急なチーム編成の見直しと引継ぎが必要でした。退社まで、残り数か月となっても、目先の業務に追われ手が打てていない状況でした。
また、顧客数の減少も課題でした。ライバルの台頭、顧客の廃業など様々な要因がある中で、毎年少しずつ顧客先が減少していたものの、対策を打てていませんでした。

(2)生産性向上に向けた改善具体策とアクションプランの決定

まず、新たな若手リーダーを抜擢し、チームの再編を行いました。引継ぎやマネジメントの効率化を図るために、SFAツールの導入を決定、紙ベースの日報の廃止、名刺の個人管理の禁止など社内ルールの変更も行いました。個人での情報(案件・顧客)管理を禁止し会社の情報として管理、共有することにしたのです。
顧客数の減少に対してはSFAツールでの分析によって、休眠顧客の掘り起こし、新規見込み先のリードリスト作成とアプローチを行うことで、効率的な新規開拓強化を図りました。

(3)各施策の実行フォロー

SFAツールの導入により、各リーダーが行っていたエクセルでの月次での会議報告資料作成をクラウド上で時間をかけず作成・管理することが可能となりました。各営業の案件の進捗状況の確認にも時間がかかり、当月の数字を抑えることで精一杯でしたが、今では1年先までの案件情報を見える化し、先行でのマネジメントが可能となりました。また社長を始めとする上司からのアドバイスやコミュニケーションも活発になったことで受注率のアップに繋がり、多くの成果が出ています。

営業個人では横のチームが、今誰にどの商品を売っているのかが分かっていませんでしたが、SFAツールの導入により横の動きが分かるようになり、提案の幅が増えました。若手営業パーソンからはカタログや提案資料など現営業ツールの見直し、バージョンアップなど今までは出てこなかった要望や意見が出るようになり、営業部隊の活性化にも繋がりました。

新規開拓においてはSFAツールによって「過去3年間の未受注顧客リスト」、「初回訪問から接触の無い顧客リスト」など細かく条件を付与したリストでの地上戦とメルマガの配信と分析、HPの改修など空中戦も取り混ぜながら新規開拓を続けており、成果が出ています。

上記の課題は、人が営業活動をしている限り、どの企業でも直面することであり、避けて通ることはできません。また、急な退職や休職により上記のような課題がいつ現れるか予想することは不可能です。営業活動においては人頼みとなってしまっている企業も多く存在しているため、中長期のスパンで自社の営業体制を見直し、ウィークポイントを強化し続けることが必要です。そのうえで営業における様々なDXツールも活用しながら営業の生産性向上を図っていきましょう。

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AUTHOR著者
デジタルコンサルティング事業部
チーフコンサルタント
波田 恵一朗

経営課題や戦略に基づき、トレンドを掴み、リアル・デジタル問わず様々なマーケティング手法を駆使し、ブランディング・プロモーション戦略に携わる。「業績アップに貢献し、同時に人も成長出来るプロモーション」を信条にリアル・WEBを問わず、本当に必要なプロモーションをクライアントと共に実践している。

波田 恵一朗
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