営業生産性の向上は、現代の競争が激しいビジネス環境において、企業が持続可能な成功を収めるための鍵です。では、営業生産性とは具体的に何を指すのでしょうか?また、生産性向上を実現させるためには、営業担当者がどのような手法を実践すべきでしょうか?本記事ではそれを見ていきましょう。
1. 営業生産性とは?
総務省の「令和3年版情報通信白書」によると、生産性を定量的に表す指標として「労働生産性」があり、就業者1人あたりあるいは就業1時間あたりの経済的な成果(=収益)として計算されると、されています。
(引用元:総務省「令和3年版情報通信白書」)
その中でも「営業」に特化した「生産性」が「営業生産性」です。投入されるリソース(労力・時間・費用など)に対して実現できる成果(売上・受注・アポ取得など)を指し示しています。
日本の労働生産性は低い状況が続いており、公益財団法人日本生産本部の発表した「労働生産性の国際比較 2022」によると、OECD(経済協力開発機構)データでも、OECD 加盟38ヵ国中27位、主要7か国(G7)の中においても最下位が続いている結果となっています。同時に、日本が少子高齢社会に向かっていることを鑑みると、労働力が減少する中で働き方改革を推進し、生産性を向上させることが、多くの日本企業にとって喫緊の課題となっています。
(引用元:公益財団法人日本生産本部「労働生産性の国際比較 2022」)
2. 営業生産性を測る方法
営業生産性の指標は一つではなく複数ありますが、営業活動にかかる費用や時間に対して、実際に達成された業績や売上を考慮して評価され、主に以下の計算式で求められます。
営業生産性=売り上げ÷総労働時間
要するに、売り上げを伸ばしたり、労働時間や費用を削減することができれば、営業生産性を向上させることができるのです。また、営業生産性は、営業効率と営業稼働率に分けることができます。
・営業効率:与えられた資源や労力を最大限に活用し、望ましい結果や成果を達成する効率性。
・営業稼働率:営業担当者の総労働時間のうち、実際に営業のためにかけた時間の割合。効率と稼働率、それぞれを上げていくことが、営業生産性の向上につながります。
3. 営業生産性の低い要因
日本の「営業生産性」が低い理由は多岐にわたりますが、一般的に指摘される大きな要素として以下3点が挙げられます。
(1)長時間労働文化
まず、「長時間労働=勤勉」と評価される風潮が未だ根強く残っていることが挙げられます。長時間働くことで、効率が低下し、生産性向上の妨げになっています。また、ワークライフバランスの不均衡が営業チーム全体のモチベーションやクリエイティビティにも影響を与えています。
(2)デジタル化の遅れ
企業におけるデジタル化の遅れも営業生産性の低い原因となっています。「長らく使用されてきた既存のレガシーシステムがあり、アップグレードや刷新が難しい」、「デジタル化を進めたいが、その分野の専門的な知識やスキルを持つ人材がいない」、「新しい技術の導入に対する合意形成や承認が遅れている」等の要因が組み合わさり、技術の導入が遅れる一因となっています。その結果、自動化やデジタルツールの活用不足へとつながり、業務の簡素化や効率改善の阻害要因となっています。
(3)顧客管理や情報共有の不透明性
顧客管理や情報共有が社内できちんと行えていないと、案件が属人化してしまうこととなり、その結果提案のタイミングを逃したり、営業における各プロセスを一人で抱え込んでしまったりということにつながります。これらの問題が解決されないままでいると、顧客との信頼関係の構築や維持が難しくなり、営業活動全体の生産性が低下する可能性が高まっていきます。
4. 営業生産性を向上させるための手法・ツール
では営業生産性の低い要因を解決するためにはどのようにすれば良いでしょうか。ここでは、先述したデジタル化の遅れと顧客管理や情報共有の不透明性にフォーカスし、「デジタルを活用した生産性向上のための手法」をご説明します。
(1)営業生産性向上
営業生産性を向上させるための手法には、主に①SFAシステム(営業支援システム)の導入・活用、②CRMシステム(顧客管理システム)の導入・活用、③自動化ツールの導入
の3点があります。詳細は以下の通りです。
①SFAシステム(営業支援システム)の導入・活用
営業効率の向上のための手法として、まずSFA(Sales Force Automation、セールスフォースオートメーション)システムが挙げられます。SFAシステムは、営業活動の自動化を支援するためのソフトウェアやツールのことを指します。これは、主に営業担当者やセールスチームが顧客との対話や取引を効率的に管理し、セールスプロセスを最適化するために使用されます。
■SFAシステムの主な機能
・案件管理(商談管理)
・情報共有
・予算管理・受注管理
②CRMシステム(顧客管理システム)の導入・活用
CRM(Customer Relationship Management)システムとは、文字通り顧客関連の情報を管理する(企業が顧客との関係を効果的に構築し、管理する)ためのソフトウェアやツールの総称です。顧客データの収集・整理・分析を行い、営業やマーケティング、カスタマーサービスなどのビジネスプロセスを最適化するために活用します。顧客の情報や、商談の内容・ステータス、マーケティング情報等を入力することで、顧客の行動を理解し、顧客との全体的な関係を把握することができます。これにより、顧客のニーズや要望にカスタマイズしたサービスを効果的に提供・提案、売上強化へとつなげることが可能となり、結果的に営業効率の向上へとつながります。
■CRMシステムの主な機能
・顧客情報管理
・顧客関係管理
・マーケティング支援・管理
③自動化ツールの導入
営業生産性向上には、メール送付や情報共有など、営業業務以外の営業担当者の業務を積極的に自動化することも効果的です。自動化ツールには以下のようなものがあります。
・電子メール自動化ツール
RPA(Robotic Process Automation)やマーケティングオートメーション(Marketing Automation)ツール(例: Mailchimp、Marketo、Sendinblue)を使用して、自動的に顧客のセグメンテーションやパーソナライズされたメールキャンペーンを作成し、送信することが可能となります。
・コラボレーションツール
コラボレーションツールとは、チーム内での情報共有やコミュニケーションを効率よく行うためのツールです。具体的には、SlackやMicrosoft Teamsなどのツールがあり、チーム内でのコミュニケーションを強化し、プロジェクトやタスクの進捗をリアルタイムで共有することができます。
・タスク管理ツール
タスク管理ツールとは名前の通り、個人やチームのタスクを管理するツールのことです。営業活動やプロジェクトの進捗を可視化し、タスクの優先順位付けや担当者の割り当てを効果的に行うのに役立ちます。
5. まとめ
営業生産性の向上は、現代の競争激化する市場において企業が生き残り、成功するために不可欠な課題となっています。労働生産性の向上が国家的な課題となる中、各企業はデジタル化の促進や効果的なツールの導入、チーム協力の促進などを通じて、営業プロセスを最適化していく必要があります。成功事例や他社の取り組みを参考にしながら、柔軟かつ効果的なアプローチを取り入れ、持続可能な営業生産性の向上を実現していくことが重要です。
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