1.企業におけるAIへの対応
AI技術は業務の効率化や新たなビジネスモデルの創出に大きな可能性を秘めています。
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https://www.ipa.go.jp/digital/chousa/dx-trend/eid2eo0000002cs5-att/dx-trend-2024.pdf
しかし、IPAの「DX動向」によると、生成AIなどのAI関連技術が発達・普及したことに伴い、AI人材が不足していることが明らかになっています。上記のAIの導入課題におけるアンケートを見ると、AIの導入課題として「AI人材の不足」と回答した企業が47%、「自社内でAIへの理解が不足している」と回答した企業が62.4%と非常に多い結果となっています。また、2022年の回答と比べると2023年の回答の方が上回っていることもわかります。この状況を「まだ大丈夫」と考えるか、「チャンス」と捉えてAI活用に取り組むかは、経営者の強い意思にかかっています。
ただ、AIを効果的に活用するためには、AIの知識とビジネスの知識を兼ね備えた人材育成が不可欠です。ここでは、AIに関する人材育成の具体的なアプローチと実践的な手法について紹介します。
2.AI人材に必要なスキル
AI人材に必要なスキルは大きく4つに分類されます。
① プログラミングスキル
② データサイエンススキル
③ ディープラーニングスキル
④ AI企画立案スキルおよび推進スキル
この中でも最も重要なのは、④AI企画立案スキルおよび推進スキルです。①~③のスキルも十分に必要なスキルではありますが、これらは外部の力を頼れば解決することができます。しかし、AI企画立案スキルおよび推進スキルについては、自社のビジネスモデルや業務内容を熟知している人材が身に付ける必要があります。いわゆるAIプランナーと呼ばれる人材が企業には必要であります。AIプランナーとは、AI(人工知能)の知識や技術を活用して、企業のビジネス課題を解決するための企画や立案、マネジメントを行う人材のことを指します。もちろんAIの仕組みや基本的な概念などを熟知している必要がありますが、重要なのは企業のビジネス課題を解決するための企画や立案をすることができるスキルを持ち合わせているかどうかです。このスキルを持つ人材無しに、企業がAIを活用して成長する未来はありません。
ここからはAI企画立案スキル及び推進スキルを身に付けるための育成手法について紹介します。
3.AI人材育成の具体的なアプローチ
次にAIが人材育成におけるアプローチ手法についてはいくつかあります。ここでは主流となっている3つのアプローチ手法について紹介します。
①外部講師による実践的な研修
1つ目は外部講師による実践的な研修です。AI人材を育成したいとなっても、なかなか自社のリソース、ノウハウでは研修を実施することができない企業が多いことだと思います。まずは外部講師を招いてノウハウを学ぶことをお勧めします。
研修の一例をご紹介します。
【研修1回目】
テーマ:AIを体験!世の中のAIを知る!
講義:AIの仕組みを知る
AIがどのようにして「学び」や「予測」を行うのかを理解していただきます。
専門知識がない方でも、AIの原理をイメージできる内容を目指します。
GW:AIツール体験・自社で活用できるAIを探る!
実際にAIツールを体験することで、AIの活用イメージを具体化していただきます。一般的なAIツールを操作しながらグループワークを通じて、AI導入の可能性や課題を実感していただきます。
【研修2回目】
テーマ:AIで業務改善!?要件定義と企画
講義:AI×業務改善手法
AIを業務改善に活用するための基本手法を解説します。業務プロセスの現状分析、課題の特定、AI導入による解決策の設計といった流れを整理し、AI活用の全体像を把握していただきます。
GW:AIを活用した業務改善手法
実際の業務課題を想定したケーススタディを行います。課題を分析し、原因の特定からソリューションの立案までを模擬的に実践し、現場でのAI活用の可能性を深く考える機会を提供します。
【研修3回目】
テーマ:AIを活用して事業立案してみよう!
講義:AI×新規事業立案手法
AIを活用した新規事業立案の基本手法を解説します。市場分析、顧客ニーズの把握、AI技術の選定、事業モデルの設計といったプロセスを整理し、事業構築の流れを具体的に学びます。
GW:AI×ビジネスモデル~事業立案
AIを活用した新規事業の立案を体験するケーススタディとなります。事前に与えられたテーマや市場データをもとに、AIを活用したビジネスモデルを設計。事業計画のプレゼンテーションを通じて、実践的な視点と企画力を養います。
上記の研修は計3回に分かれており、AIの基本講座のみならずケーススタディを通した実践的な研修になります。ポイントは実践的な研修です。座学だけではAI企画立案スキルは身につきません。具体的な手法を知ることで実行に移すことのできるスキルを養う必要があります。
②社内ハッカソン
2つ目は社内ハッカソンによるAI人材育成です。社内ハッカソンはAI企画立案スキルをつけるのに非常に有効な施策です。ただし、AIの基礎知識が前提となりますので、前段の研修など基礎知識を身に付けている人の参加が望ましいでしょう。
まずは目的の明確化から入りますが、具体的なテーマを設定しましょう。例えば顧客体験の向上、業務効率化、新製品の開発など、ビジネスに直結する課題があります。
次にチーム編成です。異なるバックグラウンドを持つメンバーでチーム編成を行うと、あらゆる視点からアイディアが生まれます。また、ある程度定型のアプローチ方法を伝授することが重要です。
各テーマに基づき、問題定義FMTやデータ戦略体系図、AI活用方針書などを事前に準備しておくと、参加者が躓くことなく実施できます。社内ハッカソンは、AIプランナーとしてのスキルを実践的に育成するための優れた機会です。参加者は、実際のビジネス課題に取り組むことで、理論を実践に結びつけ、チームでの協力を通じて多様な視点を学ぶことができます。これにより、AIをビジネスに活かすための企画立案スキルを効果的に向上させることができます。
③プロジェクトベースの育成
3つ目がプロジェクトベースでの育成です。こちらはすでにAI活用について社内でプロジェクトが走っている企業に有効的です。こちらもAIの基礎知識を身に付けていることが前提となりますが、実際にプロジェクトに参画させることで研修では味わえない、泥臭いAI企画立案に携わることができ、AI企画立案スキルが身につきます。
ただし、プロジェクトベースの学習で重要なのは参加者のサポートです。メンターをつけるとよいでしょう。なかなか実際のAIプロダクトに参加することのない参加者は、周りに追いつけず挫折してしまうケースが多くあります。参加者が相談できる環境を整えることが重要になります。また、ある程度期間で経験を積んでからリーダーやマネージャーに抜擢をすることでプロジェクトマネジメントのスキルもつき、将来のCTO候補にもなりうる可能性があります。プロジェクトベースでの育成は実現難易度は高いものの、育成における効果は絶大なものになります。実際にプロジェクトが走っている企業はプロジェクトベースでの育成をお勧めします。
4.トップが考えるべきAI戦略(AI活用ビジョンと戦略の構築)
これまでAI人材育成のアプローチについて紹介しました。特にAI企画立案スキルを身に付けた人材の育成についてです。ただ、AI企画立案スキルをつけるにはトップがAIをどのように活用して企業成長を図るのか、明確なビジョンと戦略を示す必要があります。これにより、社員がAI人材の育成の重要性を理解して、積極的にAIにおける事業に取り組みことができるのです。重要なのはトップの意思であり、覚悟です。
戦略なきDXに成功はありません。まずはDX・AIに関するビジョンを策定して、それを実現するための仕組みを作る一つの手段としてAI人材の育成に一歩踏み出してみてはいかがでしょうか。

・データ利活用で、「勘」に頼らないダッシュボード経営へ
・DXレベル表でわが社の「現在」と「目指す姿」を明確に など
