企業に必要なデータサイエンスとは

コラム 2024.08.19
マネジメントDX 戦略・計画策定 データ活用企業成長教育
企業に必要なデータサイエンスとは
目次

1.データサイエンティストに必要なスキル

データサイエンティスト協会が提唱しているデータサイエンティストに必要なスキルは大きく3つあります。情報処理、人工知能、統計学などの情報科学計の知恵を理解し使う力であるデータサイエンス力、データサイエンスを意味のある形に使えるように実装・運用できるようにする力であるデータエンジニアリング力、そして、課題背景を理解した上でビジネス課題を整理し解決する力であるビジネス力です。しかし、このような能力をオールマイティで兼ね備えている人材はほぼ存在しません。

令和4年度ものづくり基盤技術の振興
出典:データサイエンティスト協会

この3つのスキルはどれも重要ですが、企業が必要とするデータサイエンティストにとって最も重要な力はビジネス力であると考えます。もちろん、PythonやRを使用して、高度な分析をするにはデータサイエンス力、データエンジニアリング力は必要です。ただ、結局高度な分析をして結果が出たとしても、それは分析結果にとどまります。その分析結果をどのように企業に有用な施策として落とし込むのか、どのように活用していくのかが重要な論点となります。今回のコラムでは分析結果をビジネスに活かすビジネス力について説明します。

2.ビジネス力の必要性とデータ活用失敗例

前段で記載した通り、企業に必要なデータサイエンティストの能力はビジネス力です。では、ビジネス力が欠けているデータサイエンティストはどのような失敗に陥るのかを説明します。

(1)目的のないデータ分析

よくある失敗例の1つ目はデータ分析・活用の目的が明確でないまま分析をして満足する結果が得られなかった例です。これはデータ分析の依頼者が目的を把握していないことが失敗の原因にもなりますが、データサイエンティストも依頼者の依頼をそのまま鵜呑みにして分析を始めてしまうことが一番の失敗の原因です。

「うちには膨大なデータがあるので、分析してみて経営に有用な情報を提案して」と依頼が来たときにスコープが大きすぎるのにもかかわらず、そのまま依頼を鵜呑みにして分析してしまうことがよくあるのです。この時、データサイエンティストに必要な力はビジネスモデル理解力・課題認識力・ヒアリング力です。データを分析する前に自社ビジネスモデル・事業戦略、業績を理解して、どこに課題があるのかを把握する必要があります。ただ、依頼者も課題を認識していない可能性があるので依頼者にヒアリングをする必要があるのです。

データ分析したら革新的なアイディアが提案されるという夢物語を思い描いている人たちはそう少なくはありません。ここで一度立ち止まりデータ分析の目的を明確化できるかが、データサイエンス成功のカギとなるのです。

(2)分析結果の説明不足

よくある失敗例の2つ目は分析結果の説明不足によるビジネスサイドの理解を得られなかった例です。これはビジネスモデルの理解不足、データ分析が目的となってしまうことが失敗の要因です。企業のデータサイエンティストが求められる能力は高度な分析力より、ビジネス力です。つまり、データ分析の結果からビジネスに有益な提案をできるかどうかが重要であるのです。

データサイエンティスト自身が分析したデータがなぜそのような結果が出たのか、どうしたらその結果を改善できるのか、逆にどうしたら良い結果になったのかを説明できるように準備をしておかなければなりません。それは自社を取り巻く外部環境、内部環境を把握している必要があるのです。

3.データサイエンス×ビジネススキル人材の育成

これまで、ビジネス力の重要性について言及してきましたが、ここからは企業に必要なデータサイエンティストの育成方法について説明します。

(1)データ分析力をつける

これまでビジネス力が重要だとお伝えしてきましたが、もちろんデータ分析する力がなければ意味を成しません。ビジネス力と合わせてデータ分析力も少なからずつけていく必要があるのです。まずはビジネス力をつける前のデータ分析力をつける育成方法について説明します。最初はデータ可視化ツールであるBIツールの学習から始めていきましょう。BIツールの学習を通して、データに慣れる、データ可視化手法を学ぶといいでしょう。そして、データの扱いに慣れることが目標です。おすすめのツールはPowerBI、Tableauです。これらのツールはUI、操作性に優れていますので、初心者でも扱いやすいツールとなっております。

また、BIツールの学習と並行して統計学の学習も始めていきましょう。統計学を学ばなければデータの分析はできません。データに慣れると同時に統計学を学ぶことで次のステップに入りやすくなります。

BIツール・統計学の学習が終了したら、次はデータ分析ツールの学習です。統計学で学んだデータ分析手法をもとに実際にデータを使って分析をしてみましょう。これをくり返していくことで、「要因分析をしたいときは回帰もしくは重回帰分析だ」、「コードはこれだ」というように分析の形がついてきます。このときデータの加工・集計についてはすでにBIツールで学習するので後戻りしなくて済むのです。このようなメリットもあり、BIツールの学習は最初にすることをお勧めします。

(2)ビジネス力をつける

ビジネス力をつけるのに必要なのはビジネスモデル理解力・ロジカルシンキング力・プレゼン力です。ビジネスに有益なデータ分析を提供するには自社のビジネスモデルの理解です。自社はどのような事業をしているのか、どこでマネタイズしているのか。そして自社の目指すべき姿はどこか、目指すべき姿と現状のギャップはどこにあるのか、ギャップを埋めるための施策はなにか・・・上げればきりがないですが、自社のビジネスを知っているかが重要なのです。自社のビジネスを認識した上で、必要になるのがロジカルシンキング力になります。

例えば、商品群別の売上粗利分析をする際、商品グルーピングがMECEで整理されているか、A商品の売上が下がっているのはなぜか、など考えることができなければ的外れな分析、そもそもグルーピングが間違っており、正しい分析ができないなど支障をきたしてしまうのです。

まずはロジカルシンキング力の習得です。ロジカルシンキング力を習得するためにはビジネスで活用するフレームワークを学ぶことが良いでしょう。例えばですが、MECE、ロジックツリーはもちろんのこと、3Cやアンゾフのマトリックスといった代表的なフレームワークを学ぶことで次のステップに入りやすくなるのです。

次のステップはビジネスモデル理解力の習得です。そのためには自社のビジョン・中期経営計画・経営方針・部門方針など自社が目指すべき方向性をインプットすることがよいでしょう。ここでポイントなのは自社の強みと弱み、そして潜在化しているだろう課題を仮説立てながらインプットすることです。この意識を持ちながらインプットすることでデータ分析にスムーズに入ることができます。

(3)プレゼン力をつける

ビジネスにおけるデータ分析はデータ分析がゴールではありません。データ分析した結果からビジネスに有益な情報を提供することです。この力をつけるにはケーススタディーを用いてプレゼンする練習をしていきましょう。ここでポイントなのは分析結果を詳細に伝えすぎないということです。

データ分析を理解している人、統計学を理解している人はそう多くはありません。P値が~。統計的有意で~。など専門用語の使用は避け、データから読み取れることからビジネスに有益な情報を端的に伝えることを心掛けるとよいでしょう。

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AUTHOR著者
デジタルコンサルティング事業部
チーフコンサルタント
布施 龍人

バリューチェーン上の幅広いDX領域における、具体的な実行推進支援までを企業の実情に即して提供している。特にHRDXにおいては、人的資本経営のDX化やDX人材育成に強みを持つ。経営視点・現場視点を持ち合わせた丁寧なコンサルティングに定評がある。

布施 龍人
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