1.AI人材とは?IT人材・DX人材との違い
AI人材とは、機械学習やデータサイエンスなどのAIに関する専門知識を持ち、AI技術を用いて新たなビジネス価値を生み出す人材のことです。よく混同されがちな「IT人材」や「DX人材」とは、担う役割や目的が異なります。
IT人材が主に情報システムの構築・運用やネットワーク管理などITインフラの安定稼働と効率化を広範な目的とするのに対し、AI人材はAI技術に特化し、データを活用して新たな価値を創出することを目的とします。
DX人材は、デジタル技術全般を用いて組織文化やビジネスプロセス全体を変革する存在であり、組織を牽引するリーダーシップや人を巻き込む力が求められる、より広範な役割を持ちます。
AI人材は、そのDXを実現するための重要な要素の一つとして、AI技術を用いた課題解決を専門に担います。
このようにAI人材は、単にAIシステムを開発するITエンジニアやデータサイエンティストだけを指すのではありません。自社のビジネス課題を特定し、AIを用いて解決策を企画・推進できる「AIを活用する人材」こそが、企業にとって不可欠なAI人材なのです。
「AI人材になるには高度な理系の専門知識が必須」と思われがちですが、現場の業務理解や論理的思考力があれば、文系からAI人材になることも十分に可能です。専門的なプログラミングができなくても、適切な知識と課題設定力を身につけることで、AIを使いこなす人材になることができます。
まずはAI人材向けの資格取得を通じて、基礎的なリテラシーを習得することも第一歩として有効です。
2.企業におけるAIへの対応
AI技術は業務の効率化や新たなビジネスモデルの創出に大きな可能性を秘めています。
▼クリックで拡大します
https://www.ipa.go.jp/digital/chousa/dx-trend/eid2eo0000002cs5-att/dx-trend-2024.pdf
しかし、IPAの「DX動向」によると、生成AIなどのAI関連技術が発達・普及したことに伴い、AI人材が不足していることが明らかになっています。上記のAIの導入課題におけるアンケートを見ると、AIの導入課題として「AI人材の不足」と回答した企業が47%、「自社内でAIへの理解が不足している」と回答した企業が62.4%と非常に多い結果となっています。また、2022年の回答と比べると2023年の回答の方が上回っていることもわかります。この状況を「まだ大丈夫」と考えるか、「チャンス」と捉えてAI活用に取り組むかは、経営者の強い意思にかかっています。
ただ、AIを効果的に活用するためには、AIの知識とビジネスの知識を兼ね備えた人材育成が不可欠です。ここでは、AIに関する人材育成の具体的なアプローチと実践的な手法について紹介します。
3.AI人材が必要な理由
現在多くの企業が深刻なAI人材不足に直面しています。AIツールの進化により「自動化が進めば人間としてのAI人材はいらない」という誤解を持たれることもありますが、実際にはそうではありません。企業がAI人材を強く必要としている背景には、主に以下の3つの理由があります。
①労働力不足の解消と生産性の劇的な向上
日本の大きな課題である少子高齢化に伴う労働力人口の減少に対し、AIによる業務の自動化や効率化は不可欠な対策です。しかし、ただAIツールを導入するだけでは効果は限定的です。AIの潜在能力を最大限に引き出し、自社の業務プロセスに最適化された形で実装するためには、AIの仕組みと現場の実務の双方を深く理解した人材の存在が欠かせません。
②DXの推進とデータドリブンな意思決定
企業が激しい市場競争を勝ち抜くためには、DXの推進が急務です。AI人材は、膨大なデータを分析して客観的かつ迅速な経営判断を下すための基盤を構築します。また、既存業務の改善にとどまらず、人間のアイデアだけでは到達し得なかった革新的な新サービスの創出を牽引する役割も担います。
③進化し続ける技術と社会の潮流への対応
AI技術は日々めまぐるしいスピードで進化し、社会全体に次々と変革をもたらしています。特に近年は、急速に普及する生成AIを扱える人材の育成への対応が、企業の成長を左右する最優先の経営課題となっています。この激しい変化に乗り遅れることなく、常に最新の知見をアップデートし、法的・倫理的なリスクにも配慮しながら自社のビジネスに適用していくためには、専門的なリテラシーを持った人材が必要不可欠です。
このように、単なる業務効率化の枠を超えて企業ビジネスそのものを変革していくために、AI人材の存在がますます重要になっているのです。
4.AI人材に必要なスキル
AI人材に必要なスキルは大きく4つに分類されます。
① プログラミングスキル
② データサイエンススキル
③ ディープラーニングスキル
④ AI企画立案スキルおよび推進スキル
この中でも最も重要なのは、④AI企画立案スキルおよび推進スキルです。①~③のスキルも十分に必要なスキルではありますが、これらは外部の力を頼れば解決することができます。しかし、AI企画立案スキルおよび推進スキルについては、自社のビジネスモデルや業務内容を熟知している人材が身に付ける必要があります。いわゆるAIプランナーと呼ばれる人材が企業には必要です。AIプランナーとは、AI(人工知能)の知識や技術を活用して、企業のビジネス課題を解決するための企画や立案、マネジメントを行う人材のことを指します。もちろんAIの仕組みや基本的な概念などを熟知している必要がありますが、重要なのは企業のビジネス課題を解決するための企画や立案をすることができるスキルを持ち合わせているかどうかです。このスキルを持つ人材無しに、企業がAIを活用して成長する未来はありません。
ここからはAI企画立案スキル及び推進スキルを身に付けるための育成手法について紹介します。
5.AI人材育成の具体的なアプローチ
次にAI人材育成におけるアプローチ手法についてはいくつかあります。ここでは主流となっている3つのアプローチ手法について紹介します。
①外部講師による実践的な研修
1つ目は外部講師による実践的な研修です。AI人材を育成したいと思っても、なかなか自社のリソースやノウハウでは研修を実施することができない企業が多いことだと思います。まずは外部講師を招いてノウハウを学ぶことをお勧めします。
研修の一例をご紹介します。
【研修1回目】
テーマ:AIを体験!世の中のAIを知る!
講義:AIの仕組みを知る
AIがどのようにして「学び」や「予測」を行うのかを理解していただきます。
専門知識がない方でも、AIの原理をイメージできる内容を目指します。
GW:AIツール体験・自社で活用できるAIを探る!
実際にAIツールを体験することで、AIの活用イメージを具体化していただきます。一般的なAIツールを操作しながらグループワークを通じて、AI導入の可能性や課題を実感していただきます。
【研修2回目】
テーマ:AIで業務改善!?要件定義と企画
講義:AI×業務改善手法
AIを業務改善に活用するための基本手法を解説します。業務プロセスの現状分析、課題の特定、AI導入による解決策の設計といった流れを整理し、AI活用の全体像を把握していただきます。
GW:AIを活用した業務改善手法
実際の業務課題を想定したケーススタディを行います。課題を分析し、原因の特定からソリューションの立案までを模擬的に実践し、現場でのAI活用の可能性を深く考える機会を提供します。
【研修3回目】
テーマ:AIを活用して事業立案してみよう!
講義:AI×新規事業立案手法
AIを活用した新規事業立案の基本手法を解説します。市場分析、顧客ニーズの把握、AI技術の選定、事業モデルの設計といったプロセスを整理し、事業構築の流れを具体的に学びます。
GW:AI×ビジネスモデル~事業立案
AIを活用した新規事業の立案を体験するケーススタディとなります。事前に与えられたテーマや市場データをもとに、AIを活用したビジネスモデルを設計。事業計画のプレゼンテーションを通じて、実践的な視点と企画力を養います。
上記の研修は計3回に分かれており、AIの基本講座のみならずケーススタディを通した実践的な研修になります。ポイントは実践的な研修です。座学だけではAI企画立案スキルは身につきません。具体的な手法を知ることで実行に移すことのできるスキルを養う必要があります。
②社内ハッカソン
2つ目は社内ハッカソンによるAI人材育成です。社内ハッカソンはAI企画立案スキルをつけるのに非常に有効な施策です。ただし、AIの基礎知識が前提となりますので、前段の研修など基礎知識を身に付けている人の参加が望ましいでしょう。
まずは目的の明確化から入りますが、具体的なテーマを設定しましょう。例えば顧客体験の向上、業務効率化、新製品の開発など、ビジネスに直結する課題があります。
次にチーム編成です。異なるバックグラウンドを持つメンバーでチーム編成を行うと、あらゆる視点からアイデアが生まれます。また、ある程度定型のアプローチ方法を伝授することが重要です。
各テーマに基づき、問題定義FMTやデータ戦略体系図、AI活用方針書などを事前に準備しておくと、参加者が躓くことなく実施できます。社内ハッカソンは、AIプランナーとしてのスキルを実践的に育成するための優れた機会です。参加者は、実際のビジネス課題に取り組むことで、理論を実践に結びつけ、チームでの協力を通じて多様な視点を学ぶことができます。これにより、AIをビジネスに活かすための企画立案スキルを効果的に向上させることができます。
③プロジェクトベースの育成
3つ目がプロジェクトベースでの育成です。こちらはすでにAI活用について社内でプロジェクトが走っている企業に有効です。こちらもAIの基礎知識を身に付けていることが前提となりますが、実際にプロジェクトに参画させることで研修では味わえない、泥臭いAI企画立案に携わることができ、AI企画立案スキルが身につきます。
ただし、プロジェクトベースの学習で重要なのは参加者のサポートです。メンターをつけるとよいでしょう。なかなか実際のAIプロダクトに参加することのない参加者は、周りに追いつけず挫折してしまうケースが多くあります。参加者が相談できる環境を整えることが重要になります。また、ある程度期間で経験を積んでからリーダーやマネージャーに抜擢をすることでプロジェクトマネジメントのスキルもつき、将来のCTO候補にもなりうる可能性があります。プロジェクトベースでの育成は実現難易度は高いものの、育成における効果は絶大なものになります。実際にプロジェクトが走っている企業はプロジェクトベースでの育成をお勧めします。
6.AI人材を育成する際のポイント
実践的なアプローチを確実に成功させ、社内に定着させるためには、単に研修を実施するだけでなく、組織的な仕組みづくりが不可欠です。具体的には以下の3つのポイントを押さえる必要があります。
①人材育成の目的と役割ごとのゴールを明確にする
とりあえずAIを学ばせるといった曖昧な目的では、実務に活きるスキルは身につきません。「既存の検品作業を自動化する」「顧客データを活用して新サービスを創出する」など、自社の経営戦略に基づいた具体的な目的を設定することが第一歩です。その上で、エンジニアやデータサイエンティスト、あるいはビジネス実装を担うAIプランナーなど、各役割に最適化された実践的なAI人材育成プログラムを設計することが重要になります。
②学習環境の整備と適切な評価制度の構築
AI技術は進化が早いため、座学の研修だけでなく継続的に学べる環境が不可欠です。eラーニングの導入や、社員同士でナレッジを共有する社内コミュニティの形成、また政府の公的支援制度を活用した外部研修も有効です。自社のリソースだけで難しい場合は、外部の専門家による次世代のAI人材育成プログラムなどを積極的に取り入れるとよいでしょう。さらに、時間をかけてスキルを身につけた社員のモチベーションを維持するために、習得した専門性やプロジェクトへの貢献を正しく評価する人事制度・キャリアパスを中長期的な視点で整備することも欠かせません。
③採用・アウトソーシングと自社育成のベストミックス
即戦力となる高度なAI人材の獲得競争は世界規模で激化しています。そのため、即座にノウハウを取り入れるためにAI人材の採用に向けて求人を出したり、AIに特化した人材紹介サービスや人材派遣を活用したりすることも一つの有効な手段です。しかし、AI人材の年収相場の高騰や、自社業務の理解不足によるミスマッチ、入社後の定着率といった課題が常につきまといます。 だからこそ、自社の企業理念や業務プロセスをすでに深く理解している既存社員へのAI人材育成を主軸に置きつつ、必要に応じて高度な専門領域のみ外部の力を借りるなど、バランスの取れた体制を構築することが最も確実な解決策と言えます。
そして、これらの育成の仕組みを全社で推進し、企業文化として根付かせるためには、何よりも経営陣の強いコミットメントが欠かせません。
7.トップが考えるべきAI戦略(AI活用ビジョンと戦略の構築)
これまでAI人材育成のアプローチについて紹介しました。特にAI企画立案スキルを身につけた人材の育成についてです。ただ、AI企画立案スキルをつけるにはトップがAIをどのように活用して企業成長を図るのか、明確なビジョンと戦略を示す必要があります。これにより、社員がAI人材育成の重要性を理解して、積極的にAIに関する事業に取り組むことができるのです。重要なのはトップの意思であり、覚悟です。
戦略なきDXに成功はありません。まずはDX・AIに関するビジョンを策定して、それを実現するための仕組みを作る一つの手段としてAI人材の育成に一歩踏み出してみてはいかがでしょうか。
8.まとめ
AI技術が目まぐるしく進化する現代において、AIをビジネスに実装できる人材の確保は企業の存続に関わります。トップが明確なビジョンと戦略を打ち出し、自社の理念や業務プロセスを深く理解している社員へのAI人材育成を進めることが急務です。
しかし、座学中心の研修だけでは現場で使えるスキルはなかなか定着しません。最も投資対効果が高く確実なのは、実際の業務課題を解決する「AIの実装プロジェクト」を通じて、実践的なAI人材育成プログラムを兼ねてしまうアプローチです。
タナベコンサルティングでは、単なるツール導入や座学研修にとどまらず、「経営」×「現場」×「AI」の独自アプローチで、貴社のビジネスにおけるAI活用の成功の型を構築する「AI実装コンサルティング」を提供しています。
実務へのAI実装を専門のコンサルタントが牽引・伴走することで、業務効率化や付加価値の創出を生み出しながら、並行して貴社の社員がAIを使いこなす自走組織へと変革させることが可能です。
ビジネスに直結するAI実装と、現場主導のDX推進にご興味がある方は、ぜひ以下のサービスをご覧ください。
・データ利活用で、「勘」に頼らないダッシュボード経営へ
・DXレベル表でわが社の「現在」と「目指す姿」を明確に など
