人事コラム

HRDX・タレントマネジメントコンサルタント一問一答人事機能改革・HRBP

HRDXとは?
DXとの違いから、導入すべきメリットを解説

デジタル技術によって戦略人事の実現を加速させる

HRDXは「デジタル技術で人事業務を変革し、社員体験向上と組織活性化を目指す取り組み」であり、HRDXがもたらす多くのメリットが戦略人事の強力な推進力となる。

HRDXを通じて達成したいこと=目的を明確にすることから始め、その手段としてHRDXを活用する

なぜ今、HRDXが必要なのか

なぜ今、HRDXが必要なのか

現代社会は、VUCAの時代と呼ばれる。Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字を取ったこの言葉は、社会情勢や市場環境の変化が激しく、将来の予測の困難さを示している。このような状況下で、企業が持続的な成長を遂げるためには、変化に柔軟に対応できる組織力の向上が不可欠だ。そして、その組織力の向上を支えるのが、戦略的な人事の役割である。
そこで注目されるのが、HRDX(Human Resource Digital Transformation)だ。


少子高齢化に伴う労働人口の減少は、企業にとって深刻な課題となっている。採用競争は激化し、優秀人材の獲得はますます困難になっている。また、働き方の多様化も進み、リモートワークやフレックスタイム制度など、従来の働き方にとらわれない柔軟な働き方を求める社員が増加している。さらに、社員の価値観も変化しており、給与や待遇だけでなく、自己成長の機会やワークライフバランスを重視する傾向が強まっている。
こうした人事を取り巻く環境の変化に対応するためには、従来の人事管理手法から脱却しなければならない。デジタル技術を活用し、人事部門の業務プロセスを変革することで、採用、配置、評価、育成、活躍、定着といった人材マネジメントフローの各フェーズにおいて、効率と効果を高める必要がある。
HRDXはそのような戦略的な人事へと進化するための鍵となる。企業が競争優位性を維持し、持続的な成長を遂げるためには、人材を最大限に活用し、組織全体のパフォーマンスを向上させる必要がある。そのためには、人事部門がより戦略的な役割を担い、経営戦略と連携した人材戦略を策定・実行することが求められる。
HRDXは、そのための強力な推進力となる。

HRDXとは?DXとの違い

HRDXとは?DXとの違い

DX(Digital Transformation)は、デジタル技術を活用して、企業のビジネスモデルや組織、プロセス、企業文化などを変革し、競争優位性を確立することを指す。これは単なるIT導入ではなく、既存のビジネスプロセスを根本的に見直し、新たな価値を創造することを目指している。例えば、製造業におけるIoTを活用した生産効率の向上や、小売業におけるAIを活用した顧客分析によるマーケティングなどが挙げられる。
一方、HRDXは、DXの概念を人事領域に特化させたものであり、人事部門の業務効率化だけでなく、社員体験の向上、組織全体の変革を目的とする。具体的には、人事データの収集・分析、人事クラウドシステムの導入、採用・育成プロセスの効率化などが含まれる。例えば、AIを活用した採用選考の自動化やオンライン学習プラットフォームの導入による研修の効率化などが挙げられる。


DXが企業全体の変革を目指すのに対し、HRDXは人材戦略を通じて組織全体の変革を支援するという点で異なる。また、DXは全社的な視点からビジネスモデルの変革を目指すのに対し、HRDXは社員のエンゲージメント向上や能力開発を通じて、組織の活性化を目指す。重要なことは、HRDXは単なる人事業務のデジタル化ではなく、人事戦略とテクノロジーを融合させ、組織の成長に貢献することを目指す点にある。
HRDXを推進するためには、人事部門だけでなく、経営層や情報システム部門との連携が不可欠だ。全社的な視点から、人材戦略とデジタル戦略を整合させ、組織全体の変革を推進する必要がある。

HRDXで実現できる5つのメリット

HRDXで実現できる5つのメリット

HRDXを導入することで、企業は以下の5つのメリットを享受できる。


  1. (1)業務効率化:
    人事プロセスの自動化、データの一元管理により、事務作業の時間を大幅に削減が可能となる。例えば、給与計算や社会保険手続きなどの定型業務を自動化することで、人事担当者はより戦略的な業務に集中できるようになる。また、採用活動における書類選考や面接の予約などを自動化することで、採用担当者の負担を軽減し、より多くの候補者に対応できるようになる。クラウド型のHRシステムを導入することで、人事関連の情報を一元的に管理し、情報の検索や共有を容易にすることも可能である。
  2. (2)社員体験の向上:
    社員のエンゲージメントを高める施策を展開できる。例えば、社員が自身のスキルやキャリア目標に合わせて、自由に学習できるオンライン学習プラットフォームを提供することで、自己成長を支援することができる。また、社内メディアを通じて、企業のビジョンや戦略、社員の成功事例などを共有することで、社員の帰属意識を高めることに繋がる。
  3. (3)データに基づいた意思決定:
    ピープルアナリティクス(人材マネジメントにまつわる様々な人事データを可視化し、分析する)によって、人材マネジメントの意思決定の精度向上に役立てることができる。例えば、社員のスキルや経験、評価データなどを分析することで、最適な人材配置や育成計画を策定できる。また、退職率や離職理由などを分析することで、組織の課題を特定し、改善策を講じることも可能となる。これらのデータ分析には、BI(Business Intelligence)ツールやデータ分析ツールを活用することが効果的である。
  4. (4)迅速な人材育成:
    個々の社員のスキルやキャリア目標に合わせた研修プログラムを提供することで、効率的な人材育成を実現できる。例えば、AIを活用して、社員のスキルレベルや学習履歴を分析し、最適な研修コンテンツを推奨することで、個々のニーズに合わせた学習を提供することができる。また、マイクロラーニングと呼ばれる短時間で学習できるコンテンツを提供することで、社員は隙間時間を活用して効率的に学習することができる。
  5. (5)組織全体の活性化:
    HRDXを通じて、社員の能力開発やキャリア支援を強化することで、組織全体の活性化を促進できる。例えば、デジタルツールを活用して、社員のスキルアップやキャリアチェンジを支援することで、社員のモチベーションを高め、組織全体のパフォーマンスを向上させることができる。

情報セキュリティ・ガバナンス対策

情報セキュリティ・ガバナンス対策

HRDXを推進する上で、情報セキュリティとガバナンス対策は不可欠である。人事データは個人情報を含む特に機密性の高い情報であり、その取り扱いには細心の注意が必要だ。
人事クラウドシステムの導入にあたっては、ISO27001やプライバシーマークなどの認証を取得しているかを参考とし、導入後は社員へのセキュリティ教育を徹底する必要がある。
具体的には、以下のような対策が考えられる。


  1. アクセス権限の厳格な管理:
    人事データへのアクセス権限を、業務に必要な範囲に限定し、不正アクセスを防止する。
  2. データの暗号化:
    人事データを暗号化し、万が一データが漏洩した場合でも、内容が解読されないようにする。
  3. セキュリティ対策の定期的な見直し:
    セキュリティ対策の脆弱性を定期的に見直し、最新の脅威に対応できるようにアップデートする。
  4. 社員へのセキュリティ教育の徹底:
    社員に対して、情報セキュリティに関する教育を定期的に実施し、セキュリティ意識を高める。
    また、データの不正利用や漏洩を防ぐための内部統制システムを構築し、定期的な監査を実施することが重要だ。

個人情報保護法をはじめとする関連法規を遵守し、適切なデータ管理体制を確立することで、企業としての信頼性を高めることができる。

HRDXを阻む3つの落とし穴と解決策

HRDXを阻む3つの落とし穴と解決策

HRDXは多くのメリットをもたらす一方、導入にあたっては注意すべき点も存在する。ここでは、HRDXを阻む3つの落とし穴と、その解決策について解説する。


  1. (1)目的の不明確さ:
    HRDX導入の目的が曖昧なまま進めてしまうと、期待した効果が得られない可能性がある。例えば、「最新のツールを導入すれば、何とかなるだろう」といった安易な考えでHRDXを進めてしまうと、導入したツールが十分に活用されず、効果を実感できないといった事態に陥ることがある。まずは、HRDXを通じて何を達成したいのか、具体的な目標を設定することが重要だ。例えば、「採用コストを20%削減する」、「社員のエンゲージメントスコアを10%向上させる」といった具体的な目標を設定することで、HRDXの方向性を明確にすることができる。
  2. (2)テクノロジー偏重:
    最新のテクノロジーを導入することにばかり気を取られ、現場のニーズを無視してしまうと、システムが定着しない可能性がある。例えば、人事担当者が使い慣れない複雑なシステムを導入してしまうと、業務効率が低下し、かえって負担が増えてしまうことがある。社員の意見を積極的に取り入れ、使いやすいシステムを導入することが大切だ。導入前に、社員へのアンケートやヒアリングを実施し、現場のニーズを把握することが重要だ。
  3. (3)部門間の連携不足:
    人事部門だけでHRDXを進めてしまうと、他の部門との連携がうまくいかず、組織全体の変革につながらない可能性がある。例えば、人事部門が導入した新しい人事システムが、経理部門のシステムと連携できず、データの二重入力が発生してしまうといった事態が考えられる。経営層を含む全社的な協力体制を構築し、プロセス全体を最適化することが重要だ。HRDXを推進するための専門チームを設置し、各部門の代表者を参加させることで、部門間の連携を強化することができる。

これらの落とし穴を回避し、HRDXを成功させるためには、明確な目的の設定、現場のニーズの把握、全社的な協力体制の構築が不可欠となる。

さいごに

HRDXは、テクノロジーを手段として捉え、人材戦略と組織の成長を結びつける重要な取り組みであることを理解すべきである。経営層がリーダーシップを発揮し、HRDXを組織全体の変革として捉え、積極的に推進していくことが成功の鍵となる。そして、HRDXは継続的にモニタリングおよび改善を行い、組織の成長に合わせて進化させていくことである。まずは自社の現状を分析し、HRDXによって解決すべき課題を明確にし、他社の推進事例も視野に入れながら、HRDXを推進していくことを推奨する。

この課題を解決したコンサルタント

鈴木 大誠

タナベコンサルティング
HRコンサルティング事業部
チーフ

鈴木 大誠

「クライアントに寄り添い、組織・個人の成果最大化に貢献する」をモットーに、中堅・中小企業向けの人事制度再構築や教育制度構築に従事している。 また、中堅・若手・新入社員を対象とした研修の企画・運営や、コーディネーターとして講義・指導も担っている。

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