取材先様のお役職は、取材当時のもの、タナベ経営社員の役職は、2020年現在のもの
独創的な家電を燕三条から
同社の経営理念は「感動と快適さを提供する商品の開発」「相互信頼を通じた豊かな関係づくり」「快活な職場づくりへの参画と社会の発展への寄与」「自己の成長と豊かな生活の実現」であり、経営戦略として「お客様の満足を追求」「スピード経営の実践」「ネットワーク型経営の実践」を掲げる。ツインバードという社名には、「商品をお使いになるお客様と商品をつくる私たちを常に"一対の鳥"と考えたい」という思いが込められている。
同社の創業は1951年、野水重太郎氏がメッキ加工の下請け業として始めた。そのうち自社製品の開発を始め、ギフト向けの豪華な「ナポレオントレー」がヒット。続けて金属メッキとプラスチックの異素を組み合わせた「ワインクーラー」が大ヒットした。数年後、2代目の野水重勝氏は本格的に小型家電製品の開発に着手。自社設計の電子回路を搭載した「タッチインバータ蛍光灯」をはじめとするヒット商品を次々に発表して事業基盤を築いた。
ところが、2000年に東証2部へ上場すると業績が頭打ちとなり、5期連続最終赤字を計上するなど厳しい状況に陥ってしまう。そんな中2011年に3代目として代表取締役社長に就任したのが、野水重明氏である。
カリスマ経営から価値共創企業へ転換
顧客と一体になったものづくりで、
数々のヒット商品を生み出してきた(写真は本社ショールーム)「先代の重勝は私の父で、当社をメッキ屋から家電メーカーへ転身させたカリスマ経営者でした。そんなやり手でも、成功体験から脱することができずに"昭和スタイル"の商品をつくり続け、事業が低迷してしまった。私は『すぐに代表権をください』と事業承継を申し出、先代は潔く道を譲ってくれました」と野水氏は振り返る。
危機から脱するために野水氏が採ったのは、顧客を巻き込んだ社員全員での商品開発である。ブランドプロミスとして「一緒に、つくる。お客様と。」を掲げ、顧客と一体になったものづくりで、どこよりも顧客の声を大切にする"価値共創企業"を標榜している。
「家電のマーケットは7兆円、白物家電でも2.5兆円あります。当社の売り上げは100億円強ですから、伸びしろは十分あるはず。単身世帯や核家族にフォーカスし、お客様の期待値を超える圧倒的な美しさと先進テクノロジーを有する商品を提供したい」と野水氏。その思いに沿って最近ではグッドデザイン賞を連続受賞したり、大手メーカーの牙城だった冷蔵庫や洗濯機の分野に参入して業績を伸ばすなど、順調な成果を上げている。
ヒト・モノ・カネから"ヒト・ヒト・ヒト"へ
「家電業界は斜陽産業ともいわれますが、ビジネスの仕方や商品の企画などへの創意工夫は無限に存在するはず。ただし、かつての延長線上に家電ビジネスの未来はありません。だから、当社が真に必要とするのは、既存のものを成長・発展させる人材よりも、ゼロの状態から革新的な一歩を踏み出せるような"ゼロイチ人材"です。バブル崩壊後の30年間日本が負け続けたのは、そのような人材を育ててこなかったから」と野水氏は明言する。
デジタル化が進んで社会ニーズの変化速度が増すと、今まで存在しなかったような製品・サービスがいっそう求められる。それを創出するコアが、ゼロイチ人材なのだ。
「このような人材を育成する取り組みは、教育分野でも意欲的に行われており、新潟大学では学長が先頭に立って『創生学部』を新設。自らの力でイノベーションを起こせるような教育をスタートさせました。自ら文献を探して内容を咀嚼した上で、付加価値を加えてプレゼンテーションができる。そうしたAIに代替されないような人材の育成に、私たち民間企業も真剣に取り組むべきです」(野水氏)
それに伴い、経営資源も変わる。
「これまでは『ヒト・モノ・カネ』でしたが、ゼロイチ人材のイノベーションに期待する状況では"ヒト・ヒト・ヒト"。今まで以上に、人材の確保と教育が重要になるのは確実です」と野水氏が述べるように、成長著しいIT系企業の事業戦略は「人材獲得戦略そのもの」と言えよう。
ゼロイチ人材の育成に向けて、ツインバード工業がパートナーに選んだのはタナベ経営だった。
会社プロフィール
- 会社名
- ツインバード工業株式会社
- 所在地
- 新潟県燕市吉田西太田2084-2
- 創業
- 1951年
- 代表者
- 代表取締役社長 野水 重明
- 売上高
- 116億2500万円(連結、2019年2月期)
- 従業員数
- 303名(2019年2月現在)