IPOとは?
意味や企業・投資家双方の
メリット・デメリットをわかりやすく解説
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IPOとは?
IPOとは、「Initial Public Offering」の略であり、株式等を新規公開(上場)することを指しています。一般的な目的としては事業拡大などに必要となる資金調達が挙げられますが、企業の知名度や信用力を高めて顧客や取引先との関係強化にも繋がる他、近年では積極的なM&Aや事業承継(親族外)を行う場合にも有効な選択肢と見られるケースもあります。今回はそのIPOを検討していく際のポイントについて説明をしていきます。
IPOと「上場」「PO」の違いとは?
IPOの概要を深く理解するためには、類似する用語との違いを把握しておくことが重要です。ここでは、混同されやすい3つの言葉との違いを解説します。
1. IPOと上場の違い
「上場」とは、証券取引所で自社の株式の売買が承認される状態全般を指します。一方、IPOは未上場の企業が新規上場を果たし、一般の投資家へ向けて新たに株式を公開することを意味します。日本の株式市場では、上場する際に多くの企業が新規に株式を発行するため、実質的に「IPO=上場」という認識で使われることがほとんどです。
2. PO(公募・売出し)との違い
PO(Public Offering)は、すでに上場している企業が資金調達などを目的に、新たな株式を発行する「公募増資」や、既存株主が保有する株式を市場に放出する「売出し」を行うことです。未上場企業が行うIPOに対し、POは既上場企業が行うという明確な違いがあります。
3. 直接上場(ダイレクトリスティング)との違い
直接上場とは、新規の株式を発行せず、すでに発行済の株式のみを上場させる手法です。IPOのように新たな資金調達を伴わないため、市場に出回る株式の数が限られます。コストや期間を抑えられるメリットがあるものの、日本国内での事例は以下の市場環境もあり、まだ多くありません。
IPOのメリットとデメリット(企業視点)
日本取引所グループによると2024年5月31日時点では3,935社が上場しており、札幌、名古屋、福岡の証券取引所を含めると日本には約4,400社の上場企業が存在しています。また2023年の1年間では新たに96社がIPOを行っています。これは日本における株式会社(約260万社)のうち0.17%にあたります。
企業のメリット
企業成長の手段となる
資金調達手段が多様化することで、その調達能力が拡大し戦略の幅を広げることができます。
従業員の社会的信用やモチベーションの向上
上場企業で働いていることで対外的な信用度が上がり、また企業成長の加速や知名度向上を従業員が実感することで、給料が上がるのではないかという期待感を持つことができ、仕事に対するモチベーション向上が見込まれます。
事業承継対策になり得る
未上場の場合だと承継の際には所有と経営の両方を承継しますが、親族承継ではその際に資金面の手当が必要となることや、場合によっては相続税等の納付のために別途資金調達が必要になるケースもあります。上場株式となることで株式市場を通じて株式の売買が可能となるため、株式の換金性が高まります。また非親族承継の場合では、上場会社であれば所有と経営が分離しているため、必ずしも株式譲渡をする必要もありません。
企業のデメリット
時間とコストがかかる
IPOにかかる期間は少なく見積もっても3年は必要となります。コストに関しても監査法人・証券会社への費用や、管理部門の構築・強化にかかる採用費や人件費が必要になってきます。更に上場後も維持管理のコスト(定時株主総会の実施、監査法人へのコストなど)も忘れてはいけません。
業績の向上が常に求められる
IPO前は短期的な利益は減少しても中長期的に成果が上がるような施策も取り組みやすいですが、IPOをするとそういった施策も株主の理解を得られづらくなってしまう傾向にあります。
社会・株主への説明責任
近年ではコンプライアンス遵守がより求められることや、株主が不特定多数になるために企業情報の開示や株主総会の運営を適切に行うことも欠かせません。これらのことからIPOを行わないと判断する企業もあります。
投資家から見た「IPO投資」の概要と魅力
IPOは企業側だけでなく、投資家にとっても大きな注目を集めるイベントです。新規公開株を対象とした投資は「IPO投資」と呼ばれ、はじめて株式投資を行う層からも人気を集めています。ここでは投資家目線でのメリットやリスクについて触れておきます。
公開価格(公募価格)と初値の仕組み
IPOを行う際、企業は投資家からの需要申告(ブックビルディング)を経て、株式の販売価格である「公開価格」を決定します。その後、上場日に初めて市場でついた株価を「初値」と呼びます。多くの場合、公開価格は割安に設定される傾向にあります。
IPO投資のメリット
投資家にとっての大きな魅力は、初値が公開価格を上回る可能性が高い点です。もし初値で売却できれば、手堅く売却益を得られる期待が持てます。また、通常の株式買付とは異なり、IPO株を公開価格で購入する際の手数料が無料である点や、今後の成長が見込める企業を応援できる点もメリットです。
IPO投資のデメリットと注意点
一方で、人気の銘柄は購入希望者が殺到するため、証券会社での抽選制となり、当選確率が低いというデメリットがあります。さらに、上場直後は株価が大きく変動しやすく、初値が公開価格を下回って値崩れを起こすリスクもゼロではありません。投資家は証券口座を開設し、購入手続きを行う間に資金が拘束される点にも注意が必要です。
IPOを検討していく際のポイント
では、IPOを行うか否かを検討していくためにはどのようなことを考えなければならないのでしょうか。これは一言でまとめると「IPOを行う目的が何か」を明確にすることです。IPOのメリット・デメリットを前述しましたが、そのメリットは必ずしもIPOをしなければ享受できないものではなく、またIPOをしなければデメリットはそもそも生まれません。
例えばメリットの1点目に挙げた資金調達については、借入という手段で構わないということであれば、多様化している調達方法を利用することも考えられます。その方法も、シンジケートローン、劣後ローン、ストラクチャードファイナンス(※)と、様々な方法が存在します。また、未上場企業でもLBO(レバレッジド・バイ・アウト)(※)を活用した企業買収や、クラウドファンディングで一般投資家から小口の資金を募る方法もあります。
2点目に挙げた従業員のメリットに関しても、調達した資金で企業の成長を実現することで、モチベーション向上に繋げられることができます。
3点目の事業承継対策という観点ではIPOではなくホールディング経営への移行という手段も考えられます。
(1)シンジケートローン・・・借入人に対して、複数の貸付人が同一の契約で実施する融資のこと
(2)劣後ローン・・・他の特定の債権または一般の債権より支払い順位が劣るローンのこと
(3)ストラクチャードファイナンス・・・債権流動化や不動産の流動化など、会社が所有している資産を証券化して行う資金調達方法
(4)LBO(レバレッジド・バイ・アウト)・・・買収対象となる会社(売り手企業)の信用力を担保に融資を受け、買収資金を調達するM&A手法
企業がIPO(新規上場)を行うための条件と流れ
企業がIPOを実現するためには、厳しい基準をクリアし、適切な手続きを踏む必要があります。ここでは企業側が直面する上場までのロードマップを解説します。
IPOに必要な上場条件
日本の証券取引所(東証プライム、スタンダード、グロースなど)では、市場ごとに厳格な条件が設けられています。具体的には、株主数、流通株式数、時価総額などの定量的な基準だけでなく、企業の継続性や収益性、健全な内部管理体制が構築されているかといった定性的な審査も行われます。
上場に向けたスケジュールと準備
IPOに向けた準備は、一般的に上場の3年ほど前から(直前前々期)開始されます。この期間に、社内規程の整備、コンプライアンス体制の強化、そして事業計画の精緻化を進めます。審査担当者からの厳しい質問への対応も含め、全社的なプロジェクトとして推進する体制づくりが求められます。
専門機関(監査法人・証券会社など)との連携
IPOは自社単独で達成できるものではありません。財務諸表の適正性を証明する監査法人や、上場に向けたスケジュール管理・株式の取扱いなどをサポートする主幹事証券会社と密に連携することが不可欠です。また、IPO支援の実績が豊富なコンサルティング会社に参加してもらうことで、スムーズな準備が可能になります。
IPOを検討するその前に
ここまで、IPOの目的やポイントについてお伝えしましたが、検討前の段階で押さえておくべき点について後述いたします。
時価総額の検証
これはその企業の将来性を考慮した「値付け」とも言える金額であり、その額次第では是とならないケースもあります。IPOした後に思うように企業価値が上がらず、経営難に陥るケースもあります。
ガバナンス体制
IPO準備段階では上場に向けて整備すべきガバナンスや内部統制が多くありますが、その中には規程類の整備やその運用実績が含まれています。ただし実態は規程そのものが無かったり、社内の監査機能が働いておらず規程通りの運用ができていないといったケースも散見されます。IPOを目指し、ショートレビュー(監査法人等が上場を検討する企業に対し、その課題を確認するために実施する調査)を受けて諦めたという話もあります。
どの株式市場を選択するのか
日本には東京、札幌、名古屋、福岡の4つの証券取引所があり、中には複数の市場区分を設けているところもあります。市場ごとに特徴や基準が異なるため、どの市場でIPOを目指すのかによって何をするべきかも変わってきます。
このようにIPOを行う際には検討をしなければならないことや、検討前に調査をしなければならない事は多岐にわたります。しかしながら、その一方で論理だけで経営判断ができないのもIPOです。。現経営者が創業者や親族承継で成長を遂げてきた企業にとって頭では理解しているものの、心(想い)では納得できないというケースもあります。親族承継をしてきた企業が非親族承継を行うタイミングでホールディング経営へ移行したケースも、数年先の非親族承継を見据えてIPOを選択したケースも、その時の経営者はまさしく「決断」をしており、どちらの選択肢を選ぶにしても簡単には割り切れない思いと葛藤しているケースがほとんどです。IPOを検討していく際には、メリットを享受する他の方法がないか、デメリットは許容できるものなのかを考えながらも最後は経営者としての"決断"をしていくことが必要となるでしょう。
まとめ
タナベコンサルティングでは、IPOを単なるゴールではなく成長戦略の有力な選択肢と捉えています。上場のメリット・デメリットを整理し、ホールディングス化など他の手段と比較検討した上で、貴社にとって真に最適な決断ができるよう支援いたします。
また、検討段階における資本政策や事業計画の策定から、実務面でのガバナンス・内部統制の構築支援まで、IPO実現に向けたプロセスをワンストップでサポート。経営者の想いに寄り添い、永続的な企業価値の向上を実現します。
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