経営ダッシュボードの利点と活用事例と
意思決定のための分析ポイント
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世界的な物価高は落ち着きつつあるものの、2025年10月、日本の生鮮食品を除く消費者物価指数は前年同月比3.0%上昇(2020年を100とする指数で112.8)し、デフレ期と比べれば依然として高い水準です。また、金利の上昇も続いているため、日本企業には一段と高い成長が求められています。
業績向上に向けたマネジメントシステム
物価が上昇し、金利が引上げ基調になると、企業は社会や市場から、より高い成長を求められます。これは、前年と同じ水準の売上や利益では、物価の上昇に追いつかず、実質的に、減収減益になるためです。従業員の立場では、前年と同様の給与では、実質的な目減りとなるため持続的な賃上げが必要です。また、金利は資金の調達コストであるため、金利(10年国債が約2.0%弱まで上昇)を下回る事業の利益率では、資金を調達して事業に投資したとしても、資金を有効に活用できず、資本効率が低下します(例:金利2%に対し、事業利益率1%など)。その場合は、資金調達コストを下回る事業となるため、撤退が必要と判断します。
そのため企業は、これまで以上に高い成長を目指し、既存事業の見直しや新たな施策の検討に力を入れています。さらに、新規事業やM&A、マーケティング、ブランディング、提携など、売上拡大と利益向上につながる施策を次々と検討し、実行しています。こうした新たなアイデアや施策を実行・推進する前に、自社のマネジメントシステムを見直すだけで、業績が向上したケースは少なくありません。業績向上に向け、新たな施策を検討・実施すること自体は有効ですが、マネジメントシステムが整っていないと効果は半減します。一方、整ったマネジメントシステムのもとで実施する各施策は相乗効果を生み、効果を最大化できます。本コラムでは、業績向上に向けたマネジメントシステム「経営ダッシュボード」の活用事例を紹介します。
未来に向けた業績管理
まず、皆さまの会社はどのように業績を管理しているでしょうか。多くの企業は、過去の実績に基づいて業績を管理しているのが実態ではないでしょうか。先月の目標を達成したかどうか。未達の原因は何か?
また、今月の目標達成までに、あとどれだけの売上や利益が必要か。
このように過去や足元の業績に限って管理する企業が大半です。
これでは、将来の目標との差分に対する打ち手を準備できません。その結果、打てる手は即効性のある対策に偏り、個人レベルでの改善活動や営業方法の変更程度にとどまるため、効果は限定的です。事業運営において、将来の業績目標との差額を正しく認識すれば、数カ月先を見据えて、今のうちから効果が見込める新たな施策を打つことができるようになります(広告キャンペーン、集客活動、フェア参加、マーケティング施策など)。
ただし、こうした施策も闇雲に投下すると、限られた資金の浪費につながります。
業績向上に向けて、どの領域に集中し、限られた経営資本をどこに重点投下するかを戦略的に判断する必要があります。こうした戦略的判断の基盤となるのが「経営ダッシュボード」です。
「経営ダッシュボード」とは、車のダッシュボードや飛行機のコックピットのように、数字にもとづいて一目で自社の状態を把握できるツールです。
「状態がわかる」とは、安全性、成長性、生産性や効率性、収益性などの指標について、どこが収益を生み、どこが収益を生まないのか、何が成長し、何が衰退しているのかを把握できる状態を指します。単純な売上や利益だけでなく、限界利益から本社費配賦後(負担後)の営業利益まで把握できているか。さらに、事業別だけでなく、地域別、製品別、顧客別、工場別、工程別など、さまざまな切り口で、収益の源泉や衰退の兆候を把握できているか。組織のマネジメント単位に沿ったダッシュボードの整備は必須です。場合によっては戦略に沿って組織を再設計する必要があります。
食品メーカーの事例では、同じ業界であっても、戦略の軸を「商品」に置くのか、「地域」に置くのか、「原料」に置くのか、あるいは「機能」に置くのかによって、戦略の立て方は大きく異なります。
商品戦略に重きを置く企業であれば、商品ごとの配賦後利益が見えているか(本社費もカバーできる商品か)。
原料であれば、調達コストも含めて製造や販売の戦略を設計できているか(1原料あたりの利益率など)。
機能に重点を置く場合は、高機能に適した価格設定ができているか。
このように数字にもとづく戦略判断を下せることが「経営ダッシュボード」の利点です。
経営ダッシュボードの戦略的活用
以上のように「経営ダッシュボード」は戦略的判断を下すための、数字にもとづく論拠を構築する上で必要なツールです。ただし、闇雲に多様な切り口(〇〇別売上など)を作成し、どの領域がどのような状態かと論評しても意味はありません。
あくまでも、自社が推進する戦略にもとづき、どの切り口の数字を把握することが重要かという視点で「経営ダッシュボード」を設計し、プロジェクトを通じ共通費用(主に本社費)の配賦方法を定め、構築する必要があります。
そのため、まずは自社の戦略的セグメントを見極め(商品、地域、機能、工場や工程など)、戦略に沿って目的を明確にしたダッシュボードを設計する必要があります。
先ほど挙げた食品メーカーの事例では、商品、原料、販売チャネル、機能といった業績拡大に向けた戦略の軸が混在していました。議論の末、業績拡大の重点は販売チャネルと結論づけ、チャネル別の製販一体の経営ダッシュボードの構築を長期の目標に掲げ、設計とシステム導入のロードマップを策定しました。
「経営ダッシュボード」は導入後にこそ価値を発揮します。ダッシュボードの数値にもとづき、戦略と数字でロジックを構築し、冒頭で述べた将来志向の業績マネジメントを実行することで、効果の高い業績拡大施策の推進に直結します。
さいごに
冒頭で、将来の業績マネジメントが重要だと述べましたが、先行管理には、自社の業績ロジックを解明することが重要です。
半導体製造装置を扱う企業の事例では、営業が成約に至るまで通常1年を要し、現在進めている営業活動が数カ月で成約に至ることはないという状況でした。そのため、1年先の業績を先行管理するシステムを策定しました。
システム構築にあたっては、「精度」がポイントとなりました。1年後の成約を見込める案件であっても、途中で取引先の予算削減や、外部環境の変化によって、失注する可能性がありました。 そこで、過去の成約率を算出し、その数値をもとに1年後の業績先行管理システムを構築しました。このように、業界の商習慣や、各企業の取扱製品の特徴、営業の精度に応じて、企業ごとに適したシステム構築が不可欠です。
したがって、実際の運用は画一的ではなく、各社に合った「経営ダッシュボード」の活用が求められます。本事例を参考に、ぜひ自社に合った「業績先行管理システム」および「経営ダッシュボード」のご活用を検討してみてください。
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