多くの経営者、経営幹部がDXという言葉に慣れてきて推進をされている企業が増加しており、中期経営計画や年度目標にDXという言葉を掲げる企業が増えています。ただ残念なことにツールを導入して満足、あとは現場が合わせてくれるといった"中途半端なDX化"や"止まってしまったDX"が徐々に見られるようになりました。
弊社にも上記のような相談が多く寄せられています。また経営者はDXを推進していると思っていても、現場の方に話を聞いてみれば上記のような状況になっているといったことも見受けられます。
営業DXツールとは
そもそもDXとは「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」と経済産業省は定義しています。
※引用元:経済産業省 デジタルガバナンス・コード2.0 P1
上記を踏まえ営業DXツールとはデータとデジタル技術を活用し、営業力をアップさせるツールであると考えます。
重要なポイントはデジタル技術だけでなく、データを活用するということです。ツールを導入するだけでなく、そこに蓄積される膨大な量のデータを分析・抽出することで、いかに有効に活用し、営業力を向上させて競争上の優位性を確立するかも重要なポイントの一つとなります。
営業DXツールの種類と特徴
営業DXツールのなかでも特に代表的なものをご紹介します。
(1)SFAツール
SFAとはセールス・フォース・オートメーションの略であり、営業活動の効率化を目的としたツールとなります。会社情報や担当の情報、商談記録、売上見込みのランクや金額など様々な情報を一元管理することで、営業力のアップとマネジメントの生産性を向上させることが可能となります。製造業、商社などBtoB企業で多く使われています。
(2)MAツール
マーケティング・オートメーションの略であり、マーケティング活動の効率化を目的としたツールとなります。メルマガの送付や開封率、クリック率などの分析から、WEBサイトで顧客がどのページをいつ、どれくらいみたか等の分析が可能となります。一昔前ではマーケティング部隊が使用するものといったイメージでしたが、営業パーソンも活用することで、営業力を向上する企業も増え、無駄な飛び込み営業や営業電話をやめて効率的な営業活動を行うプレーヤーが増えています。BtoC、BtoB問わず使われており、マーケティングサイトやECサイトを持っている企業なら必須のツールとなります。
(3)CRMツール
CRMとはカスタマー・リレーションシップ・マネジメントの略であり、顧客満足度の向上を役割としたツールです。具体的には様々な個人情報、例えば住所、電話番号、生年月日、学歴、勤務先、家族構成などを登録することで個人の営業活動や部門全体のキャンペーンに生かすことが可能となります。小売店やサービス業などBtoC企業において多く使われています。
ただしSFAツールでもメルマガを送付し開封率などの分析が可能なものや、CRMとSFAの両機能を持つツールなど、良いとこ取りのツールも出てきています。導入にあたっては各ツールと自社の営業方法や社内体制などの相性を考えながらの検討が必要となります。
営業DXツールの活用方法
3つのツールの活用方法の代表例は以下となります。
活用方法の代表的なものは上記のようなものが挙げられますが、ツールによって細かい改善や生産性向上が可能となります。多くの小さな成功体験を積み上げることもツール導入開始時にメンバーに浸透させる重要なポイントです。
営業DXツール導入の際のポイント
(1)導入前
営業効率の改善や売上のアップにつながるか、導入後の営業プロセス全体を俯瞰しながら導入の検討を進めていきます。またツールの価格、使用方法、インターフェースなども様々です。ベンダー企業に他社事例や同業種の事例も聞きながらツールの選定を行いましょう。
①現在の営業プロセスの再確認
営業プロセスを改めて確認し、ネックポイントを押さえることが必要です。ただし営業パーソンの声だけに耳を傾けていると、ネックポイントに気づいていないといったケースも見受けられます。営業プロセスを客観的に広い視野でみることが重要です。
②同業種だけではなく他業種も参考にする
多くのツールは自社に合わせたカスタマイズが可能となっています。他業種の成功事例も聞くことにより、古くからの慣習やルールに囚われることなく思い切った改革を行うことも必要です。業種を超えた活用方法をイメージし、実装することも成功条件の一つです。
(2)導入後
ツールを導入するだけで売上が向上するといった都合の良い話はありません。上記で述べた通り現場の営業プロセスに即した活用方法となっているか、使用にあたってのルールは適切かなど、常に改善を行っていく必要があります。ツール自体が機能しているかの確認はもちろんですが、生産性の向上や売上のアップにつながっているかの確認が必要です。またツールを提供するベンダー企業によっては提供して終了といった会社もあります。まずは自社でしっかりと自走できる組織や仕組みづくりも重要です。
①ルール作り
新しくツールを導入するにあたり必ず必要となるのがルール作りです。メルマガ配信においては回数、執筆担当、校正担当等、SFAツールにおいては商談記録の記入期限、案件のランク基準など一つ一つにルールが必要となります。またそのルールは厳しすぎて営業の負担が重すぎないか、また逆に甘すぎてツール活用の妨げとなっていないかなど常にチェックと改善を行う必要があります。
②ツール活用状況の共有と連動
ツールを導入しても、様々な施策や担当部署がすべて連動していないと効果が出ません。インサイドセールス部隊との共有、もしくは大きなプロジェクトであれば全社での共有などすべて見える化し、共有していくことも重要なポイントとなります。
営業DXツール導入により成果を上げている企業の共通点に社内や業界の古い慣習やルールに囚われず、思い切った改革や施策を実施しているというポイントがあります。今までの延長線上でツールを考えても爆発的な生産性向上や売上拡大は見込めません。現場の声も聞きながら、思い切った改革を行うことが可能となるようにツールを活用しましょう。