人事コラム
人材採用の手法
本コラムは、ダイヤモンド社発行の「戦略起点の人材マネジメント」の第4章の抜粋記事です。
(1)3つの採用チャネル
策定した戦略を実装するに当たり、採用チャネル選びは重要である。採用チャネルとは、就活生や採用候補者にアプローチするための手段であり、大きく「メディア」「人材紹介会社」「ダイレクトリクルーティング」の3つがある。従来は求人サイトに募集要項を掲載して応募者を待つというのが主流だったが、昨今は人手不足を背景に掲載企業が増えたことで応募者の目に触れる機会が減り、投資対効果が低下している。
そんななか、急激に拡大しているのがダイレクトリクルーティング(DR)である。求職者の応募を待つのではなく、自社に合った人材に自らアプローチしていく方法である。これをうまく活用して成功する企業も増えている。DRの代表的な手法を3つ、【図表4‒7】に整理する。
(2)3つのDR手法のポイント
①リファラル採用
リファラル採用とは、既存社員に友人や知人を紹介してもらい、活躍が見込めそうな採用候補者を集める方法である。経験豊富な中途入社人材を確保する際に検討できる選択肢である。
ポイントは、自社が求める人物像を既存社員へどれだけ明確に伝えられるかである。既存社員が採用基準を満たす人材を紹介してくれるかどうかが、一次選考の役割を果たすからだ。自社の採用基準と紹介する側としての責任を丁寧に説明し、正しい理解を得られるよう取り組む必要がある。
②人材データベースからの採用
人材紹介会社などが持つ求職者のデータベースを活用して、求める人材に直接アプローチする手法である。未経験者・経験者を問わずダイレクトに仕掛けができるため、攻めの採用手法としてイメージしやすい。候補者1人ひとりに直接メッセージを送るので採用担当者の工数はかかるが、有効な手段となりやすく、同種のサービスが続々とリリースされている。
人材データベースの活用のポイントは、自社が求める人材像とデータベースに登録されている人材の方向性がマッチしているかどうかの見極めである。魚のいない池で釣りをしても意味がないように、データベースに求める人材が登録されていなければ採用にはつながらない。また、自社が求める人材を抽出できる検索機能があるかという点でも慎重に検討したい。
③SNS採用
SNSを活用した人材採用は「ソーシャルリクルーティング」とも呼ばれ、企業の魅力を定期的に発信することで潜在層にもアプローチできるのが特徴だ。X(旧ツイッター)やインスタグラムなどのSNSに投稿して企業の魅力を伝えていくため、中長期的な施策となるが、リアルな情報をより広く届けることができる。
ポイントは、求める人材の興味を引くメッセージをいかに提示できるかである。SNSはサービスごとにユーザーの属性が異なるので、それに合わせて発信メッセージを変えたり、タイミングに合わせて伝え方を変えたり、細かくメンテナンスする必要がある。また、情報の鮮度を保ちつつ、継続して長期的に発信することも重要である。
(3)採用チャネルの選択
これらの採用チャネルはごく一部であり、どれか1つに絞る必要はない。複数の手段を並行して活用しながら効果検証を行い、自社の採用戦略と掛け合わせて独自のノウハウを構築するのがよいだろう。独自のノウハウを確立するためには、入社者へのヒアリングを行うことが有効である。「他に迷った会社はあるのか」「どのフェーズで入社しようと判断したのか」「どの発信内容に共感したのか」「最終的に自社を選んだ理由は何か」などを確認する。それらを選考段階での実践(失敗も含む)とともに記録に残し、マニュアル化することで独自のノウハウをブラッシュアップしていく。
(4)採用手法のブランド化
自社独自の採用手法を開発してブランド化している企業もある。例えば、経営者が候補者と焼肉を食べながら人柄を見極める「焼肉採用」、選考フローに麻雀を取り入れる「麻雀採用」、説明会や社員インタビューで得た会社情報を演劇で表現する「演劇採用」などがある。これらの独自の採用方法は、ユニークさが話題を呼び、それぞれの企業の認知度を高めた。しかし、奇をてらった方法を取ればよいということではない。あくまで自社が求める人材にアプローチし、魅力を伝えるために思案を重ねた結果、話題を呼び、認知度向上につながったと捉えるべきである。競争が激化している採用市場において、この状況が緩やかになることはないだろう。
そのなかで、今が採用を行う目的を見直すタイミングだといえる。それは、自社が目指す姿から押さえ、その実現にはどのような人材であるべきかを明確に定義する。この点が曖昧な企業が多い。選び・選ばれる現代の環境下において、「人を集める」のではなく、「集まる」戦略採用へのアップデートが必要だとあらためて確認していただきたい。
