人事コラム

コンサルタント一問一答人材育成・研修企業内大学(アカデミー)

効果的な教育体系の構築方法とは?
見直す際のポイントも解説

教育体系の構築ステップとともに、教育体系を見直す際のポイントも合わせてご紹介

教育体系とは

教育体系とは

教育体系とは、企業が社員に対して行う教育・研修プログラム全体を、経営理念や経営戦略の実行・実現という視点から体系的にまとめた「人材育成の全体像を示す見取り図」です。教育体系は、社員の成長段階や職務内容、そして将来的なキャリアパスなどを考慮し、各々の社員が必要な知識やスキル、マインドセットを効率的かつ計画的に習得できるよう、戦略的に設計されるものです。

 

効果的な教育体系は、単なる階層別研修やテーマ別研修の羅列に留まりません。経営理念やビジョン、そして具体的な事業戦略に基づいて構築されることが大前提となります。さらに、教育体系は人事評価制度や等級制度と連動し、「育成すべき人材像」と「評価の基準」を一貫させる骨格としての役割を果たします。
これにより、社員一人ひとりの能力開発を促進すると同時に、企業が求める能力を必要なタイミングで充足させ、組織全体の持続的な成長を支えるための重要な人的資本戦略と言えるでしょう。

 

教育体系とは?作成方法や再構築のポイントをまとめて紹介

教育体系を構成する具体的な要素と研修体系との明確な違い

教育体系を構成する具体的な要素と研修体系との明確な違い

教育体系は、単に研修プログラムをまとめたものではなく、企業が求める人材像を実現するために必要な教育施策の全体像を指します。具体的には、以下の3つの要素を網羅的に包含しています。

 

(1)OJT(On-the-Job Training)

実務を通じた計画的な育成

 

(2)OFF-JT(Off-the-Job Training)

集合研修やeラーニングなどの座学

 

(3)SD(Self Development/自己啓発)

資格取得や通信教育など、社員の自発的な学習支援

 

ここで重要となるのが、「教育体系」と「研修体系」の明確な違いです。
教育体系は、上記3要素すべてを含む広範な概念であり、人材育成の全体設計図です。これに対し、研修体系は、主にOFF-JTに分類される集合研修プログラムなどを一覧化したものであり、教育体系の一部を構成する要素に過ぎません。効果的な教育体系は、OJTを核としつつ、OFF-JTで専門知識を補強し、SDで社員の自律的な成長を促す、一貫したシステムとして機能しなければなりません。この全体像を明確に定義することが、教育の場当たり的な実施を防ぎ、戦略的な人材育成を可能にする第一歩となります。

教育体系づくりの目的

教育体系づくりの目的

ここからは、その教育体系を構築する目的について確認していきます。「企業は環境適応業」であり、経営環境の変化に合わせて企業経営を行う事が原理原則です。

 

一方、組織・人事は、「戦略に従う」のが原則であり、「戦略に合った、組織・人事の再構築」を行うことが戦略を推進させる必要条件です。どんなに素晴らしい戦略を構築しても、それを現場で実行するのは人材であり、その人材が活性化されていなければ、短期的には成果を上げることはできても、中長期的に安定的に成長を実現していく基盤としては脆弱といえます。

 

教育体系づくりは、人材活性化の根幹を担うものであり、社員のやる気の方向付けを促進させる重要な仕組みであります。「戦略が変われば、その戦略を推進させる人材の条件も変わる」ことを認識するとともに、「自社にとって適正な教育体系を構築」することが必要です。

効果的な教育体系の構築ステップ

効果的な教育体系の構築ステップ

教育体系は、企業の経営戦略と人材育成の目的が明確になった後、具体的な仕組みとして構築していく必要があります。闇雲に研修を導入するのではなく、現状分析からプログラム開発、運用設計までを戦略的に行うことが、実効性のある教育体系を実現する鍵となります。ここでは、人事制度との連動を前提とした構築の5つのステップを解説します。

 

STEP1 自社の人事制度の確認

教育体系づくりの前提になりますが、教育体系は自社の人事制度との連動が必須となります。
あるべき人材像が定義された等級基準書などがしっかりと整備されているかを改めて確認してください。

 

STEP2 各等級の不足能力・スキルの洗い出し

各等級の不足能力・スキルとは現等級から、次の等級に進むために不足している能力・スキルを指します。
どのような能力・スキルを身に付ければ上の等級に上がるのかをしっかりと洗い出します。

 

STEP3 STEP2で洗い出した、能力・スキルを獲得するためのプログラムを開発

開発の視点は、社内での役割、実務サポート(OJT)、研修(OFF-JT)、資格学習などが一般的です。

 

役割においては、リーダーシップを発揮できるような役割(会議のファシリテーター、新入社員の教育、プロジェクトリーダー等)をどのような年次で経験させるかを検討します。

 

OJTは教育タイミングだけでなく、おおよその経験回数も定義すると良いです。
(人のスキルが上がらない理由は2点あると考えます。1つは本人の能力不足、2つは本人に経験の機会が与えられなかった。後者をなくし、教育者側にも経験を与える責任を感じていただくためにも、経験回数の定義を行います。)

 

研修は社内で行う研修と、社外で行う研修の両方を用意します。社内で行う研修は必要スキルを習得するための研修を用意しますが、その際にテーマだけでなく、カリキュラム、スケジュール、レジュメなども一緒に用意しておかないと、実行になかなか移しにくいので、すぐにでもできるレベルで用意することがポイントです。

 

社外の研修に関しては、階層別のリーダーシップ教育や、専門技能の教育など社内でできない研修を定義します。
ちなみにタナベコンサルティングでは新入社員から社長までを網羅した階層別セミナーを実施しており、他社のリーダーたちのレベルを実感できる他流試合も大きな価値があり、教育体系に組み込むと良いと思います。
(参考URL:https://www.tanabeconsulting.co.jp/seminar/#lineup

 

資格に関しては必須の資格だけでなく、能力向上につながるような資格も幅広く入れていってください。

 

STEP4 何年に誰が受講するのかをスケジューリング(対象者の選定)

初めて階層別教育を取り入れる際は部下の研修内容を知れるような上司の研修を用意することをおすすめします。

 

STEP5 その他の制度の整備

メンター制度や、入社直後のスキルの習得マップづくり、キャリアロードマップの整備なども同時に行えるとより良い教育体系につながっていきます。

教育体系を見直す際のポイント

教育体系を見直す際のポイント

教育体系は、一度構築したら終わりではありません。
自社のPMVV(パーパス・ミッション・ビジョン・バリュー)を軸に、時代の変化や企業の成長発展に応じて柔軟に見直すことが必要です。
見直す際に着目していただきたいポイントは以下の3点です。

 

1.時代の変化に適応

技術革新や市場変動に伴い、新しいスキルや知識が求められるため、教育内容を定期的に更新する。

 

2.社員の声を反映

定期的にアンケートを行い、社員からのフィードバックを体系の改善に活用する。

 

3.効果測定の実施

教育効果を測定し、結果に基づいて内容や方法を見直す。

 

環境に適応するため、常に教育体系のブラッシュアップが必要になります。

まとめ

企業の持続的な成長には、戦略実行を担う「人材育成」が必要不可欠です。
そして、その基盤となるのが、人事制度と連動し、不足能力を補うために的確化した「戦略的な教育体系」です。

 

本コラムでご紹介した教育体系の構築ステップを参考に、自社のビジョンや戦略に合致した教育体系を構築していってください。そして、時代の変化や社員の声を反映しながら、継続的な改善を図ることで、社員の成長と企業の成長を実現していきましょう。

この課題を解決したコンサルタント

大山 賢一郎

タナベコンサルティング
HR&人材育成
ゼネラルマネジャー

大山 賢一郎

広報支援活動をはじめ、ノベルティー・販促商品の企画提案などに従事。 実務で培った顧客管理手法やコミュニケーション手法を基にした営業コンサルティングを展開。 また、クライアントの立場に立った教育体系づくりも、多くの企業から高い評価を得ている。

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