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2025.04.11

物流企業は知っておきたい「最適な財務戦略」

  • 企業価値向上

物流企業は知っておきたい「最適な財務戦略」

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物流業は、製品やサービスを顧客に届けるための重要な社会インフラとなっています。効率的な物流は、企業の競争力を高め、顧客満足度を向上させる要因となります。しかし、物流業の多くは労働集約型であり、多大なコストがかかるため、財務戦略が非常に重要です。本コラムでは、物流業における財務戦略の着眼点、主要な要素、管理機能について考察します。

財務戦略の着眼点

物流業はかねてより、ドライバーや倉庫作業者のマンパワーに支えられて、今日まで発展してきました。
しかしながら、労働人口の減少による人材の確保難や働き方改革の対応が求められる中、これまでの労働集約型ビジネスモデルでの長期継続的な発展が困難な経営環境となっています。
企業価値を高め、持続的に発展していくためには労働集約型から資本集約型へのシフトを図り、生産性を向上させることが求められます。
そのためには、最適な財務戦略のもとで、企業の将来を形作っていく必要があります。

物流業の財務戦略を考える上では、下記の3つの着眼点を押さえることが求められます。

(1)コスト管理

輸送費、倉庫費、人件費など多くのコストが発生します。財務戦略を通じて、これらのコストを適切に管理し、利益を最大化することが可能です。

(2)資金調達

設備投資が必要なため、資金調達が重要です。財務戦略により、最適な資金調達方法を選定し、資金繰りを安定させることができます。

(3)成長投資

業界や顧客動向の変化や社会課題解決に向けて継続的な投資が求められます。財務戦略による投資活動により、企業の成長エンジンを生み出します。

物流業の財務戦略の主要要素

物流業の財務戦略の主要要素として以下の3点が挙げられます。

(1)コスト戦略

物流業では、コストの分析と管理が不可欠です。具体的には、以下のようなコストを把握し、最適化を図ります。

①輸送コスト: 車両の運行費用、燃料費、ドライバーの人件費など。
②倉庫コスト: 倉庫の賃貸料、在庫管理費、保管費用など。
③人件費: 従業員の給与、福利厚生、教育訓練費用など。

これらのコストを定期的に分析し、コントロールすることで、全体のコストが削減され、収益性が向上します。

(2)資金調達戦略

物流業は、定期的な設備投資や経常運転資金が必要です。資金調達戦略には、以下の方法があります。

①自己資本: 企業の内部留保を活用する方法。
②借入金: 銀行などの金融機関から融資を受ける方法。
③リース: 車両や設備をリースすることで、初期投資を抑える方法。

それぞれの方法にはメリット・デメリットがあるため、企業の成長ステージ状況に応じて最適な資金調達方法を選定することが重要です。
また上記の代表的な3点以外にも、投資や補助金・助成金等も資金調達の方法として考えられ、常に最新の情報や業界動向を捉えることが重要です。

(3)投資戦略

物流業の投資戦略は、業界の特性や市場動向、技術革新、顧客ニーズの変化に基づき策定されます。
ここでは代表的な投資対象を紹介します。
自社の事業戦略や企業ステージ、ビジョンに基づき最適な投資を行うことが求められます。

①テクノロジーへの投資
・倉庫、配送センター内の自動化技術やロボットの導入により、作業効率を向上させコストを削減します。
・物流管理ソフトウェアやトラッキングシステムの導入により、リアルタイムでの情報管理や顧客サービスを向上させます。
②サステナビリティ投資
・環境に配慮した梱包材や輸送手段の利用により、持続可能なビジネスモデルを構築します。(グリーン物流)
・電動車両や再生可能エネルギーの導入により運営コストと環境負荷を低減します。
③ネットワークの拡大
・地域や国を超えた新たな市場進出への投資を行い、顧客基盤を拡大させます。
・パートナーシップの構築により、サービスの幅と奥行きを拡げます。
④人材への投資
・従業員のスキル向上を図るための研修プログラムを実施し、業務の効率化を促進します。
・従業員の満足度を高めるための職場環境の改善や福利厚生の充実を図り、働きやすい職場環境を整備します。
⑤リスク低減に向けた投資
・BCP(事業継続計画)の観点から物流拠点や配送機能を複数抱えるなど、災害やパンデミック等のリスクに備えた計画を立て、即座に対応できる体制を整えます。

財務戦略における管理機能

物流業の財務戦略における3つの管理機能を紹介します。

(1) リスクの管理

物流業は、様々なリスクにさらされています。リスク管理のためには、以下のアプローチが考えられます。
①保険の活用: 輸送中の事故や損失に備えて、適切な保険に加入すること。
②多様な輸送手段の確保: 複数の輸送手段を持つことで、特定の手段に依存しない体制を構築すること。
③サプライチェーンの見直し: サプライチェーン全体を見直し、リスクを分散させること。

(2)財務指標の管理

財務指標を定期的にモニタリングし、経営判断に活かすことが重要です。具体的には、以下の指標を注視します。
①利益率: 売上に対する利益の割合を把握し、コスト削減の効果を測定します。
②キャッシュフロー: 企業の資金繰りを把握し、資金調達のタイミングを見極めます。
③在庫回転率: 在庫の効率的な管理を行い、無駄なコストを削減します。

(3)戦略進捗状況の管理

策定された財務戦略が計画通りに進捗しているかを監視し、必要に応じて調整を行うことが必要です。上述の財務指標の管理と合わせて以下の視点での管理が考えられます。
①投資効果の管理:財務戦略における投資に対しての効果がどのように出ているのか、またどれだけの業績インパクトを与えているのかを定量的に捉え、追加投資や計画修正の判断材料とします。
②KPIの評価:財務戦略の成功を測るための重要業績評価指標(KPI)を設定し、期中での達成度を評価します。

これらの管理・評価にあたっては、現状や実態を捉えた後に適切な調整を行うことが求められます。 場合によっては戦略の見直しも必要になるため、財務戦略の管理にあたっては柔軟な対応が肝要です。

まとめ

物流業における財務戦略は、企業の競争力を高め、持続可能な成長を支えるために不可欠です。
コスト管理、資金調達、成長投資を適切に行い、収益性を高める攻めの戦略とリスク管理、財務指標管理による企業価値の毀損を防ぐ守りの戦略の両輪を備え、将来に向けた効率的な運営を実現することが求められます。
これにより、物流業は変化する市場環境に柔軟に対応し、顧客に高品質なサービスを提供することができるでしょう。

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