COLUMN

2023.01.19

企業価値向上とコーポレートサステナビリティを実現

  • 企業価値向上

企業価値向上とコーポレートサステナビリティを実現

不確実性の高い現在の経営環境において、中長期的な企業価値向上や競争力強化に繋げるためにはSDGs・ESGにつながる「非財務資本」を駆使し、戦略的にCSV活動に取り組むことが必要です。その過程では、財務情報だけでなく非財務情報を可視化して全社に展開・浸透させることが重要となりますが、その指針となるのが企業価値ビジョンです。

企業価値のアップデート

財務資本+非財務資本=企業価値へ

従来、企業価値は財務資本(売上高、総資産、フリーキャッシュフローなど決算書上の情報)をもとにDCF法(ディスカウント・キャッシュフロー)によって評価されてきました。企業をキャッシュの創出力で評価し、その目的は株主に対する経済的利益の最大化が中心でした。言い換えれば企業と株主のWin-Winの関係を維持する事だけを考えていればよかったのです(狭義の企業価値)。
しかし2000年以降、会計上の純資産の何倍の時価総額になっているかを示す指標であり、企業価値の代理変数ともいわれる「PBR(株価純資産倍率)」において、日本と世界の水準は開きが大きくなってきています。
PBRの長期トレンドにおいて日本は近年1~1.5倍の間で推移していますが、米国平均は3~4倍程度、英国平均は2倍程度で推移しています。
PBRは、一般的に1倍未満だと解散価値を下回る企業価値毀損の状況であるといえますが、PBR1倍超の部分こそ、帳簿上の価値を上回る部分として、上場会社の追加的な価値創造といえるのです。

非財務情報における企業価値向上

新たな企業価値創出モデル

この「見えざる価値」について国内でも認知が進んできています。2021年6月には東京証券取引所より、改定CGC(コーポレートガバナンス・コード/企業統治指針)が発表されました。その中でサステナビリティに関する取組みとその適切な開示が促されており、主な内容として、SDGsやTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)といった気候変動をはじめとする地球環境問題への対応、人権への配慮など国際的な課題への対応を企業に強く求めています。
呼応するように企業価値創出プロセスも変化を遂げてきています。これまでの企業価値サイクル、いわば投資家から集めた資金を調達コスト以上の利回りで運用し投資家に還元する善循環プロセスに加え、"どのように(どうやって)"資金を集めるか、そして"何に(どこへ)"投資するのか、といった価値観が加わり、ステークホルダー全体との関係向上を企業価値として捉えるようになったのです。(広義の企業価値)

2020年9月に国際統合報告評議会(IIRC)より示された「国際統合報告フレームワーク」では、財務資本だけでなく非財務資本(製造資本、知的資本、人的資本、社会・関係資本、自然資本)も活用・蓄積することで価値創造を行っていくことを指針として掲げており、これがこれからのスタンダードになってきます。現在、ESGやSDGsが企業価値に与える影響を定量的に計測するモデルはまだ確立されていないものの、従来のDCF法に従うのであれば、①フリーキャッシュフローの最大化と②資本コストの低減という2つの切り口で便宜的なモデル化が可能です。(図表)

①フリーキャッシュフローの最大化にむけて、直面する社会問題をビジネスチャンスとして捉え、事業として取組むことで売上・利益確保の機会を増やすことが可能。
②資本コストについては株主資本コストの構成要素であるβ値(ボラティリティ)は企業リスクを表し、持続的な事業を行うことで低減が可能。

この非財務資本と企業価値の関係を定量的に示すモデルは最前線で研究が進められており、いずれはより蓋然性・汎用性の高い数理モデルが展開されるものと推察します。経営者とCFOにおかれては、まず自社で非財務KPIを設定し、中長期的に収益及び企業価値との相関を観測するのが望ましいといえます。

非財務情報における企業価値向上図:タナベコンサルティング作成

持続的成長に向けた企業価値ビジョン

コーポレートサステナビリティの実現

企業価値向上に向けて、財務資本とともに非財務資本が重要であることは説明しましたが、それらの情報を可視化し社内に浸透させ、対外的にアピールするためには「企業価値ビジョン」の設計が必要不可欠です。
企業価値ビジョンの設計には7つの重点テーマを推進することが有効です。

持続的成長に向けた企業価値ビジョン図:タナベコンサルティング作成

1.パーパスの再定義とMVVの確立

・自社の戦略設計する上での判断基準となるパーパスのアップデ-トとMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)の確立

2.長期ビジョンロードマップの策定 ~経営資源の再配分とマイルストーンの策定~

・パーパスを軸とした長期ビジョンの設定とその実現にむけたロードマップの策定
・将来目指すべき事業ポートフォリオと競争優位性を実現するバリューチェンの再設計

3.価値創造ストーリーの策定 ~持続的成長を描くためのロジックの策定~

・価値創造プロセスの明確化とマテリアリティ年度別KPIの設計により、持続的成長のロジックを描く
・マテリアリティ年度別KPIとマテリアリティマネジメント体制の設計

4.人的資本計画の策定 ~非財務資本の中核を成す人的資本への投資計画の策定~

・非財務資本の中核を成す人的資本の可視化と投資計画の策定
・経営戦略と連動させた人材戦略の構築

5.中期経営計画 ~ビジョンを実現するための中期的アクションプランの策定~

・3~5カ年の中計経営計画(事業・組織・財務戦略)とアクションプランの策定
・戦略における数値基準(B/S、P/L、C/F)の策定

6.ガバナンス・リスクマネジメント体制の確立 ~企業価値毀損要因を排除する仕組みづくり~

・価値毀損要因の排除としてガバナンス推進体制の構築、内部統制システムの構築

7.IR・SDGs戦略 ~企業価値向上に必要な株主との対話~

・コーポレートガバナンス・コードへの対応策、ESG経営に対する取り組みなどを株主へ訴求する

① パーパスの再定義とMVVの確立

パーパスとは、企業としての存在価値・在り方やステークホルダーに対する考え方を意味し、「事業を通じて社会に貢献する価値(貢献価値)」を示します。
また、ミッション(企業使命)とは、企業の社会的役割で社会の中におけるどのような課題を解決するのかを示し、ビジョン(在りたい姿)は、目指すべき社会性、心から達成したいと願う自身の未来像、自社らしさを示します。そしてバリュー(価値観)はミッション・ビジョンを実現する(できる)ために優先すべき価値判断や行動規範を表現したものです。

②長期ビジョンロードマップの策定 ~経営資源の再配分とマイルストーンの策定~

事業ポートフォリオ戦略を具体化する際に、従来のバリューチェーンの再設計や事業間シナジーを発揮させる組織・マネジメント体制まで具体的にロードマップとして落とし込むことが重要です。

③価値創造ストーリーの策定 ~持続的成長を描くためのロジックの策定~

まず、企業価値の源泉である財務資本、さまざまな非財務資本(製造資本、知的資本、人的資本、社会・関係資本、自然資本)が何かを明らかにすることと、非財務資本についての KPI 設定が重要なポイントとなります。
この6つの資本がインプットとしてビジネスモデルに投入され、事業活動を通じてアウトプットを生み出すことに繋がり、アウトカムとしてつ6の資本が強化されるロジックを明示します。

④人的資本計画の策定 ~非財務資本の中核を成す人的資本への投資計画の策定~

人的資本戦略において大切なことは、3つの視点と5つの共通要素で現状の取り組みを評価することです。
3つの視点とは、①経営戦略と人材戦略が連動しているか、②現状と目指すべき姿のギャップが定量的に押さえられているか、③企業文化として定着しているかといった視点です。
また5つの共通要素とは、①動的な人材ポートフォリオ、②知・経験の D&I(ダイバーシティー&インクルージョン)、③リスキリング(デジタル・創造性など)、④従業員エンゲージメント、⑤場所や時間にとらわれない働き方です。

⑤中期経営計画 ~ビジョンを実現するための中期的アクションプランの策定~

単に3~5年の積み上げ式の計画立案に終始するのではなく、立案した長期ビジョンからバックキャスト(逆算思考)で中期経営計画を描くことが大切です。
10年ビジョンであれば3カ年中期経営計画を3回転させるイメージで、アクションプランと戦略推進における数値基準まで設計します。

⑥ガバナンス・リスクマネジメント体制の確立 ~企業価値毀損要因を排除する仕組みづくり~

特に、意思決定における取締役会の位置付けと機能の設計が重要になります。
形式的な取締役会ではなく、経営の監督と執行の分離を目的とした取締役会の再設計、監査役会・監査委員会・指名委員会の設置を含めた自社における最適なガバナンス体制を構築する必要があります。
また、決めたルールがしっかりと守られているかをチェックする監査システムの設計も不可欠です。

⑦IR・SDGs戦略 ~企業価値向上に必要な株主との対話~

昨今改訂されたコーポレートガバナンス・コードに対応し、「投資家と企業の対話ガイドライン」にのっとって情報開示を進める必要があります。
投資家への適切な情報開示と発信が企業価値にも大きく影響するためです。
例えば、株主通信の見直しとして業況報告や商品情報だけではなく、株主に訴えたい話題を幅広く捉えた情報発信とすることや、オンラインアニュアルレポートを策定し、中期経営目標やトップコメントなどをインタラクティブ(双方向的)かつリアルタイムに発信します。
コーポレートコミュニケーションの一環として、これまで発信してきたコンテンツ(動画・映像)をより視認性・閲覧性の高い発信方法へ改善することも不可欠です。

財務資本と非財務資本を有機的に統合し活用していくことで、持続的な企業価値向上(コーポレートサステナビリティ)につながるでしょう。

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