管理会計とは?導入のメリットとポイントを解説
- 資本政策・財務戦略
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管理会計は、企業内部の意思決定を支援する目的として企業のマネジメントで使われる会計の枠組みです。財務会計が外部のステークホルダー向けに過去の業績を報告するのに対し、管理会計は経営者や管理職が未来の計画や戦略を立てる際に活用するための情報を提供します。
管理会計は100社あれば、100通りの枠組みがあります。本コラムでは、管理会計の導入が企業にどのような意義をもたらすのかを解説し、その重要性について考察していきます。
そもそも管理会計とは
管理会計の定義と特徴
管理会計は、企業内部の意思決定を支援するために設計された会計手法です。財務会計は過去の業績を記録し、外部に報告することを目的としていますが、管理会計は未来の計画や戦略を支援するための情報を提供する点で異なります。例えば、財務会計が「昨年度の売上高」を報告するのに対し、管理会計は「来年度の売上目標を達成するための戦略」を立案するためのデータを提供します。
財務会計と管理会計の違いと目的を整理すると、以下のようになります。最も大きな違いは管理会計は、企業内部で活用されるという点です。
①財務会計:外部(利害関係者)への報告目的で作成。会計基準など、一定のルールに準じて処理される。
②管理会計:経営者の意思決定や組織内部の業績測定・業績評価に役立てる目的で作成。
競争が激化する現代のビジネス環境では、迅速かつ正確な意思決定が求められています。市場の変化に対して、柔軟に対応し、限られた経営資源を効率的に活用するためには、管理会計の導入が欠かせません。管理会計は、企業の成長を支える重要な基盤として、経営の質を向上させる役割を果たすことができます。
管理会計でマネジメントの対象となるのは利益です。利益は売上高から費用を引いた算式で算出されますが、この算式で考えると、利益は「結果として残るもの」という発想にとらわれがちになります。マネジメントではまず、事業継続に必要な利益を求め、それをベースに必要な売上高を算出するという組み立て方が重要になります。そのツールとして「変動損益計算書」があります。損益計算書を能動的にコントロールし、利益を生み出す収益モデルを構築するために有効な手法であると理解してください。
変動損益計算書の設計では費用を「変動費」と「固定費」に区分します。変動費は売上高に比例して増減するコスト、逆に固定費は売上高の増減に関係なく、期間に比例して発生するコストです。また、売上高から変動費を引いた利益を限界利益と呼びます。限界利益は企業あるいは事業が生み出す付加価値に相当し、その限界利益から固定費を引いたものが利益になる構図で、詳細に実態を把握することができます。
また、管理会計には、以下のようなツールや手法が他にもあります。
①予算管理:企業全体や部門ごとの予算を設定し、実績と比較することで計画の進捗を管理します。
②原価計算:製品やサービスのコストを詳細に分析し、収益性を評価します。
③業績評価:部門や個人の業績を評価し、改善点を特定します。
④KPI(重要業績評価指標):企業の目標達成度を測定するための指標を設定し、進捗を管理します。
管理会計導入のポイント
意思決定の質を向上させる
管理会計は、経営者が感覚や経験だけでなく、具体的なデータに基づいて意思決定を行うことを可能にします。例えば、売上予測や市場分析のデータを活用することで、製品開発やマーケティング戦略の方向性を明確にすることができます。財務会計は費用の「発生要因」で捉えますが、管理会計は費用の「性質」で捉えることができます。事業部門や従業員管理、投資判断や販売価格の決定などの判断に用いることができ、これにより、意思決定のスピードと精度が向上し、競争環境に迅速に対応することが可能になります。
経営資源の最適配分
企業が持つ資源は限られています。資金、人材、時間といった経営資源を効率的に活用するためには、管理会計が提供するデータが欠かせません。例えば、予算管理を通じて部門間のリソース配分を公平かつ効率的に行うことが可能になり、これにより、無駄を削減し、企業全体の生産性を向上させることができます。
また、原価計算を活用することで、製品やサービスの収益性を詳細に分析し、利益を最大化するための戦略を立てることができます。企業あるいは事業が利益を上げ、または生産性を高めるための独自の仕組みとして運用していくことがポイントです。
組織の透明性とコミュニケーションの向上
管理会計は、部門間の情報共有を促進し、組織全体の透明性を高めます。例えば、KPIを設定し、全社員が目標を共有することで、組織全体の一体感が生まれます。これにより、社員一人ひとりが企業の目標に向かって協力し合う環境が整います。
さらに、管理会計を活用することで、経営陣と現場の間のコミュニケーションが円滑になります。経営陣が現場の状況を正確に把握し、適切な指示を出すことが可能になるため、組織全体のパフォーマンスが向上します。
おわりに
管理会計は、企業の成長を支える重要な基盤です。意思決定の質を向上させ、経営資源を最適に配分し、組織の透明性を高めることで、企業は競争力を強化することができます。
今後、管理会計を活用することで、企業はより競争力を高め、持続的な成長を実現することが期待されます。特に、デジタル技術の進化により、管理会計のツールや手法はますます高度化しており、これを活用することでさらなる成果を得ることが可能です。その中でも、データを効率的に活用するためのツールとして、「ダッシュボード」という言葉を耳にしたことはありますでしょうか。複数のデータを視覚的に分かりやすく集約・表示し、情報を一目で把握できるツールです。ダッシュボードは、管理会計とは非常に相性が良く、ビジネスの現場では、経営状況やKPI(重要業績評価指標)を可視化して、迅速な意思決定をサポートするために活用されています。
管理会計の導入を検討している方は、まずは小さなステップから始めてみてはいかがでしょうか。例えば、予算管理やKPIの設定といった基本的な手法を導入することで、企業の経営に大きな変化をもたらすことができます。ぜひ、管理会計を活用して、企業の未来を切り拓きましょう。
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