財務会計と管理会計の違いは?
- 資本政策・財務戦略
閉じる
企業の経営活動を支える会計には、大きく分けて「財務会計」と「管理会計」の2つがあります。これらはどちらも重要な役割を果たしますが、その目的や利用者、情報の性質、報告形式などにおいて大きな違いがあります。本コラムでは、財務会計と管理会計の違いを明確にし、それぞれの特徴や役割について詳しく解説します。
Ⅰ.財務会計と管理会計の定義
財務会計と管理会計の違いを述べる前に、まずはそれぞれの会計の定義を以下に記載します。
財務会計とは
財務会計は、企業の財務状況や経営成績を外部の利害関係者に報告するための会計です。損益計算書や貸借対照表、キャッシュフロー計算書などの財務諸表を作成し、株主や投資家、金融機関、税務当局などに提供する際に活用されるため、財務会計は、企業の透明性を確保し、外部の信頼を得るために不可欠な役割を果たします。
管理会計とは
管理会計は、企業内部の経営者や管理者が意思決定を行うための情報を提供する会計です。財務会計が外部向けであるのに対し、管理会計は内部向けの会計であり、経営戦略の立案や業績管理、コスト削減など、企業内部の効率的な運営を支援するために活用され、企業の競争力を高めるための重要なツールです。
これらが財務会計と管理会計の定義となります。
一言でこれらを言い換えると財務会計は「外部向けの過去の業績報告ツール」、管理会計は「内部向けの未来志向の意思決定ツール」と表現できます。
Ⅱ.管理会計と財務会計の違い
では、財務会計と管理会計の定義を押さえたうえで、それぞれの違いについて以下で述べていきます。
今回は目的・利用者・報告形式と基準・時間軸の4つの視点で、財務会計と管理会計の違いを解説していきます。
目的
(1)財務会計の目的
財務会計の主な目的は、外部の利害関係者に対して企業の財務状況を正確に報告することです。
これにより、株主や投資家は企業の業績を評価し、投資判断を行うことができます。
また、金融機関は融資の可否を判断し、税務当局は適切な税金を徴収するための基礎情報を得ることができます。
(2)管理会計の目的
管理会計の目的は、企業内部の意思決定を支援することです。例えば、経営者や管理者は、管理会計を活用して以下のような課題に対応します。
①コスト管理: 部門別や製品別のコストを詳細に分析し、無駄を削減する。
②業績評価: 部門やプロジェクトごとの収益性を評価し、改善策を立案する。
③意思決定支援: 将来の投資や事業展開に関する意思決定を支援するためのデータを提供する。
利用者
(1)財務会計の利用者
財務会計の利用者は、主に外部のステークホルダーです。
具体的には、以下のような人々が財務会計の情報を利用します。
①株主や投資家: 企業の業績を評価し、投資判断を行う。
②金融機関: 融資の可否を判断する。
③税務当局: 適切な税金を徴収するための基礎情報を得る。
④取引先: 企業の信用力を評価する。
(2)管理会計の利用者
管理会計の利用者は、企業内部の経営者や管理者です。
具体的には、以下のような人々が管理会計の情報を利用します。
①経営者: 経営戦略の立案や意思決定を行う。
②部門管理者: 部門の業績を評価し、改善策を立案する。
③プロジェクトマネージャー: プロジェクトの収益性を評価し、効率的な運営を行う。
報告形式と基準
(1)財務会計の報告形式と基準
財務会計は、一般に公認会計基準に従って報告されます。これにより、外部の利害関係者が情報を比較可能で信頼性のある形で受け取ることができます。具体的には、以下のような財務諸表が作成されます。
①損益計算書: 企業の収益と費用を示す。
②貸借対照表: 企業の資産、負債、純資産を示す。
③キャッシュフロー計算書: 企業の現金の流れを示す。
(2)管理会計の報告形式と基準
管理会計は、特定の基準に縛られることはなく、企業のニーズに応じて柔軟に設計されます。
報告形式や内容は、経営者が意思決定を行いやすい形で柔軟にカスタマイズすることが一般的です。
例えば、以下のような情報が提供されます。
①部門別収益報告: 部門ごとの収益性を評価する。
②製品別コスト分析: 製品ごとのコストを詳細に分析する。
③予算編成: 将来の収益予測やコスト削減計画を立案する。
時間軸
(1)財務会計の時間軸
財務会計は、過去の取引や業績を記録し、報告することに重点を置きます。例えば、年度末の決算報告書や四半期報告書など、過去のデータを基にした情報が中心です。
(2)管理会計の時間軸
管理会計は、過去のデータを活用しつつ、現在の状況や将来の予測に基づいて意思決定を支援します。
例えば、予算編成や将来の収益予測、コスト削減計画など、未来志向の情報が重要です。
以上、目的・利用者・報告形式と基準・時間軸の4つの視点で違いを整理しました。
Ⅲ.さいごに
さて、ここまで財務会計と管理会計の違いについて述べてまいりましたが、一見すると目的が大きく異なるため、財務会計と管理会計は全く別物に感じるかもしれません。しかし、実際の企業経営においては、両者を相互補完的な関係として押さえ、それぞれの違いや特徴をうまく活用することが重要です。例えば、財務会計のデータを管理会計に活用することで、より精度の高い意思決定が可能になります。また、管理会計の成果を財務会計に反映させることで、外部ステークホルダーに対しても企業の戦略的な取り組みを示すことも可能です。
財務会計と管理会計の違いを改めて認識のうえ、ツールとしてうまく活用することで、持続的な成長へとつなげていきましょう。
関連記事
-
制度会計と管理会計の違いを徹底解説!企業成長に必要な「両輪」とは
- 資本政策・財務戦略
-
収益構造を見直して企業成長を実現!成功する5つの条件
- 資本政策・財務戦略
-
企業価値を高めるIR活動とは
- 企業価値向上
-
管理会計とは?導入のメリットとポイントを解説
- 資本政策・財務戦略
-
シェアードサービスとは?導入のメリットと成功事例
- グループ経営
- 資本政策・財務戦略
-
グループ経営におけるシェアードサービス
- グループ経営
-