COLUMN

2023.07.11

激しい経営環境変化の中でも、強い経営体質をつくるためのポイント

  • 企業価値向上

激しい経営環境変化の中でも、強い経営体質をつくるためのポイント

昨今、従来の常識が大きく変化する不確実性の高い時代に入り、企業も厳しい経営のかじ取りが求められています。
特に、世界的なインフレを背景とした資源価格の高騰に対し、適切に価格転嫁できている企業はまだまだ多くなく、従来の経営活動を維持するだけではこれまでのような付加価値を獲得することが難しい状況です。新型コロナウイルス感染症も5類感染症移行し、需要回復などプラスの面もありますが、現実には多くの企業が物価上昇による消費マインドの低下というリスクに直面しています。企業はこうした経済情勢、経営環境、時代背景の中で、収益力を維持・改善する必要があります。

経営数値本来の意味を知る

経営環境変化が激しい中でも、収益力維持・改善するためには、数値が表す本来の意味を改めて押さえておく必要があります。

1.売上高 :「顧客創造と顧客価値による支持率」
2.限界利益率(付加価値率): 「ブランドの対価である付加価値」
3.人件費 :「人材採用・育成に寄与する未来投資」
4.労働分配率: 「組織の活力を示す生産性指標」
5.営業利益率 :「儲かるビジネスモデルの設計図」
6.経常利益率 :「自己資本を蓄える存続コスト(投資コスト)」
7.損益分岐点 :「経営リスクに備える不況抵抗力」

収益力を診る、高める視点

収益というのはあくまで結果です。その結果(収益力)をいかに高めるか、そのための5つの視点を紹介します。

1.ポジショニング

業界はライバルが多いのか、ライバルがいないのか。ライバルは大手企業なのか、小企業が多いのか。業界は寡占化しているのか。業界順位はどれくらいか。オンリーワンポジションの確立のために、「誰に(顧客)」、「何を(顧客価値=コト)」を明確にしそれを徹底すること、自社が一番になれる対象(顧客、顧客価値)を決めることが重要です。

2.限界利益率(付加価値率)

競争力の大小は、限界利益率(≒粗利益率・付加価値率)に表れますが、限界利益率の変化点はどこにあるのか(限界利益率を左右するものは何か)。独自商品・サービスが、自社の売上構成比のどれだけを占めるか。提供方法の独自化とブランディング活動の強化「他社との違い」を際立たせると同時に、その「違い」を顧客へ伝える(認識してもらう)工夫がポイントです。

3.収益のベース化

スポット顧客が多いのか、ベース顧客(繰り返し取引できている顧客)が多いのか。紹介率、リピート率は高いのか。顧客の取引額は年々増加しているのか。顧客数は多いのか、1 社取引ウェイトは高いのか、低いのか。などの視点で、自社のロイヤルカスタマー(自社のコアなファン)の数は、多いのか少ないのかを確認することです。
新規顧客獲得コストは、リピート客獲得コストの3~5倍とも言われます。リピート・紹介を重視したベースモデルの確立すること、顧客が顧客を呼ぶ善循環の仕組みを確立し、ロイヤルカスタマー数の増加に結びつけることがポイントです。

4.収益の変動と格差

変動・格差は、安定を阻害する要素です。①事業・拠点(部門・店舗)②顧客 ③商品 ④月次売上高 ⑤社員5つの赤字(不採算)はないか確認が必要です。赤字・不採算が続くと、社員の利益意識の目線が下がり、改善が進まない大きな問題にもなります。
格差解消の鍵は「3S (サービス・システム・セレクト)」です。
※「サービス=事業のサービス化」、「システム=顧客獲得・収益確保のシステム化」、「セレクト=やめる・やらぬ選択の決断」の「3S」。

5.顧客創造力

持続的な収益力かどうかを診るためには、「顧客創造(≒顧客数)への投資にチャレンジしているか。それは的確で成果を上げているのか」の確認が重要です。商品開発にとどまることなく、市場開発、人材開発、システム(仕組み)開発など多岐にわたる。「未来への投資」が企業の持続的高収益を可能にします。

実務目線での現状認識

前述した5つの視点は収益力を高めるための大きな視点としてお話してきましたが、ここでは、実務目線での捉え方としていくつかの例を紹介いたします。

1.固定費カバー率

ベース収益で固定費をどれくらいカバーできているか定量的に押さえる。固定費カバー率を向上させるポイントとして、① ベース型商品(固定収入となる商品・サービス)の開発、 優良顧客のリピート確保(契約切れ防止、長期契約など)、③ スポット客からの新規ベース獲得の仕組みと先行企画など対策が挙げられます。

2.限界利益ミックス

受注頻度の高低と限界利益率の高低の2軸を置いた際に、「集客製品(フック製品)」、「主力製品」、「収益製品」など、各製品群がそれぞれどこに位置しているのかを押さえていきます。製品戦略と各製品群の限界利益率のミックスで全体の限界利益率の改善に向けて検討していきます。

3.目的別コスト

費用を目的別に分類し、付加価値を生み出すための機能別・目的別のコストバランス、推移、基準値誤差 をチェックします。
これが、費用のかけ方が「身の丈に合っているか」、「将来を犠牲にしていないか」を常にチェックし、軌道修正していくための意思決定ボードにもなります。その際、売上に対する事務コスト比率、管理不可能経費率の増加、将来のための発展コスト投資など細かく診ることが重要です。また、利益達成率だけではなく、機能別・目的別のコスト比率・収益比率をコントロールすることで戦略的な判断が可能となります。

4.間接コストと直接コスト

事業規模の拡大と共に間接コストは増加していきます。間接コストと直接コストを分けて考えることで、各事業の共通機能を集約して費用対効果を高めることができます。
間接コストと直接コストは、プロフィット部門かノンプロフィット部門かで直間の区分が変わります。間接コストは費用対効果のモノサシが少ないため、肥大化する傾向がありますので注意が必要です。直間比率の基本は8:2とし、事業モデルによって適正基準を明確にして判断していきます。

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実務目線での現状認識

図:タナベコンサルティング作成

最後に

ほとんどの会社は、よほどのことがない限り売上が上がれば利益は出ますが、ここで重要なことは、「利益を出しやすい経営体質(収益構造)をつくる」ことです。
経営環境変化が激しい中でも、「売上を上げる」、「限界利益率(付加価値率)を上げる」、「固定費を下げる」を総合的に、かつ具体的に取組んでいくことが強い経営体質をつくることに繋がっていきます。

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