【事例紹介付き】
業績マネジメントの具体的な進め方
- 企業価値向上
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業績マネジメントとは、企業やBU(ビジネスユニット)の目標達成に向けて、計画・実行・評価を行いながら業績を向上させる仕組みです。これには、KPI(重要業績管理指標)の設定、進捗管理、フィードバック、改善策の実行といった要素が含まれます。
近年では、売上高や利益の追求だけではなく、社員のエンゲージメント向上、業務プロセスの効率化、顧客満足度の向上なども業績マネジメントの重要な要素となっており、これらが有機的に結びつくことが目標達成に向かう推進力となります。
そのため、業績マネジメントといってもその範囲は限りなく膨大であり、本コラムでは「KPIの設定」「進捗管理の仕方」「フィードバックと改善策の実行」について事例を交えて紹介いたします。
1.KPI(重要業績管理指標)の設定
業績マネジメントにおける1stステップはKPIの設定です。
KPIについての詳細な説明は割愛をいたしますが、策定においては「SMARTの原則」を用いることを推奨します。
(1)S(Specific):具体的であること
あいまいな例:売上高を増やす
正しい例:特定の製品Aの販売数を増やす(販売単価を上げる)
(2)M(Measurable):測定可能であること
あいまいな例:顧客満足度を向上させる
正しい例:NPSを5ポイント改善する
(3)A(Achievable):達成可能であること
例:売上高を昨年度対比50%増加は非現実的であるが、10%であれば可能
(4)R(Relevant):事業戦略と関連性があること
例:創業間もなくシード期にある企業・BUであれば、大幅なコスト削減ではなく売上高増加に関すること
(5)T(Time-bound):期限があること
あいまいな例:新製品を4製品デリバリーすること
正しい例:四半期ごと1製品のデリバリーをすること
以上の「SMARTの原則」を用いたKPIの設定が具体的な行動、そして成果に繋がります。
事例:製造業A社のKPI
A社は受注後の納期遅延が慢性的な課題となっており、リピート受注の獲得を阻害する要因になっていました。その要因に対して以下のKPIの設定と施策を実行しました。
1.KPI:製造リードタイムを30%短縮(平均7日→5日)
施策:
(1)受注データを基に、生産スケジュールを最適化するAIシステムを導入
(2)作業員の配置を見直し、特定の工程で発生していた停滞時間を削減
2.KPI:不良品率を0.5%以下に抑える
施策:
主要サプライヤーに対して品質・納期を基軸に評価、仕入・外注先の見直し
以上、A社の原因→KPI→施策まで一連の活動により、A社の納期遵守率は83%→96%に改善し、クレーム件数の削減、リピート受注高の増加が図れました。
2.進捗管理の仕方
KPI設定後、進捗を定期的にモニタリングをすることが重要です。
モニタリングのポイントと事例について紹介します。
(1)リアルタイムで可視化する
BIツール(Tableau、Power BI など)を活用し、ダッシュボードでKPIを表示
(2)定期的なレビューを行う
週次・月次の会議で進捗を確認し、課題を抽出
(3)現場の声を反映する
KPIの数値に加え、現場のフィードバックも考慮する
多様なデータをリアルタイムで可視化するにあたり、BIツールの導入は必要事項となります。
現在も尚、各部署から必要データをExcelでバケツリレーで集計する作業を行う企業をよく拝見します。
抽出するデータの確からしさ、現場の生産性向上を目的に検討されることを強く推奨します。
事例:物流B社の進捗管理
B社は、自社配送の遅延率を低減させるために、配送時間のモニタリングを実施するようにしました。
抽出したデータは以下の通りです。
1.GPSを活用し、トラックのリアルタイムな位置情報を取得
2.各ドライバーの平均配送時間を分析し、遅延の理由を特定
結果として、配送ルートの見直しや休憩時間の調整を行い、配送遅延件数を昨対比で30%程度削減することができました。
3.フィードバックと改善策の実行
KPIの達成状況の確認後、進捗が芳しくなければ改善策を講ずる必要があります。
進捗に対するフィードバックのポイントは以下の3つです。
(1)数値に基づくフィードバックを行う
例:「A製品の販売数量が減っている」ではなく、「A製品の販売数量が目標比(昨対比)で〇%減少(未達)である」
(2)PDCAサイクルを回す
P:Plan(計画)→D:Do(実行)→C:Check(評価)→A:Action(実行)の一連の流れを止めないこと
(3)成功事例を共有する
成功事例は会社・BUで共有し、横展開を図る
特に「1.数値に基づくフィードバックを行う」は重要性が高く、仮に売上高が目標比で▲5%の企業・BUと▲50%の企業・BUとでは改善のための施策が大きく変わってきます(前者では値上げ交渉など、後者では新事業展開や新製品開発など)。改善に向けた施策を実行しても目標までのギャップが埋まらないような愚策とならないためにも注意が必要です。
事例:小売業C社のフィードバック改善
C社では、売上目標が未達の店舗が多いことが課題でした。そこで、次のフィードバックを行いました。
1.個別フィードバック
店舗ごと売上データを分析し、低迷の原因を特定(品揃え、陳列、接客など)
2.成功事例の共有
売上が好調な店舗の成功事例(製品の陳列方法、提案方法など)を毎月動画で配信
3.行動KPIの設定
「顧客への商品提案回数を1日10件以上する」など個人単位までブレイクダウンしたKPIを設定
特に「3.行動KPIの設定」は成果に繋がらない人材の行動変革を促す効果があり有効に機能した結果、C社では売上未達店舗が大幅に減少しました。
4.成功する業績マネジメントのポイント
最後に、業績マネジメントを成功させるためのポイントを以下に整理します。
(1)KPIを「目的」とせず、「手段」とする
業績向上のための指標であり、外部環境の変化などにより状況が変わった際には都度見直しをします。
(2)数値だけでなく、行動プロセスも評価する
提案件数やアポイント件数など、個人単位までブレイクダウンした行動KPIを設定しモニタリングすることで、目標達成の妨げとなる異常に早期に気づき、改善に向けた対応が図れます。
(3)データをリアルタイムで活用する
「結果」管理から「先行」管理へマネジメントを高度化するためには、最新情報をもとに意思決定をする必要があります。
これにあたりBIツール導入などシステム化は必須となります。
(4)現場の意見を重視する
現場の意見や気づきはKPIに反映できるような仕組みを整える必要があります。
以上のポイントに加え、事例企業のように、それぞれの状況に応じた適切なKPIを設定し、データを活用したマネジメントを実施することで業績を向上することが可能となります。
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