人事コラム
企業における人材採用の目的・重要性
本コラムは、ダイヤモンド社発行の「戦略起点の人材マネジメント」の第4章の抜粋記事です。
(1)人材採用の「攻めと守り」
人材採用には、「攻めと守り」の2つの視点がある。戦略を推進するため、既存人材にはない新たな人材を獲得するのが「攻め」である。例えば、DX人材やグローバル人材などがこれに当たる。一方、既存事業の延長線での欠員補充は「守り」に当たる。これまで守りの採用で安定的な成長が見込めていたが、労働力人口の減少や働く人の価値観の多様化、デジタル技術の革新といった環境変化に対応するため、昨今は明らかに攻めの要素が求められるようになっている。
ここであらためて、企業が採用活動を行う「目的」を確認していきたい。人材採用の最も重要な目的は、成長戦略を踏まえた「人的リソースの確保」である。そう考えると、企業にとって採用は極めて重要な経営課題と捉えられる。人材確保の難度が増すなか、採用活動の成否は戦略の実現に大きく影響を与え、企業の生き残りを左右するといっても過言ではない。したがって全社共通の経営課題として採用活動と向き合う必要があり、応募者に対しては採用担当部署だけでなく、経営者や現場の社員などとの接点を設けながら、自社の価値観や描く未来像を伝えることで動機付けをしていく必要がある。
(2)雇用形態の柔軟性
人材の雇用形態に柔軟性を持たせることも重要である。「成長戦略を推進するうえで必要なスキルを自社に取り入れる」という目的を中心に据えると、必ずしも「正社員・直接雇用」で人材を確保する必要はないことに気づかされる。必要なスキルがあれば、非正規雇用やフリーランス人材との業務委託契約、シニア社員やアルムナイ(退職者)の再雇用、副業・兼業者の受け入れなども視野に入る。
まず、既存社員の保有スキルを洗い出し、戦略に照らして不足があれば、そのスキルを持つ人材の確保に向けて、より柔軟な枠組みで捉えることも必要である。
(3)採用に成功する「魅力ある組織づくり」
人材採用に成功している企業は、例外なく「魅力ある組織」である。もちろん、人によって何を〝魅力〟とするかは異なるが、働く人の多くがなんらかの魅力を感じ、成長を実感できる企業に人は集まる。重要なのは、こうした魅力を仕組みとして意図的に構築していくことである。自社の組織づくりの一環として魅力をつくり、採用活動において打ち出す。これらを両輪で実行することで、人を集める採用から、人が「集まる」採用にアップデートすることができる。
また、新たな人材の採用は、組織への健全な刺激と既存社員が育つ風土を生み出す。新しい人材に業務を教える過程で既存業務が客観的に見直されたり、部下育成の経験を積む機会となったり、既存社員や組織全体にも良い影響を生むだろう。他社での経験が豊富な中途入社者は、既存社員にとって切磋琢磨する良きライバルになり得る。
こうしたプラスの効果を得るためには、新たな人材を受け入れる「組織としての対応力」が必要である。自社が大切にしている価値観を新規採用者に伝え、共感を得ながらも、それぞれが持つ価値観を受け入れられる組織に変革する。これが人材の定着につながり、強く柔軟な組織を築くきっかけになる。
採用と人材の受け入れをセットで考え、上下関係ではなく、互いを尊重できる柔軟な組織風土があるかどうか、客観的に自社の実情を見ていただきたい。
