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2025.01.21

コーポレートガバナンスとは?
株式会社の機関設計の基本

  • 企業価値向上

コーポレートガバナンスとは?株式会社の機関設計の基本

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コーポレートガバナンスとは、企業が持続可能な成長を遂げるために適切な意思決定を行うための仕組みのことを指します。単に企業の不祥事や利益相反行為を防ぐことを目的とするのではなく、企業価値の向上を通じたステークホルダーの利潤を守ることも目的に含めた経営テーマであると言えます。これらの経営テーマを全うできる経営体制であることの蓋然性を担保するためにも、株式会社においてはコーポレートガバナンス向上に向けた機関設計が重要であるといえます。
本コラムでは株式会社における機関設計のポイントを「1.基本的な機関の種類」「2.機関設計の選択肢」「3.実務上の留意点」の3つで説明をいたします。

1.基本的な機関の種類

株式会社の機関設計では、以下の基本的な機関が含まれます。

(1)株主総会
企業の最高意思決定機関であり、その役割は株主の権利を直接行使できる場を提供し、重要な経営事項を決定することにあります。具体的な権限には以下が含まれます。

A.取締役や監査役の任免を決定します。
B.定款の変更を行う権限を持ちます。
C.利益分配に関する最終的な決定を下します。
D.大規模な組織再編(合併や会社分割)に関しては株主総会の特別決裁が必要です。

(2)取締役会
取締役全員で構成されており、会社の経営戦略や重要事項を決定する中核的な役割を果たします。取締役の活動は日常業務の監督や長期的な方向性の決定に重点が置かれています。具体的な権限には以下が含まれます。

A.会社の経営戦略や中長期計画を議論し決定します。
B.大規模な投資(M&Aや大規模設備投資)
C.執行役や取締役が適切に職務を遂行しているかを監督します。

(3)監査役または監査等委員会
取締役や執行役の業務執行を監視し、法令や定款に基づいた適切な運用が為されているかを確認する役割を持ちます。具体的な役割には以下が含まれます。

A.取締役の業務執行を監視し、不正行為や違法行為を防ぎます。
B.計算書類や財務報告書が適切に作成されているかを確認します。

監査役会が3人以上の場合、監査役会を設置することができます。監査役会は、監査の業務を円滑に進めるための合議体であり、特に大規模な企業では、この形式が採用されることが一般的です。

(4)執行役
執行役は、会社法上の必須機関ではありませんが、特に指名委員会等設置会社では活用をされています。取締役会が策定した経営方針に基づいて実際の業務執行を担う役割を持ちます。日常的な経営の迅速化が図れることが設計のメリットであり、特に大規模な企業に採用されています。

2.機関設計の選択肢

会社法では、機関設計の選択肢を以下の3つの形態から選択できるものとしております。それぞれのメリット・デメリットについて以下で解説します。

(1)監査役設置会社
日本企業で最も多い形態で、監査役が取締役の業務執行を監査します。この形式では、株主総会、取締役会、監査役(又は監査役会)が主な機関として設置されます。

A.メリット
a.機関設計がシンプルで、運営コストが低い。
b.監査役が独立した立場で経営監視を行うため、一定のガバナンスを確保できる。

B.デメリット
a.ガバナンスの範囲が限定的であり、大規模な企業には監視機能が不足する場合がある。
監査役設置会社はその設計が比較的シンプルで、監督すべき範囲がそこまで広くない企業に向いているといえます。

(2)監査等委員会設置会社
取締役の中から監査等委員を選任し、その委員で構成される「監査当委員会」が取締役会のなかに設置される形式です。近年、ガバナンスの向上を求められるなかで増加している設計であります。

A.メリット
a.社外取締役が委員会に含まれるため、ガバナンスの蓋然性が高まるといえる。
b.取締役会の内部に監督機能を持つ委員会を設置するため、経営監督の迅速性が向上します。

B.デメリット
a.(1)監査役設置会社に比べて運営が複雑で、コストが増加します。
b.取締役が経営と監督の両方の責任を負うため、役割分担が曖昧になる可能性が増します。

(3)指名委員会等設置会社
指名委員会等設置会社は、経営と監督の分離を最も明確にした機関設計です。「指名委員会」「報酬委員会」「監査委員会」の3つの委員会を設置し、日常業務は執行役が担当します。この設計におけるメリット・デメリットは以下の通りです。

A.メリット
a.経営と監督の分離が徹底できます。
b.社外取締役の比率が高く、経営の透明性の向上が図れます。
c.国際的な企業ガバナンス基準に対応し易くなります。

B.デメリット
a.機関設計が複雑で運営コストが高い。

機関設計の選択肢は、企業の成長段階や外部環境の変化、求められるガバナンスのレベルに応じて柔軟に見直すことを推奨します。

3.実務上の留意点

株式会社の機関設計を検討する際には、以下の点に留意することが重要です。

(1)会社規模や業種に応じた選択
中小規模の企業ではシンプルな監査役設置会社が適している一方、大規模な企業では指名委員会等設置会社を採用することで透明性を高めることができます。

(2)経営と監督の分離
経営判断の迅速性を確保しつつ、監督機能を十分に発揮できるよう、取締役会と執行役の役割分担を明確にすることが求められます。

(3)多様性の確保
取締役や監査役のメンバー構成において、性別、年齢、国籍などの多様性を確保することは、より広い視点からの意思決定が可能となることから有効であるといえます。

(4)ステークホルダーとの対話の強化
ステークホルダーからの信頼を得るために、経営情報を可視化し、定期的な説明会やIR活動を通じたコミュニケーション機会の創出は重要です。

まとめ

コーポレートガバナンスの強化は、企業価値を高める上で不可欠です。株式会社の機関設計は、その基盤として重要な役割を果たします。特に、取締役会の構成や監査体制を適切に設計することは、経営の透明性、公正性、効率性を向上させることに寄与します。
今後も企業を取り巻く環境が変化する中で、持続可能な成長を目指すためには、ガバナンス体制を柔軟に見直し、株主やその他のステークホルダーと協調して行く姿勢が求められます。これにより、企業は不確実性の高い外部環境下においても、社会的責任を果たしながら競争力を維持・向上させることができます。

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