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2024.08.01

MBOとは?メリット・デメリットを解説

  • 事業承継

MBOとは?メリット・デメリットを解説

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MBO(Management Buy out)とは

MBO(Management Buy out)とは、企業の経営陣が投資ファンドや金融機関から資金調達を行い、既存の株主から自社の株式を買い取ることで経営権を取得するM&A手法の一つです。通常、経営陣は買収資金の一部を自己資金で賄い、残りを金融機関からの借入や投資ファンドからの出資で調達してMBOを成立させます。この手法により、経営陣が株主となり、より迅速で自由な経営判断が可能になります。MBOは1980年代に欧米で広まり始め、日本では1990年代後半から徐々に普及し始めました。当初は大企業の事業再編や外資系企業の日本法人独立などで活用されましたが、近年では中堅・中小企業の事業承継の選択肢としても注目され、実施事例が増えてきています。

MBOの基本的な仕組みは基本的には下記の通りになります。
(1)まずは買収主体(SPC:特別目的会社)の設立
(2)次に資金調達(自己資金・借入・投資ファンド等からの出資)を実施
(3)旧株主からの株式取得
(4)経営権の移転
(5)借入金の返済と株主への配当

MBO(Management Buy out)のメリット・デメリット

メリット

1.円滑な事業継続(会社全体・旧株主)
既存の経営陣が事業を引き継ぐため、社員や取引先との関係を維持しやすく、事業の継続性が確保されます。旧株主にとっては、後継者問題の解決策のひとつとして有効な選択肢になります。旧株主は保有株式を売却し現金化できます。また、売却時の企業価値によっては、のれん代(企業価値に上乗せされた買収価格)を得られる可能性があります。

2.事業の継続性の担保と保有技術・ノウハウの継承(地域社会)
事業の継続性が保たれることで、地域の雇用が維持されます。また培われた技術やノウハウが失われず継承される可能性が高まります。

3.敵対的買収の防止(現経営陣)
上場企業においては、MBOを実施することにより、望まない外部からの買収を防ぐことができます。

4.長期的視点での経営が可能(現経営陣)
MBOを実施することで、経営陣は短期的な業績向上のみにこだわることなく、中・長期的な視点で経営を展開することが可能になります。株主からの短期的かつ過度な利益要求に縛られることなく、時間軸を長く持ちながら、会社の成長に資する戦略を立てやすくなります。

5.社員からの理解が得られやすい(社員)
通常のM&Aと比較して、MBOは現経営陣が基本的に引き続き経営を担うため、社員からの理解を得やすいというメリットがあります。インナーブランディングの観点を押さえ、適切に社内発信を展開すれば、MBOによって、社員のモチベーション工場・維持が期待できます。

6.意思決定の迅速化と効率化
株式は経営の支配権そのものに直結します。MBOを通じて経営の支配権が集中することにより、会社の意思決定が自由かつ迅速になります。早く大きくなっている昨今の世の中の潮目の変化に対応していくために、MBOにより迅速な意思決定がしやすい体制を作っておくことで、経営の効率化が図られやすいメリットがあります。

デメリット

1.既存株主との対立リスク
MBOを実施する際、経営陣はできるだけ安く株式を買い取りたい一方で、既存株主はより高い価格で売却したいと考えるため、利益相反による対立が生じる可能性があります。この対立が激化すると、交渉の結果、MBOが不成立になるリスクもあります。

2.財務状況の悪化の可能性
MBOの実施にあたって、多くの場合、金融機関や投資ファンドからの融資が必要となります。これにより、会社の債務が増加し、利息の返済負担が生じます。財務状況の悪化が不可避であるとともに、返済期間の設定によっては、会社の資金繰りを圧迫する可能性があります。昨今金利が復活し、利上げ基調になってきており、金利負担の部分は注意しながら金融機関や投資ファンドと交渉する重要性が高まっています。場合によっては個人保証を求められる可能性もあり、現経営陣にとってはリスクになります。

3.経営変革が起こりにくい
メリットの裏返しの側面もあります。経営権が集中することで、逆に経営に変革が起こりにくくなるというデメリットがあります。現経営陣の現状認識力や決断力が乏しいと、環境の変化に適応しきれず、長期的にはかえって経営が悪化するリスクがあります。

MBOにはメリットとデメリットが存在します。MBOを検討する際は、自社にとってのメリット・デメリットの点を十分に考慮し、自社の状況に適しているか、現経営陣で道を切り拓いていくこができるかを慎重に判断することが重要です。

今後のMBO(Management Buy out)の活用可能性について(まとめ)

MBOは、中堅・中小企業にとって、事業承継問題の解決や成長戦略の実現、従業員のモチベーション向上など、多くの可能性を秘めた手法です。一方で、財務リスクや利益相反の問題など、慎重に検討すべき課題も存在します。成功のカギは、綿密なMBOの計画立案・適切な企業価値評価・ステークホルダーとの丁寧なコミュニケーション、そして実行後の明確な経営戦略にあります。また、法的・税務的な専門知識も不可欠です。当事者間だけではなく、円滑な交渉のために専門家のサポートが必要になります。

今後更なるグローバル化が進み、世界のどの国も経験したことのない高齢社会に直面している日本において、MBOの需要はさらに高まると予想されます。同時に、ESG投資の普及やSDGsへの関心の高まりにより、MBOの在り方も変化していく可能性があります。

中堅・中小企業がMBOを成功させるためには、世の中の動向を注視しつつ、自社の状況や目的に合わせて最適なアプローチを選択することが重要です。また、専門家のサポートを積極的に活用し、リスクを最小限に抑えながら、MBOのメリットを最大限に引き出す努力が求められます。MBOは、適切に実施されれば、企業の持続的成長と地域経済の活性化に大きく貢献する可能性を秘めています。今後、さらなる事例の蓄積と研究が進み、日本の中堅・中小企業の新たな選択肢として、MBOがより一層普及していくことが期待されています。

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