MEBOとは?メリット・デメリットを解説
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MBO(マネジメントバイアウト)の単語を聞いたことがある方は多いかと思いますが、EBO(エンプロイーバイアウト)やMEBO(マネジメントアンドエンプロイーバイアウト)は初めて聞いたという方が多いのではないでしょうか。
後継者不在の中堅・中小企業が増える中、脚光を浴びつつあるMEBOの概要とメリット・デメリットについて解説いたします。
MEBO(マネジメントアンドエンプロイーバイアウト)のメリット・デメリット
MEBOとは、経営陣と従業員が出資することで企業の株主になることであり、MBO(マネジメントバイアウト)とEBO(エンプロイーバイアウト)を組み合わせた出資方法です。
MBOとは、対象会社の役員がファンドや金融機関から株式買取資金を調達し、オーナーが保有する株式を買い取り、対象会社の経営権を取得する方法です。このスキームのメリットは、オーナーにとっては対象会社の保有株式を現金化することができ、経営権も譲渡できる点です。オーナーは創業者利益を確定することが可能となり、事業を理解し、すでに人間関係ができている対象会社の役員が新たな代表となるため、対象会社の従業員にとっても引き継ぎのハードルが低くなります。ただ、役員個人に買取資金がない場合、多額の出資や借り入れが必要となるため、資金調達が難しいというデメリットがあります。MBOを実行する際は、SPC(特定目的会社)を設立し、対象会社の収益力(返済力)にて金融機関から調達した借入金を返済するため、借り入れ返済の負担が発生します。
MBOの代表的は流れは以下の通りです。
▼MBOの流れ
1.受け皿会社となるSPCの設立
2.金融機関からの資金調達
3.SPCが対象企業の株式を現経営者から買い取る
4.対象企業とSPCの合併
EBOとは、従業員が対象会社の株主になるスキームです。株主が従業員であるため、株主が多数となる場合があります。MBOと近いスキームですが、株主が従業員のため信用力に課題が残る点があり、金融機関からの借り入れがスムーズに行われるように準備する必要があるというデメリットがあります。また、個人保証を誰が引き継ぐのかを決める必要があります。従業員が退職する際に、対象会社の株式をどのような形で引き継ぐのかルールを整備する必要があります。
先述のMBO・EBOの組み合わせがMEBOであり、経営陣(役員)と従業員が企業の株主となります。MEBOが昨今注目される理由は、経営陣だけでなく、従業員を株主として経営に参加させることで、従業員の士気を上げることができる点です。
出所:タナベコンサルティング
MEBOの成功事例
MEBOの成功事例として挙げられる会社に、株式会社日本レーザーがあります。日本レーザーは、レーザー・光学機器の輸入販売商社として1968年に設立し、1971年に日本電子株式会社の子会社となった。その後、2007年にJLCホールディングス株式会社を設立してMEBOを実施。上場親会社からMEBOで独立した日本で唯一の企業となっています。
当時、同社には「他責の文化」が蔓延(まんえん)していたが、モチベーションの高い優秀な社員も数多く在籍していたことから、リスクを取ってMEBOという「勇気ある経営」を選択。現在の株主の構成比は、4割が役員、4割が社員となっています。加えて、全社員が株主であり、パート社員や派遣社員も株主になれる仕組みを構築しています。
一般的には投資ファンドやVC(ベンチャーキャピタル)を活用し、役員持ち株会・従業員持ち株会が株式を保有するケースが多いです。だが、日本レーザーは金融機関借入を活用したファイナンス型MEBOスキームによりEXIT(売却)を不要としており、真の意味で「全社員=株主」を体現しています。
MEBO導入のポイント
企業の株式をMEBOし、役員陣と従業員で株式を保有する形態を「コーオウンドビジネスモデル」と呼びます。コーオウンドビジネスモデルに移行することで、従業員の経営意識の向上や企業への帰属意識を醸成できる効果があります。そのためには、①経営状況の情報共有、②利益の分配、③経営者意識の醸成が求められます。
MEBOによって、役員・従業員が株主になることによって、株主総会の参加者は必然的に企業に役員・従業員として関わっていることになります。そのため、株主総会のみではなく、定期的に経営状況を従業員に広く共有する必要があります。役員・従業員は株主として企業の業績次第でもらえる配当金が変わってくるため、より経営に参画する意識が醸成されます。会社に関わる方々が業績に関心を持ち、業務に取り組むカルチャーが生まれることがMEBOによる大きなメリットと言えます。
ただし、役員・従業員が株主になることで、役員や従業員にとって都合の良い会社運営(やみくもに役員報酬や賃金を上げる、業績度外視の待遇となる)になる可能性も生じます。そのため、MEBOの経営を充実させるには、役員・従業員の経営者意識は必須と言えます。中長期的持続可能な会社運営を念頭に置いた判断を皆が持ち、短期的な利益追求のみではなく、中長期的な企業価値向上に向けた取り組みが必要です。
ここまで、MBO・EBOの説明、MEBOの成功事例およびMEBO導入のポイントについて解説いたしました。2024年現在では、MEBOの事例は多くないが、今後増えてくる事業承継のスタイルだと考えられています。後継者不在の企業が増える中、企業に属する役員・従業員が株主となり、主体的に経営に関与することで企業の持続的発展を実現させる方法です。従来のオーナー型中堅・中小企業が親族外に資本の承継をする際は、IPOやM&A等の手法が主流でしたが、オーナーの後継者が不在であっても今まで企業経営に携わってきた役員・従業員が後継者を担い、資本も安定させることができるMEBOは今後も増えるでしょう。後継者不在の中堅・中小企業において、MEBOは今後益々注目が予想されます。社内承継・第三者承継をご検討中の方は、親族内承継だけではなく、MEBOも検討されてはいかがでしょうか。
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