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2024.08.01

事業承継をスムーズにおこなう準備のポイントについて

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事業承継をスムーズにおこなう準備のポイントについて

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経営者の高齢化が叫ばれている昨今、事業承継は経営課題の重要項目の一つになっている企業が多いのが実情です。経営は、「事業が上手くいって50点、事業承継が上手くいって100点」と言われます。事業承継を円滑に進めていくためにはどのような準備が必要なのか、ポイントについて解説していきます。

事業承継の動向について

2024年4月11日プレスリリースの帝国データバンク『全国「社長年齢」分析調査(2023 年)』によると、社長の平均年齢が60.5歳で33年連続上昇しており、社長の高齢化が止まらない状況です。一方、2023年11月21日プレスリリースの同社『特別企画:全国「後継者不在率」動向調査(2023 年)』によると、後継者「不在率」は、過去最低の 53.9%と改善傾向が続いています。事業承継の選択肢については、「内部昇格」が初のトップ(35.5%)となりました。これまでトップであった「同族承継」(33.1%)を上回り、脱ファミリー化が加速しています。

中小企業庁の『中小企業・小規模事業者におけるM&Aの現状と課題』によると、2025年までに、70歳(平均引退年齢)を超える中小企業・小規模事業者の経営者は約245万人となり、うち約半数の127万人(日本企業全体の1/3)が後継者未定と言われています。現状を放置すると、中小企業・小規模事業者廃業の急増により、2025年までの累計で約650万人の雇用、約22兆円のGDPが失われる可能性があると想定されています。

事業承継における後継者不在率は改善傾向であるものの、後継者不在により、特殊な技術を持った企業が廃業を選択せざるを得ないケースもあります。また、突然、先代経営者が亡くなられたことにより、急遽後継者であるご子息が企業に入社し、先代経営者時代の経営陣とのバランスに苦しみながら、苦労して事業承継を実現した企業もあります。

事業を継続していくためには、周期は個社別の事情により異なるものの、どの企業にも必ず事業承継のタイミングは発生してきます。事業承継に向けて、本経営課題を先送りにせず、早めに長期的な目線での事業承継計画を立案して、準備を進めていくことが企業の永続性の観点からも非常に重要になってきます。

後継者の選定

~誰を後継者に指名するのか~

事業承継の第一歩が「誰を後継者に指名するかを決めること」になります。最もふさわしい人材は、経営理念に共感をしており、内容をよく理解した上で事業を継続的に成長させて行ける人材である必要がありますが、事業への情熱・覚悟や人望、実務理解度等々、検討を重ねていく上で重要になる判断軸は多岐にわたってきます。また、判断軸の優先度は各企業によって変わってくる部分があるでしょう。そして、各企業によって制約条件も異なってきます。例えば、後継者は経営者の長男しか選択肢がない、経営者の子供と娘婿の中から適切な人材を選びたい、経営者の親族と優秀な従業員とどちらかから選びたい、後継者人材がいないため第三者への承継を考えたい等々、選択肢の幅は各企業の制約条件によって変わってきます。その中で検討を積み重ね、後継者を決定していくことが経営者には求められてきます。

後継者が決定すると、次に事業承継へ向けた承継計画を検討していくこととなります。承継計画に関しましては、後程記載させていただくので割愛いたしますが、併せて後継者の育成も必要となってきます。社内外でどのタイミングでどういう経験を積ませて、または教育を受けさせて、来たるべくタイミングに後継者としてふさわしい人材に成長してもらうか、そこをもくろんだ中での人材育成計画が必要となってきます。
その上で次に準備を進めていくこととしては、資本面と事業面の事業承継対策になってきます。

資本の承継について

資本面の承継については、大きく5つの選択肢があると考えます。1つ目が親族内での承継(親族間での株式の移転)、2つ目がホールディング化によって資本と経営の分離による承継、3つ目がIPOによる株式を親族外へ承継、4つ目がMBO(MEBO)による自社の有能な幹部社員等へ承継、5つ目がM&Aによる第三者へ承継になります。
各選択肢にメリットとデメリットがあり、所有権(相続発生による株式の分散を防ぐ等)や税務(相続税、贈与税)の観点を踏まえ、事前検討した上で自社にとって最適な対策を検討しておく必要があります。

MBO(MEBO)の場合、承継する自社社員が金融機関から資金調達をして株式を買い取ることが想定されるため、この方法を選択した場合は事前に金融機関とよく話をし、協力を得られる体制を構築しておくことも本スキームを成功させる上での鍵となってきます。

また、日本国内でのM&Aの件数は増加傾向にあり、M&Aによる第三者への承継も一昔前のように抵抗感のあるものではなくなってきており、有効な選択肢の一つとして検討される機会が増えております。

事業の承継について

事業の承継については、事業承継計画を作成した上で進めていくことが重要になってきます。計画を立案した上で、経営者と後継者が綿密にコミュニケーションを取っていくことが必要です。この「経営者と後継者がコミュニケーションを取る」ということを実施しておらず、承継のタイミングになってバタバタとするパターンが意外と多くあります。これを防ぐべく、ある企業では、毎月決まった日に2時間、社長と後継者が事業の将来についてコミュニケーションを取る時間を設けており、数年後の来るべく承継のタイミングに向けて着実に準備を進めている例もあります。

事業承継計画には、時間軸を設定した上で、事業承継戦略を構築していく必要があります。例えば、後継者育成をどのようなステップで進めていくか、後継体制をどうしていくか(現役員はどうなるか、次世代の幹部候補は誰を育成して、どういう体制を目指していくか)、資本・相続の対策はどうしていくか、事業の成長戦略はどのように描いていくか等々が考えられます。資本面の対策のみではなく、事業をどう引き継いでいくかを考えた上で計画をしっかりと立て、経営者と後継者でコミュニケーションを取り、協力して進めていくことが事業承継では大切になってきます。

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