COLUMN

2024.04.01

事業承継という一生に一度の戦略だからこそ押さえたいポイント

  • 資本政策・財務戦略

事業承継という一生に一度の戦略だからこそ押さえたいポイント

事業を興して会社を立ち上げ、成長させて企業価値を高め、社会に貢献し続ける、その過程で多くの企業は増資等の資本政策、借入等の資金調達は必須となります。
そうして積み上げた資本を次代にどう引き継いでいくか、経営者にとって承継は多くの場合一生に一度の重要な出来事です。「事業に成功して50点、承継に成功して100点」と言われるほど、そのプロセスは企業の持続性や成長戦略に大きなインパクトを与えます。経営トップの資源配分をどう繋いでいくか、まさにトップの専権事項として、重要な経営戦略として取り組む必要があるテーマです。
しかし、冒頭記載のように多くの経験を積める領域ではないため、誰しも漠然と不安を抱きやすいテーマでもあります。

"不安"を"不足"に変える計画性

10年スパンの長期的な戦略として全体設計をする

漠然とした不安の正体は、"何をすればいいかわからない"です。逆に言うと、何をすればいいかがわかれば、不安はなくなるということです。それを筆者は"不安を不足に変えていく"と述べています。
多くの経営者は、やることが明確になった際の実行力・突破力は持ち合わせているため、このプロセスが非常に重要となります。ではまず何から準備するか、自分の"引き時"を決めることです。60歳・65歳・70歳・・・ご自身で意思を持って設定頂きます。「判断が鈍ったら」「経営者として衰えを感じたら」という抽象的な時期ではなく、具体的に設定することが望ましいです。
この際のポイントは、例えば65歳になったら必ず引退しなければならない、という強迫観念は持たないことです。引き時を考える際、将来の外部環境・内部環境を完璧に読むことはできません。実際の引き時が1年前後するなど、多少の変動は許容の範囲内です。
そして次に考えるのが、会社としての在り方です。大きく3つのパターンに分類されます。

①創業家中心のファミリービジネスなのか
②社員が積極的に経営に参画する体制にするのか
③全くの第三者に経営を任せるのかで

近年のトレンドで言えば、①創業家(親族内)で引き継ぐパターンは減少し、②・③の社員への承継・第三者への承継が増加傾向にあります。これは企業の年齢や少子高齢化などを踏まえれば、至って自然な流れです。
自身の引き時、その際の会社の在り方を決める、それが不安を不足に変える第一歩です。

後継者指名で資本承継の方向性を定める

親族内承継であっても、そうでなくても後継者指名は必須です。本人の使命感や責任感・モチベーション形成に大きく関わります。「親子だからわかっているだろう」では本人の意識確立に十分ではありません。
特に親族外承継である場合、長年サラリーマンとして勤めているため、自分が経営者になるという覚悟には、相当のマインドセットが必要で、一朝一夕にいくものではありません。明確に候補を指名し、次の経営者として社外・社内的にも育成をしていかなければなりません。後継経営者としての指名を経て、2つのステップを同時に進めることとなります。今回は社員への承継をケースとして整理してみます。
まずは、資本の承継についてです。ここが最もハードルの高い課題になります。これまでの経験上、中小企業と言えど数百万円~数十億円規模の株式評価になるため、社員へ資本の承継をするケースでは、それに耐えうる資産背景を持っていないのが普通です。
そのため親族内承継よりも慎重かつ中長期的な視点で資本承継、株主構成のバランスを設計していく必要があります。役員・社員持株会の活用、経営アドバイザーにもなり得る外部の投資会社の資本受入れ(安定株主)、また後継経営者にはどれほどの議決権を持たせる必要があるか、資本承継の方向性を定めていきます。
その際の判断軸は、「現経営者がこの会社の成長戦略をどう成長させていきたいか」(=ビジョン)です。中長期的な会社の在り方を議論するものであり、その判断軸はビジョンでなければ、小手先の株価対策・節税対策に終始することになるケースが多いです。

後継経営者の不安も不足に変えていく、次世代内閣の仮組閣

後継経営者の指名とその資本承継の全体デザインを決めた際、次に発生するのが後継経営者の不安です。次の経営者としての覚悟を創り上げていく途上ですが、「自分一人なのか、誰か仲間はいないのか」間違いなく不安に駆られます。これまでサラリーマン(例えば部長)として業務をこなしてきた自分が、経営者として全社、大袈裟に言えば従業員やお取引先・協力会社とその家族の生活も背負うことになるわけで、当たり前の感情です。
そこで現経営者が取り組むべきは、後継経営者の不安も不足に変えていくことです。具体的には後継経営者をサポートするチームを作ることを最初のミッションとして与えることです。理想的には各部門に1名以上おり、全体で5~7名のチーム構想ができることです。
その構想を練るなかで、メンバーの能力の過不足が見えてくるようになります。「●●は部下育成が課題だ、▲▲は人間的には申し分ないが業績管理が少し雑だ」など、課題が見えてくると対策が打てるようになり、それをいつまでに実施するか、より具体策に落とし込むこととなります。
仮組閣とそれによる課題の明確化で"後継経営者の不安も不足に変えていく"、これが肝になります。

資本政策の中でも一生の一度のイベントである事業承継は、どんな優秀な経営者でも経験を積めるものではありません。テーマとしての秘匿性も高く、"他社はどうやっているのか?"が通じません。そういった際には外部のアドバイザーを活かすことが必要です。中長期的な会社の在り方や方向性を決める場であり、その計画性・段取りには専門知識・ノウハウが求められます。特に中小企業経営者は、現場で起こる様々な問題への対応等もあり、毎日承継のことだけを考えていればいいわけではありません。
ただ漠然とした不安を抱えて経営するのではなく、不足に変えて手を打てるようにしていく、その全体設計は早期に取り組むに越したことはありません。円滑な事業承継を進めていくためには、一度専門家に相談してみることをお勧めいたします。

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