COLUMN

2023.09.28

親族内承継における注意点と
円滑に後継者へバトンタッチする方法

  • 事業承継

親族内承継における注意点と円滑に後継者へバトンタッチする方法

経営者は後継者(親族であれば子)に円滑に承継することが最後にして最大の仕事です。ところが経営者のほとんどは承継と聞くと株式対策ばかり考えて、それ以外のことは放置状態になっているというケースが散見されます。またその株式対策についても、過度な税金対策によって経営という観点からは非常にリスクの高い状態になっている会社もあります。今回は親族内承継においてやってはいけない注意点と、円滑に後継者へバトンタッチする方法について解説します。

親族内承継における注意点

親族内で承継をすることが決まっている場合、経営者は後継者にいかに円滑に承継するかと考えます。その際に多くの経営者はまずは株式に目が行きがちです。またこの傾向は業績が良い会社、つまり自社株評価が上昇している会社ほど強いのですが、これは後継者に株式を移した場合の税金が多額になることを危惧しているからと考えられます。

この際に、多くの経営者が陥りがちで、やってはいけないことを申し上げると、過度な株式分散のことです。株式を分散させることの効果として、「同族株主でも持ち株割合を5%未満に抑えることで、特例的な評価方法である配当還元方式による評価となる場合がある」ということが挙げられます。配当還元方式とは非上場株式の評価方法の1つであり、年間の配当金額を一定の利率(10%)で還元し、元本価額を計算することで評価額を決定する方法です。具体的には遺言などで後継者以外の少し離れた親族や、信頼できる従業員などが5%未満ずつ取得するようにすることで評価額を下げることも可能になります。

この特例的評価方法により多くの節税効果を見込むことができますが、株式はあくまで経営権であることを忘れてはいけません。また後継者以外の少し離れた親族に株式を渡した場合、その親族が亡くなると更にその親族の息子などに株式が分散するリスクがあることも忘れてはいけません。つまり一度離れた株式はそのまま放置すると更に分散することになり、最終的に二度と回収することができなくなる可能性があるということです。

先代あるいは先々代の経営者が実行した株式分散という資本政策によって、後継者が株式の過半数すら集約することができない状態になってしまった企業を、実際にも数多く見てきました。事業承継とはあくまで企業が持続的に存続することを第一義に考えて、過度な節税対策には走らない最適資本政策をとることが重要です。要するに後継者だけでなく、後継者の次の世代まで見据えた資本政策を取ることが企業の持続的な成長に繋がるということです。

円滑に事業承継を行うための後継体制づくり

事業承継を円滑に行うためには資本政策だけでは十分ではなく、後継者が社長となった際の組織体制づくりも同時平行で進めていく必要があります。そのためには後継者の右腕・左腕となるメンバーの選定、もし該当するようなメンバーが社内に見当たらないということであれば右腕・左腕となれる可能性のあるメンバー(幹部候補メンバー)を育成しなければいけません。

育成方法については様々あります。後継者をリーダーとしたプロジェクトチームを組成し、幹部候補メンバーと共にプロジェクトを進めていくことで、後継者のリーダーシップ醸成と幹部候補メンバーの経営参画意識を向上させることを特に推奨します。またこういったプロジェクトを実施する前段階で、外部機関へ後継者や幹部メンバーを派遣し、他社の同ポジションにいるメンバーと切磋琢磨させることも必要です。幹部候補メンバーは日々の業務に追われていることが多く、会社がそのような場を用意しないと経営について考える機会がほとんどないというのが実情ですが、逆にこのような機会は良い刺激になって飛躍的に成長するチャンスにもなります。

人材育成というのは一朝一夕でできるものでなく、時間がかかります。このため、いかに計画的に人材育成を進めることができるかが後継体制づくりの鍵になります。人材育成を計画的に進めるためにも「承継カレンダー」の作成を経営者の皆様には推奨します。要するに後継者を支える組織づくりを経営者の頭だけでなく、承継カレンダーとしてアウトプットすることで見える化するということです。また、アウトプットすることによって初めて具体的に見えてくることもあります。例えば、後継者が社長となるタイミングで幹部候補となるメンバーが年齢的に少ないということや、逆に将来の幹部になってほしいと期待するメンバーを引き上げるためにどのような部署や役職に就いてもらうことで成長させていくかなど、一覧にすることで他者とのバランスを踏まえて総合的に考えることができるようになります。

また、後継体制を考えるうえでは、人材を育成すると同時に後継者が社長となった際の組織図であったり、その先の組織図も設計することが重要です。今の組織図のままで良いのかと考えます。考えたうえで一足飛びにそこに向かうことができないならば、向かうまでのロードマップを整理するということが必要になってきます。

円滑に事業承継を行うための後継体制づくりをするためには、経営者の頭の中にあるイメージを可視化し、目標到達までのロードマップの作成と具体的な行動に落とし込むことが重要です。

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※円滑に事業承継を行うための後継体制づくり(図)承継カレンダーイメージ タナベコンサルティング作成


後継者の次を見据えた事業承継の検討

最後に現在の経営者から後継者へと引き継ぐ際には、後継者に円滑に引き継ぐだけでなく更にその先も見据えることが必要です。要するに後継者の次を見据えて資本政策や体制づくりを検討するということです。親族内承継は昔に比べて時代の流れと共に減少してきており、M&A含めた親族外への承継も昨今増加しています。第三者に円滑にバトンタッチするためにも、今からいかに企業価値を高めていくかということが重要になってきます。

また将来的に第三者に経営を任せることも見据えてホールディング会社を作り、ホールディング会社が事業会社を保有するという組織へと進化させる会社もあります。オーナー家がホールディング会社の株式を保有し、経営はオーナー家以外が担うといういわゆる「経営と所有の分離」の状態にするということです。

このように様々なスキームが日本のあらゆる会社で展開されていますが、親族内承継において特に大事なことは過度な節税対策に走らずに、企業が持続的に成長するために最適な経営判断をすることです。あくまで経営という観点から考えること、これを忘れずに経営者の皆様は事業承継対策として、資本政策や将来の幹部候補メンバーの育成を検討しましょう。

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